TVアニメ「天幕のジャードゥーガル」 トマトスープ先生×吉田健一さん(キャラクターデザイン・作画チーフ) スペシャル対談
TVアニメ「天幕のジャードゥーガル」の放送が大好評ということでトマトスープ先生と吉田健一さん(キャラクターデザイン・作画チーフ)のスペシャル対談をお届け! ビジュアルに落とし込んでいくうえでの試行錯誤などを熱く語っていただきました!

毎週土曜 夜11時30分〜
テレビ朝日系全国24局ネット”IMAnimation”枠・BS朝日ほかにて放送!

プロフィール
・吉田健一
1990年、スタジオジブリに入社し『紅の豚』(1992年)や『もののけ姫』(1997年)、『ホーホケキョ となりの山田くん』(1999年)など歴史的名作にアニメーターとして参加しキャリアを重ねた後、フリーランスとして活動。2002年、富野由悠季監督のTVアニメ「OVERMANキングゲイナー」にて初のアニメーションディレクターおよびキャラクターデザインに抜擢。その後、キャラクターデザイン・メインアニメーターを務めたTVアニメ「交響詩篇エウレカセブン」(2005年)が国内外で大ヒットを記録。以降もオリジナルアニメ「地球外少年少女」(2022年)のキャラクターデザイン・総作画監督を担当。TVアニメ「天幕のジャードゥーガル」ではキャラクターデザイン・作画チーフを務める。

・トマトスープ
多摩美術大学出身。主に中世~近世の世界史をテーマとしたマンガを制作。デビュー作『ダンピアのおいしい冒険』(イースト・プレス、全6巻)が『宝島社 このマンガがすごい!2021』オトコ編第6位を獲得。現在、『Souffle』にて連載中の『天幕のジャードゥーガル』(秋田書店、既刊6巻)は『宝島社 このマンガがすごい!2023』オンナ編第1位を獲得し、「第55回日本漫画家協会賞コミック部門大賞」を受賞。他に『WINGS』にて『奸臣スムバト』(新書館、既刊2巻)を連載中。
原作の印象からポンと離れてしまわないようにするよう心掛けていました
トマトスープ先生(以下、ト) キャラクターデザインのイラストが届くのをいつも楽しみにしています。
吉田健一さん(以下、吉) ありがとうございます。
ト すごく愛おしいんですよ。原作の絵をアニメーション用に描き起こすにあたって、どんなふうに補っていただけたんでしょうか?
吉 少し立体的にしました。アニメーターはどうしても絵を動かすときにいったん立体にして考えるので、みなが描きやすいような立体に変換させてもらっています。
ト 吉田さんの絵を拝見した時に、たとえば服で隠れて見えてないところもなんとなく感じられる絵だなと思ったんですよね。キャラクターたちの足がすっと伸びて、しっかりと地面に立っているんだなと感じられる絵なんです。
吉 いちばん難しかったのがヒジャブに隠れている肩ですね。
ト 私もです(笑)。
吉 そんなにドーンと背が高いキャラクターではないので、こぢんまりとしたコンパクトな体にすると、ヒジャブの中の肩がストンと落ちていて、変なふうになってしまうんですよ。そのバランスを取るのに、実はいちばん時間が掛かったかもしれません。
ト そうなんです。現実の人間がヒジャブをかぶると肩に掛かるんですけど、それがこの絵だと、頭の大きさに対して肩が狭いので、そうはならないんです。なかなかそのバランスを取るのが私も難しくて(笑)。
吉 でもそこを外れちゃうと原作と印象が変わってしまいそうだったので、気をつけたところですね。マンガが好きでアニメを見た視聴者にとっても、原作の印象からポンと離れてしまわないようにするよう心掛けていました。
ト ありがとうございます。原作どおりの印象で捉えてくれる方が多いんじゃないかなって思いました。あの絵が動いている!って驚きましたよ。
吉 それはよかったです。設定画には、服の中であったり、帽子の中なんかも描いてあるんですけど、これはアニメーターさんに向けて「こんな感じで処理してみてください」と描き残してあるんですよね。
ト あの帽子の中がどうなっているかは、その設定画を見た人だけが知っているっていう(笑)。
────あの中どうなってるんですか!?
ト 女性たちは長い髪を上にまとめてあるんですよね。作品中では見えないんですけど、とってもかわいかったです。

