「まねきねこのうた」発売記念 Jam&カメントツ 猫まんが対談
発売中の『まねきねこのうた』作者のJam先生が、『こぐまのケーキ屋さん』(小学館)作者のカメントツ先生と対談! 『エレガンスイブ』に掲載された記事に、お二人の“愛猫トーク”を大幅加筆しました。『まねきねこのうた』のおともに、どうぞ。
取材・文:篠崎美緒
写真:竹中智也
カメントツ先生のルポ漫画が、大好きなんです
——この対談は、Jam先生が「カメントツ先生と対談したい」と希望したことから、実現しました。
カメントツ「なぜ、僕が指名されたのでしょう? もっとふさわしい猫漫画家がいる気がするのですが(笑)」
Jam「実は私、もともとカメントツ先生のルポマンガのファンなんです」
カメントツ「ありがとうございます。ちょっと嬉しいから聞いちゃいますが、どのルポですか?」
Jam「腸内洗浄の話が好きで(笑)。私も経験したので、すごく共感したんです」
カメントツ「そうなんですね! あれは少し誇張して描いているんですけど、個人的には健康維持や身体のことを気遣ってやっている人がいるのに、罰ゲームみたいに描いてよかったのかなと気になっていて。だから腸内洗浄のポジティブな部分を、いつか描きたいんですよ」
Jam「カメントツ先生、実は私のTwitterをフォローしてくださっているんですよね」
カメントツ「そうなんです。Jam先生の人間を導くというか、“そんなに悩まなくていいんだよ”的な方向性のツイートを見て、フォローしたような気がします」
Jam「そんなツイートをした記憶が、私自身はないという(笑)。いろいろ書いているので、覚えていないんですよね」
カメントツ「自分のツイートを読み返すことって、ないですよね(笑)。あとシンプルなペンネームの人だなぁ、と」
Jam「自分の名前で検索すると、いろんなものが引っかかります(笑)」
オタクはやっぱり、楽くんが好きですよ
カメントツ「『まねきねこのうた』、不思議な漫画ですね。最初に思ったのは、うちに15歳の猫がいるので、“お前も化け猫か”なんですけど(笑)。あと律・楽・奏の関係性に、読者が想像する余白みたいなものを残しているのは、自分も結構目指しているところだったりするんです。『こぐまのケーキ屋さん』に出てくるキャラクターは、明らかにおじいちゃんとかは除いて、性別をあまり意識しないで描いています。だから店長の肩書きは男性名詞の“パティシエ”ではなく、“お菓子屋さん”。そのあたりの肌感覚が同志っぽいな、と思いながら読みました。なんとなく、今あるべき形の作品なのかなと」
Jam「『多分そいつ、今ごろパフェとか食ってるよ。』の主人公が白い猫なのも、そういう意識があるんです。ゲームでいうドットキャラのように無表情なほうが、読む側は感情移入できるじゃないですか」
カメントツ「うん、そうですね」
Jam「個性をできるだけ消そうと思って、白い猫を主人公にしたんです」
カメントツ「Jam先生もきっと昔からインターネットをお好きで、“モナー” (匿名掲示板で使われた猫モチーフのアスキーアート)を見ていた世代ですよね。僕ら世代にある無個性の白い猫カルチャーは、そこから来ている気がします」
——カメントツ先生が、『まねきねこのうた』で気になったキャラクターは?
カメントツ「オタクはやっぱり、楽くんが好きですよね(笑)。ひねくれている人は、劇中でそんなにイケメン扱いされていないキャラを見ると、“私が守ってあげなきゃ!”という感覚になるので(笑)。僕自身、アイドルグループにも興味があるんですけど、女性より男性ユニットのほうを好んで見るんです。本作も、その空気感がいいなと思います。ちなみにこの作品の世界観は、猫と男の子の二軸があるじゃないですか。Jam先生は、どちらが描いていて楽しいですか?」
Jam「人のほうが楽しいですね」
カメントツ「やっぱり」
Jam「“パフェねこ”は、表情をつけないようにしているんです。でも人間だったら、何をやってもいいというか」
カメントツ「確かに(笑)」
Jam「もともと人を描くのが苦手でした。だからこそ、“描けば描くほどうまくなるかな”と経験を積んでいる感覚もあって、人間を描くほうが楽しいですね」
カメントツ「柔らかいシーンというか、こういう線の細い描写、ずるいですよ。

