『ムーちゃん通信』赤沼美里 発達障害と自閉症がもっと身近になるコラム!
ムーちゃん通信#37「どうして鉛筆をガジガジ噛んじゃうの?」

発達障害の子によくある!? えんぴつを噛んだりウロウロ歩き回ってしまう理由とは?
脳が感覚を求めている
ムーちゃんが鉛筆をガジガジ噛んでしまう行為には「感覚」が大きく関わっています。私たちの脳は、7つの感覚(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚・固有受容覚・前庭覚)を栄養にして発達していきます。とはいえ、感覚の量が多ければ良い、というわけではありません。脳は、受け取った感覚情報から必要な情報を選び出し、順序よく整理する必要があるからです。この機能を「感覚統合」といい、脳はいわば交通整理の警察官のような役割を担っているわけです。


「ムーちゃんと手をつないで~自閉症の娘が教えてくれたこと~」8巻より
ところが、発達障害のある人の多くに、感覚統合の発達に偏りがみられます。ムーちゃんの場合は、感覚刺激を受け取りづらく「もっと感覚をちょうだい」と、脳が感覚を欲しているんですね。鉛筆や爪、洋服のジッパーなどの硬いものを噛むのは、顎の筋肉を強く使うことで、ぼんやりした脳をシャキッとさせ、集中力を促します。これは筋肉や関節を動かす時に、体の位置や動きを感じる「固有受容覚」が働いているからです。口の中の刺激は、不安な気持ちを落ち着かせることにも役立つため、難しい問題を前に安心したかったのかもしれません。
【活動の前に十分な感覚遊びを】
脳が感覚を必要としているため、噛むことをやめさせるのは、あまりいい方法ではなさそうです。発達障害の子のための、噛むグッズを利用してみましょう。また授業の前に、固有受容覚を感じられる遊びもいいですね。なお、飲み込んでしまうと危険ですから、ジッパーのない服にするか、ジッパーの部分を取ってくださいね。
(遊び例)押しくらまんじゅう・トランポリン・硬めの粘土・重い荷物を運ぶ・鉄棒など
ガジガジ・ウロウロするのは頑張っている証拠です
発達障害のひとつ「ADHD」のある子は、計算したり推敲したりするために、記憶を一時的に留めておく機能「ワーキングメモリ」の働きが弱いことで知られています。そのため、思考する時に、あえて体を動かすことで血流をよくしてワーキングメモリを働かせ、集中を高めていることが報告されました。歩き回ったり、足をプラプラさせたり、手をソワソワさせたり、爪をガジガジさせたり……そんな時は「今、頑張っているんだな」と応援してあげてくださいね。
ムーちゃんから |
【参考文献・サイト】
・加藤寿宏/監修、高畑脩平、萩原広道、田中佳子、大久保めぐみ/編著
『子ども理解からはじめる感覚統合遊び 保育者と作業療法士のコラボレーション』(クリエイツかもがわ、2019)
・土田玲子/監修、石井孝弘、岡本武己/編集
『感覚統合Q&A 改訂第2版 子どもの理解と援助のために』(協同医書出版社、2013)
・A・ジーン・エアーズ /著、岩永竜一郎 /監修・翻訳、古賀祥子/翻訳
『感覚統合の発達と支援: 子どもの隠れたつまずきを理解する』(金子書房、2020)
・University of Central Florida『ADHD Kids Can Be Still – If They’re Not Straining Their Brains』(2024/02/29参照)
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