『セトウツミ コノモトメモ』 此元和津也 『セトウツミ』の作者自身によるレビューエッセイ!
#5 【特別編】担当編集者S子対談(『第5話 踏んだりと蹴ったり』)
舞台化記念! セトウツミの作者・此元和津也が1話ごとの裏話と思い出を漫画と共に語るレビューエッセイ。
レビュー後の漫画とあわせてお楽しみください!
【特別編】担当編集者S子対談
此元「ネタが切れたら対談で埋めようということで」
S子「コノモトメモ始める前に言ってましたね」
此元「さっそくそのカードを使うわけですけども」
S子「早くないですか?」
此元「まじで舞台終わってからやる気の低下が甚だしくて」
S子「舞台ほんとに良かったですよね。でも逆にそこはやる気出してくださいよ」
此元「あと告知の際に画像あげるってのを勝手に始めたんですけど、早速あげる画像がなくなって新規絵描く羽目になったりとか」
S子「ラフとはいえ久しぶりに瀬戸と内海が見れて嬉しかったですよ」
此元「ちょっと負担が大きくなってきたので今回は楽させてもらいたいなと思います」
S子「わかりました」
此元「ではまず『セトウツミ』の担当になった経緯はどんな感じだったんですか?」
S子「セトウツミの原型『マジ雲は必ず雨』が月刊少年チャンピオンに掲載後、連載用のネームが3本ストックできていた状態でS田さんより『この作品は別冊少年チャンピオンのほうが良いんじゃないか?』というような感じで別チャンに企画が持ち込まれました」
此元「最初に僕にオファーかけてくれたロン毛マッチョのS田さんですね」
S子「今は髪も短くて爽やかですよ。で、その際に当時の編集長が数人に『マジ雲』を見せて担当希望を募りました。読んで、すごく面白かったので即『私やりたいです!』とその場で申し出て、決まった感じです」
此元「申し出てくれてありがとうございます」
S子「たまたま私が編集長の席の近くだった事や、他の人より読む速度が少し速かったとか、そういった様々なラッキー要素が重なって担当になりました。今改めて思うとセトウツミにこんな流れで関われてすごく運が良かったと思います」
此元「僕も運が良かったなと思います。大して漫画描いてない僕が、漫画編集者を評価するのはおこがましいですけど、S子さんはネーム送ったら凄い熱量で褒めてくれるし、モチベーターとしてとても優秀だと思います」
S子「ありがとうございます」
此元「酒癖は悪いって印象はありますけど」
S子「最悪じゃないですか」
此元「セトウツミの担当で良かったなと思うことはありますか?」
S子「こんな面白い作品にたずさわれて良かったな~っていうのは勿論だけど、〆切をちゃんと守ってくれるのが良かったです」
此元「優良進行でしたよね」
S子「本当そうです」
此元「やりやすい作家でしたよね」
S子「確かに、あまり手間はかからなかったけど、そういうの私が言うまで待てます?」
此元「他は?他に良かったなと思うところ」
S子「他はですね、作中で様々なジャンルの言葉がでてくるので、知識や語彙が増えましたね。此元さんの語彙や知識のストック量、本当にすごいと思っています」
此元「いいですね。じゃあ逆に大変だった事はありますか?」
S子「特にはないのですが、強いて言うなら作品の雰囲気に合うアオリを作成するのが大変でした」
此元「扉絵とか、事前にラフを見せずに原稿でいきなり送るから、ちょっとした大喜利みたいになりますもんね」
S子「私のセンスでこの作品がダサく見えてしまうかもしれない…と毎回プレッシャーがあって、入稿作業でアオリや柱を考えるのが一番時間かかっていた気がします」
此元「一番印象に残ってるのは、蜘蛛の話のラストのアオリの『デスボイス!』ですね。前フリがあるから説明なくても理解はできると思うんですけど、端的にオチを補足していただいたなって」
S子「この連載が始まって私も当時のこと思い出そうとするんですけど、10年経っているという現状に引いております。早すぎませんか…?」
此元「確かに。初めてお会いしてから10年経ちますもんね」
S子「担当でなくなってからも、此元さんの多岐にわたるご活躍はずっと拝見していたので、またこうやってお仕事でご一緒できとても嬉しいです! 原稿を頂く際の「面白いものを最初に読める感動」も変わらずで、当時を追体験しているような不思議な感覚もあります。ただ当時よりも、此元さんがより激務で疲れている印象なのでその点が少し心配です」
此元「当時の僕の第一印象はどうでしたか?」
S子「えーと……大きい。黒い」
此元「ツキノワグマ見た時の感想じゃないですか」
S子「背が高くて洋服全体が黒っぽい印象だったので。圧というか、ダークな雰囲気もあって少し怖かったです。あと血色が悪い。テンションが低い。静か」
