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トピックス 2019.10.18

【特集】

【特集】菊池真理子×武田友紀 対談「生きづらさを感じる“繊細さん”──HSPって何?」(2)

感じる力が強く、まわりからの刺激に敏感に反応する「繊細さん(HSP)」。『「気がつきすぎて疲れる」が驚くほどなくなる 「繊細さん」の本』の著者・武田友紀さんへ、漫画家・菊池真理子さんがHSPについて聞いてきました。

繊細さんの4つの性質

菊池 HSPの自己テストをやってみたのですが、私が当てはまったのは11〜12個でした。12個以上に当てはまったら繊細さんってことであれば、微妙なラインだなと。本当に自分がHSPなのかというのがわからないのですが、どうなんでしょうか?

武田 12個というのはあくまで目安なんです。アーロン博士も、「はい」がひとつかふたつしかなくても、その度合が極端に強ければHSPかもしれないと書いています。それに、私のカウンセリングの経験上、この自己テストは人生の時期によって点数が変わるものなんですよ。

菊池 そうなんですか!

武田 自分の繊細さをダメだと思って感性を封じているとチェックがつきにくいですし、「ありのままの自分でも大丈夫なんだ」と思うようになるとまわりのことにさらに気づくようになってチェックが増えたりします。ですので、チェックの数よりはこの4つの性質を見ていただいたほうがいいかも。HSPはこの4つの性質をすべて持っているといわれています。

アーロン博士によると、この性質の根底には以下の4つの面(DOES)が必ず存在するそうです。4つのうちひとつでも当てはまらない場合には、本書でいう「繊細さん」ではありません。

・D: 深く処理する(深く考える)Depth of processing

他の人が通常考えない深さまで考える。ひとつのものをみていろんなことを瞬時に思い浮かべることもあれば、じっくり考えることもある。複雑なことや細かなことに目を向け、表面的なことよりも本質的なことを考える傾向にある。

・O: 過剰に刺激を受けやすいbeing easily Overstimulated

自分の内外で起こっていることにひといちばい気がつき、処理するため、人よりも早く疲労を感じやすい。大きな音や光、暑さや寒さなどに敏感だったり、楽しいイベントでも刺激を受けすぎて疲れたり、興奮して目が冴えて眠れなかったり、痛みに敏感だったりする。ひとりの時間や静かな時間などで、感じすぎた刺激を流す時間が必要。

・E: 感情反応が強く、共感力が高いbeing both Emotionally reactive generally and having high Empathy in particular

共感力が強く、他者の意思や気持ちを察しやすい。HSPは非HSPよりもミラーニューロンの活動が活発だといわれている。事故や事件のニュース、暴力的な映画などが苦手な傾向にある。

・S: ささいな刺激を察知するbeing aware of Subtle Stimuli

小さな音、かすかな匂い、相手の声のトーンや視線、自分を笑ったこと、ちょっとした励ましなど、細かなことに気づく。気づく対象は様々で個人差がある。プレッシャーや過剰な刺激で疲労するなど興奮しすぎた状態ではこの察知力も消えてしまう。

※エレイン・N・アーロン著「ひといちばい敏感な子」1万年堂出版を参考に作成

武田 まず、1つめは「D:深く処理をする(深く考える)」です。同じものをみても、ほかの人が考えないところまでパッと一瞬で想定する。

菊池 これは当てはまりますね。

武田 では、どんどんいきましょう。2つめは、「O:過剰に刺激を受けやすい」こと。音や光、自分の中で起こる空想やアイデアなどにも人一倍気づきます。たくさんのことを感じるので、どうしても疲れやすい傾向にあります。3つめは、「E:感情反応が強く、共感力が高い」こと。相手の感情を察知して同じように感じる“ミラーニューロン”の活動が活発だといわれています。ニュースを見て悲しくなったりするのがこれですね。4つめの「S:ささいな刺激を察知する」は、相手の声のトーンや匂いなど細かなことに気づく性質のことです。

菊池 残りの3つにも当てはまりました。でも、私、他人の気持ちを察する割には間違っているというか……。すべてが自分の思い込みで、本当に相手の考えていることまでわかっていないかも。