設定画で描かれた帽子の中の様子
自分たちみたいな50代のアニメーターって、動物を描く機会がかなり減った世代なんですよ
ト 人間だけじゃなく、動物もとっても魅力的に描かれているんですよ。馬を飼い主とちょっと似せて描いてくれているんですよね。たてがみの切り方が持ち主の髪型に似ていたりとか(笑)。実は私もそうしたかったんですけど、とても追い切れなくなってしまったんで、とってもうれしかったです。
吉 実は自分たちみたいな50代のアニメーターって、動物を描く機会がかなり減った世代なんですよ。僕らの先輩たち、それこそ宮崎(駿)さんたちの世代なんかもそうですけど、彼らはものすごく動物を描いていた人たちで、なんでも描けたんですよ。だけど僕らはSFとかロボットアニメとかが大好きだったもんですから、そっち方面でついかまけてるうちに、若いころに動物を描いてこなかったんですね。
ト どこで練習したんですか?
吉 『もののけ姫』をやったときにいきなり描かされました(笑)。ベテランの人たちがどうやって動物を描いているのかを、みなさんが帰ったあとに描いたものを掻き出してきて、自分で一度トレースしてみて、それでこう、またそっと戻したりとかして(笑)。そういうことをやりながら一生懸命覚えたんですよ。
ト たとえば馬をお描きになるときにいちばん気をつけているのはどこになるんでしょう。
吉 胸周りや胴回りですかね。細かったり丸かったり、いろんなタイプがいるんですが、気をつけないと意外と痩せちゃうんですよ。なので重たそうな質量感みたいなものを入れてあげると、雰囲気が出ますね。
ト 品種によっても変わりますもんね。
吉 それはありますね。だから蒙古馬のような当時モンゴルあたりで使われていただろうなというような馬と、中東で使われたアラブ馬とか、あとは農耕馬であったりとか、そういうものの描きわけは考えたりしてましたね。僕の場合だと『もののけ姫』をやったりしていたものですから、日本っぽい馬というのを当時は監督も含めて「もう少し小さいんだ」とかいろいろ話しながら描いていた覚えがあったので、もしかしたらそういう感覚が使えるかなと思いながらやっています。
ト なるほど、重量感ですね。馬って特に動物の中でも難しいんじゃないかなと思います。ついつい私、首を太く描いてしまうんですよ。でも逆に写真を見すぎると、「そこに写ってる馬」になっちゃって、一般的な馬じゃなくなっちゃう。本当に難しいんです。

可愛らしくもリアルな動物たち

僕は知ってるんだぞ、なんて思いながらこの仕事を始めたんですけど
吉 実は自分が20代ぐらいのころにモンゴルのことが好きになって掘り下げたことがあったんですよ。
ト そうだったんですか!
吉 チンギス・ハーンがユーラシア大陸をどう動いていったのか、遠征の方向から掘っていった記憶がありますね。そのときにモンゴルの軍装であったりとか、部隊構成であったりとか、そういうものを本やらなにやらで調べていました。だからちょっと僕は知ってるんだぞ、なんて思いながらこの仕事を始めたんですけど、いやいや、これが全然わからなくて(笑)。先生がマンガの中でさらっと描いていることも、「あれ、これどうなってんだっけ?」って頭を抱えながらなんとかやってました。だからそれこそ作者さんの頭の中はどうなってんだろうと思いながら、マンガを一コマ一コマ見ていましたね。
ト どうなってるんですかね(笑)。軍隊とかは資料があって描きやすいんですけど、実は日常の人たちの何げないシーンがいちばん難しいんですよね。この時代における「特に目立たない地味な仕事」ってなんだろう?とか。その一コマを描くのに一日がかりで調べたりすることなんかもざらにあります。

日常の何げないシーンも丁寧に描かれている
吉 それこそ先日、メインビジュアルを描いたときに、ゲルのドアの向きと太陽の関係性がわからなくなっちゃって。日々、落とし穴だらけだなって思いつつ、かなり気を使いつつ、いろんな人に確認を取りながらやっていますよ。
ト ありがとうございます。
吉 いえいえ。歴史は好きなものですから、あまり苦にはならないです。モンゴルって遠征していく中でたくさんの町を落としていくじゃないですか。今回のペルシアにしても、バグダッドの方面にしても、その時にいろんな地名が出てきますよね。一方では社会とか地理で習ったような地名とか、自分が好きで歴史を掘った時に覚えた地名も頭の中にはあるんですよ。それをモンゴルの遠征が一回つなげてくれたという感覚が、自分の中に当時あったんですね。東も西も、いろんなところも含めて影響しあう歴史みたいなものを、すごく感じることができた最初の経験だったんですね、モンゴルは。
ト いや、本当そんな感じですよね。モンゴル帝国は歴史のダイナミズムみたいなものが感じられる代表格みたいなところがあります。
吉 しかもわれわれ東アジアの人間と近いところの人たちが活躍する話でもあるので、自分の気分を乗せながら見られるんですよね。今、いろんな作品を並行して描いていらっしゃいますが、しばらくは12~13世紀あたりを掘っていくおつもりですか?
ト いちばん引き出しが多いのがそのあたりなので……逆にもうそこしかわからないくらいなんです(笑)。モンゴルを中心に考えると、いろんな地域に広げうるポケットがたくさんあるんですよね。
吉 なるほど。日本の歴史ものを描く気はありますか?
ト 日本は資料がとても多いので、まずはちゃんと調べないといけません(笑)。日本もモンゴル帝国と同じくらいの時代が好きです。平家物語や東北に興味はあるのですが、興味だけって感じです。
吉 いつか日本を舞台にしたものも読んでみたいなと思ったりしました。
ト 描けたらかっこいいんですけどね。頑張ってみます。
吉 アニメ化の際にはまたやらせていただきたいですね。専属でぜひ(笑)。
ト ありがとうございます(笑)。

天幕の描かれたメインビジュアル
文・構成/小田真琴
©トマトスープ(秋田書店)/天幕のジャードゥーガル製作委員会
今後の最新コンテンツが気になる方は、ぜひSouffle公式Xをフォロー!

@Souffle_life


