此元「それはS子さんがものすごい物量と早口でまくし立ててくるので圧倒されてたんだと思います」
S子「え、まじで?」
此元「最近久しぶりにS子さんと喋るようになって、この会話のバランスの悪さ懐かしいなあと思ってました。でも喋らなくていいのでめっちゃ楽です」
S子「ほんとですか? じゃあ喋ります」
此元「僕の良いところ言ってもらっていいですか?」
S子「〆切を守る。プロ意識が高い。天才。おそらく1人で相当努力されている。そしてその姿を全く見せない。周りの方を大切にしている」
此元「……ほぉぉ」
S子「褒められたがりのくせに実際褒められると所在なさげなのは悪いとこだと思います。あと悪いところは自身の健康への意識が低い。もっとご自身の体を大事にして末長く、多くの作品を生み出してほしいです」
此元「そういうのはいいです」
此元「他に何か『セトウツミ』に関する思い出はありますか?」
S子「タイトルを決定する際に、予告が掲載される号までに結構バタバタと決めたような気がします。何個かこちらからタイトル案をご提案した当時のメモがでてきたんですよ」
此元「どんなんでしたっけ?」
S子「『大阪リバーサイド』」
此元「ダサぁ」
S子「あと『瀬戸内リバーサイド』とか。場所全然違うじゃんっていう。あとは『瀬戸内アフタースクール』」
此元「学童保育じゃないですか」
S子「他は『ツーピース』とか『放課後の過ごし方』とか」
此元「心底『セトウツミ』で良かったですね」
S子「ロゴデザインなどをお願いしたデザイナーさんと打ち合わせをした際に、作品を読んでもらったのですが『これ、すごくいいですね』と絶賛してもらったのを覚えています」
此元「嬉しいですね。ロゴデザインもいくつか案があって、その画像見つけたんですけど、それは載せていいんですか?」
S子「確認しておきます。あと新連載開始の時は、1話2話が同時掲載でした」
此元「そうでしたね。それ完全に忘れてました」
S子「当時の編集部では校了の際に、2人組で1人がネームを声に出して読んで、もう一人が文字ヌケなどがないか校了紙を見てチェックする『読み合わせ』という作業があったのですが、その際にセトウツミでは声出して笑っていた記憶があります。ほんと面白かったです。あとはですね……」
此元「あ、この辺でやめときましょう」
S子「もういいんですか?」
此元「小出しにしましょう」
S子「対談カードまた使う気じゃないですか。ちゃんとエッセイ書いてくださいよ。で、この連載も掲載して『完全版セトウツミ』出しましょう」
此元「それいいですね。もしそうなったらカラーの新しい表紙描き下ろします」
S子「『セトウツミ』は番外編も入れると70数話あるので、週1更新で約1年半で完走です」
此元「隔週だと3年……」
S子「不定期だと4~5年とかになってきますから頑張ってください」
此元「理想は『気が向いたら更新』なんですけど」
S子「そうなったら完走まで7年とかですね」
此元「無理やなこれ」
此元「今回の第5話ですがどうですか?」
S子「帰りたくなくて素直になれない瀬戸がすごく可愛らしいと思った記憶があります。今までの回よりちょっと『友達』みたいな部分に焦点が当たってる感じがして、エモーショナルな気持ちで読みました。こういった『えもいえぬ』感情を描けるのがすごいと思う。青春特有のそういったうまく言語化できない感情も描けるのか~、みたいな」
此元「いいですね。毎回S子の一言レビューだけでいいんじゃないですか?」
S子「いつもの場所で雨が降るだけで今までの雰囲気を変えてきたのが良いなと思いました。画面から湿度がある感じが分かる」
此元「確かに、扉絵から最後まで良い空気感だと思います。梅雨のジメジメした感じと樫村さんの鬱陶しさが相まってて」
S子「樫村さん性格あんまりよくないですね、と言った記憶があります」
此元「来週の対談ですがどうしますか?」
S子「対談はしばらくなしです。ちゃんと書いてください」
此元「とりあえず1巻分は頑張ります。その後は相談させてください」
S子「完全版刊行に向けて頑張りましょう。こうして読み返してみると新しいの読みたくなりますね。『セトウツミなんとか編』とか描いてくださいよ」
此元「描かないですよ。○○○○○○じゃないんですから」
S子「うちでも描いてもらってるんでやめてもらっていいですか」
漫画 『セトウツミ 第5話 踏んだりと蹴ったり』はこちらから
【漫画部分の公開は終了しました】
次回は7月7日更新です。
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