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トピックス 2020.03.11

【ニュース】

「誰かの人生を映画にするってどんな気持ち?」原作者と監督の”ふたりきり”対談。

映画が公開中の「酔うと化け物になる父がつらい」。原作の菊池真理子さんと片桐健慈監督の”ふたりきり”対談。

──菊池先生と片桐監督はふたりでお話するのは今回がはじめてだそうですね。

菊池 そうなんです。撮影前の打合せから何度もお会いはしてるんですけど、いつも大人数でお会いしていたので…。

片桐 今は映画を見て先生が「よかったです」っておっしゃっていただけたんで、少し落ち着きましたけど、最初会う時は緊張しました。ゼロから作った原作を、自分が映画として作らせてもらうわけですから……。

──さっそくですが、菊池先生から見た映画の感想を教えていただけますか?

菊池 最初に試写を見た時は、言葉が出ないくらい号泣して、顔を洗ったくらい顔がビショビショになってしまいました。撮影前の打合せで、監督から「いま父が現れたら何を言ってほしいですか」ってたずねられた時「ごめんなさい、って言って欲しい」と伝えたのですが、その言葉が反映されたシーンで涙が止まらなくなりました。

──作品がノンフィクションなだけに、自分の過去の実生活が映像化されるのは不思議な感じでしたか?

菊池 走馬灯を3回見た感じなので、もう死ぬ準備はOKです(笑)。とはいえ自分そのものでもなくて、あくまでサキちゃんの人生だから、どこか客観的には見れたんです。「こんな風に育てられたんだな」と冷静に見ることが出来て、いま、自分自身が不器用なことを許せるような気持ちになりました。

酔うと化物対談

片桐 菊池先生の実体験を映画化するのは、先生の人生をお預かりすることだ、と強く意識していました。ただ、「名前や設定は、監督が好きなように作ってください」と言っていただいたので、より客観視した作品になったんじゃないかと思います。

──映画と原作の大きな違いは、映画の方では父親の視点が多く描かれているところですよね。

片桐 先生の原作は子供の視点で書かれているわけですけど、ぼくは大人の男で、そして自分も酒を飲むので、父親の気持ちを想像できるところもあるんです。それで、より作品を掘り下げようと思ったら、父親の行動原理を考えたほうがいいなと思ったんです。自分が脚本を書いて撮るのなら、もうひとつ別の視点を足したいなとは思ったんです。

酔うと化物対談

──父と娘のすれ違いを描くのに、とても効果があったのが主人公の心の声を表す「ふきだし」でした。

片桐 原作の魅力って、先生の絵のテイストも大きいと思うんです。しんどい場面を描いていても、基本的に絵のタッチがかわいいので、何か取り入れたいと思ったんです。あと、読んでいて気づいたのが、だいたい先生のセリフで大事なことって、だいたい独白なんですよね。

菊池 え、そうなんだ!! 意識してなかったです! 

片桐 口から発する言葉より、頭の中で考えてることの方が重要なことを言っていて、映画だとそれを表現するのがとても難しかったんです。思いをサキちゃんにそのまま喋らせるのもどこか違うし…。見ている人が、サキの本当の気持ちがわかる、という意味でふきだしがいいなと思ったんです。

菊池 私、無音の部屋に何時間でもいられるんです。ずーっと自分と話してるから。でも私、監督もふきだしが出てるタイプだと思いますよ!(笑)

酔うと化物対談

酔うと化物対談

片桐 打ち上げとかたくさんの人の場が苦手なんですよ。気を使うとお酒飲んじゃうんですよね。といって監督という立場だと、先に帰りますって言えないですしね。頭の横に「帰りたい帰りたい」ってふきだしが出てると思います(笑)。

酔うと化物対談

(インタビュー:大坪ケムタ/写真:竹中智也)

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