※コミックス1巻68ページより
これをルポ漫画でやったら、すごく恥ずかしくなるから(笑)。キャラクターとしては、楽くんが意識して三枚目を演じている部分もありつつ、かといって闇を抱えているわけでもない。実は一番大人なのかな」
Jam「そうなんですよね」
漫画が、いい気晴らしになってくれたらいいな
——カメントツ先生が「もう化け猫だ」と言っていた飼い猫が、ベランダにいるところを保護した“まくら”ちゃん。ご近所のおばあちゃんの猫で、代わりに飼うことになり、おばあちゃんとの交流も話題となりました。その後、いかがですか?
カメントツ「電話はよくしています。最近知ったんですが、相手が使うことで安否確認できるポットがあるらしく、それをプレゼントする予定です。おばあちゃんも独り身で高齢なので、友達も少なくなっているし、肺を患っているからコロナ禍で人と会いにくい。なのでその辺は、気を遣っていこうかなと。シンプルに、友人が亡くなるのはイヤですしね」
——まくらちゃんと、先住猫のグーちゃんは、仲良くやっていますか?
カメントツ「一緒の寝床でゴロゴロするようなことはないんですけど、お互いにうざがりつつもいい距離感を持っているような気がします。まくらのほうは一人で寝るのが好きなんですけど、グーちゃんは僕と一緒に寝るのが好きで。ライフスタイルが全然違うので、うまく距離感を保っていて、いい相性だと思います。例えばグーちゃんは僕の股の間に入るのが好きなんですけど、そこの争奪戦が起こらなくてよかったな、とか(笑)。食べ物の嗜好も違って、まくらちゃんは薄めたちゅーるが大好きなんですけど、グーちゃんはそれを舐めると“マッズ!”という顔をするんです(笑)。全然違う2匹だったことは、ラッキーですよね」
——Jam先生も、猫を飼っていらっしゃるのだとか。
Jam「はい」
カメントツ「何匹ですか?」
Jam「もともと5匹いて……」
カメントツ「わぁ、すごい」
Jam「拾った子が子どもを生んじゃって、一時は大所帯でした。今は1匹になってしまったんですけど、残った子ももう18歳で」
カメントツ「人間だと、90歳近くですね」
Jam「でも、かなり活発なんです。ずっと走り回ってます(笑)」
カメントツ「それはすごい! うちのまくらちゃんは、おもちゃにもあまり反応を示しません。たまに遊んでほしそうなそぶりを見せるから、ネズミのおもちゃを振ってみると、目で追ったり、手をちょっとだけ上げたりはするんですが、全く遊ばないんですよ。だから年を取るとこうなるのかなと思っていたけど、活発な子もいるんですね」
Jam「ごはんの袋が反射しただけで、光を追いかけたりしますから(笑)」
カメントツ「それはすごい!」
——ちなみに漫画家さん特有の“猫あるある”って、あるのでしょうか?
Jam「ペンタブの上で、寝ちゃいますよね。“好きに生きていいんだよ〜”となりますけど(笑)」
カメントツ「ペンタブの上って、温かいんでしょうね。だからよく寝る気がします。僕も仕上げでペンタブを使うんですけど、ほかほかマットをあえて2つも配置してるのに、わざわざペンタブで寝たがります。だから諦めて、猫をかき分けながら描いてます(笑)」
Jam「ただ、うちは年を取ってから、机に登れなくなっちゃって……。乗りたそうな時は膝に乗せてあげると、そこからペンタブに上がっていますね」
——ありがとうございました。お二人の漫画を読むことで、癒されたり楽しい時間を過ごしている人も、多いと思います。
Jam「読んでいる時間が、気晴らしになってくれたらいいなと思います。つらいことが集中すると、精神的にもしんどいですよね。そういう時に漫画を読むことで現実のつらさを少しだけ忘れるというか、気晴らしになったらいいなと」
カメントツ「そう、漫画って本当に気張らしで、栄養のないスナック菓子みたいな存在なんですよ。ただ“パフェねこ”は、栄養のあるお菓子だった。そのお菓子を作った人が、新たに作った栄養のないスナックが『まねきねこのうた』だと思います。だから“漫画に救われすぎないで”と、伝えておきたいんですよね。たまに“『こぐま』を読んで、精神的に救われました”と言われたりするんですが、それは飢餓状態でポテチを食べたようなもの。ちゃんと栄養のあること…家族や友人と接したり、本当に危ないならお医者さんに相談するべきだと思うので、漫画の用法と用量をしっかり守ってほしいな、と思います。……こういうことを言っちゃうと、売り上げにつながらないかな(笑)」

対談終了後、コラボ色紙を描いてくださいました!

©️カメントツ/小学館
ゲームグラフィックデザイナー・イラストレーター・漫画家。日常で怒る人間関係の悩みを描いた『多分そいつ、今頃パフェとか食ってるよ。』がTwitterでバズり、書籍化され好評。月刊エレガンスイブ・Web『Souffle』で連載中の『まねきねこのうた』のコミックが、11月に発売された。
大学卒業後、デザインやカメラマン等の仕事に就く。2013年より、フリーのイラストレーターとして活動。Twitterで発表した『こぐまのケーキ屋さん』が話題となり、2018年に書籍化。ルポマンガからフィクションまで幅広くてがける。現在、京都精華大学 マンガ学部 新世代マンガコースの特別講師。
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