武田 繊細さんがわかるのは、相手の感情までなんですよ。怒っているとか、悲しんでいるとか。感じ取った感情をどう解釈するかは、あくまでも「推測」なので、すべてが当たるわけではありませんよ。

菊池 なるほど、そうなんですね。

武田 例えば、会社で上司がイライラしていたとしましょう。上司のイライラに気づかない人もいますが、繊細さんは気づきやすいです。気づいたときに「何か嫌なことがあったのかな?」と思うか、それとも「私、なんかイライラさせるようなことしちゃったかな?」と思うかは、人によって違うんです。繊細さんは相手の感情を感じ取るところまでは得意なのですが、それをどう解釈するかは個人の経験に基づくものなんです。

菊池 へえ、そうなんですね! 私は基本的に被害妄想で生きてるので、全部自分が悪いように解釈しちゃてるなぁ…。みんな私のこと嫌いだと思っているんだろうなって考えちゃいますね(笑)。

武田 なるほどですね。「自分は自分のままで大丈夫」と思って育っていて、「誰かのイライラに気づくけれども別に対処しません」っていう方もいます。HSP気質は持っているけれど、相手のイライラに影響されずに放っておけるようになる。

菊池 それを目指すべきなんですよね?

武田 べきといいますか、そうできるとラクですよね。あとは、自分の問題と他人の問題を切り分けて考えることが大切ですね。イライラするのはその人自身に理由があるのであり、自分の問題ではないんですよね。自分が仕事をミスして上司の機嫌が悪くなったという場合でも、部下のミスにイライラするのか、それとも前向きに対処するのかは上司自身の領域。だから、繊細さんが背負ってはいけないんです。

人にはそれぞれ得意な“担当”がある

菊池 私、今死にたいほど嫌なことがあって。アマゾン雨林の火災なんです。どんどん地球の緑が失われていくことが悲しくてしょうがないというか……。本当に動物がかわいそうなものがダメで、ニュースもネットも見られないんです。

【特集】菊池真理子×武田友紀 対談「生きづらさを感じる“繊細さん”──HSPって何?」(2)
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武田 それはお辛いですね。

菊池 でも、私が何をどうしようとアマゾンの火は消えないじゃないですか。私が死んで火が止まるならと思うくらいで嫌になってしまうのですが、どうしたらいいんでしょうか?

武田 これは災害のときなどにもよく聞く話で、どうしたらいいかという相談はよく受けます。そういうときは、支援団体の情報を見ましょうといいますね。

菊池 ああ、なるほど!

武田 消火活動をしている団体があるんじゃないかなと思うので、それを見ると「あ、やってくれている人がいるんだ」となる。その団体へ寄付するでもいいですし、いろんな人にアマゾン雨林の話をしてみるとか、発信して啓発するとか、自分なりのかたちで応援できるといいですよね。アマゾンにはなかなか行けないと思うので(笑)。

菊池 たしかに簡単には行けないですね(笑)。

武田 あとは、人はそれぞれ得意分野があると考えるといいと思います。アマゾンを守るのは得意な人がやってくれているから、私はわたしの担当を全うする。アマゾンを守る活動をしている人はそれを担当し、菊池さんは、たとえばですけど、漫画を描いて多くの人を元気にするのを担当する、といった具合です。

感じやすい分野は人それぞれ

菊池 繊細さんの中にも、タイプみたいなのがあるんでしょうか?

武田 そうですね。でもやっぱり1つめの「D:深く処理する(深く考える)」がすべての基礎となっていると思います。何事も深く考えて、そこから刺激になっていく。何にアンテナが働いているかによって刺激がわかれてくると思います。私も夫も繊細さんなのですが、気になる部分は違いますよ。私は部屋の模様替えが好きなのですが、夫は模様替えされると落ち着かないみたいです。私は換気扇の音が気になりますが、夫は平気だったり。

菊池 何が気になるのかっていうのは繊細さんによって全然違うものなんですね。

武田 そうですね。人の感情にはそこまで反応しないけれども、動物のことはすごく敏感になるとか、繊細さんにも個人差があります。菊池さんの場合は、動物の感情に敏感に反応してしまうんでしょうね。

菊池 そうかもしれないです。とりあえず、アマゾン火災の支援団体の情報を見てみようと思います!

文・宮本香菜

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