『凪のお暇』DVD発売記念!今だから言えるあれこれを、原作者・脚本家・プロデューサーが語ります!(前篇)
昨年の夏、日本中に感動(と笑いも少々)を与えてくれた、ドラマ『凪のお暇』。このたびめでたくDVDが発売されました! ファンの人からすると、「やっと手元に、凪、慎二、ゴンさんを手に入れられる…♡」なわけで、なんて嬉しいお知らせ! ということで、ドラマの制作に深く関わった脚本家・大島里美さんと&プロデューサー・TBSテレビの中井芳彦さんのお二人と、コナリミサトさんに、ドラマの感想や裏話をたっぷり語っていただきました。
──プロデューサーの中井さんにまず伺います。『凪のお暇』をドラマにしたいと思った理由は、どんなところにあったんですか?
中井 単純に、むちゃくちゃおもしろいマンガだな、と思ったのが出発点です。『凪のお暇』に関しても、「ドラマになったのを自分が見てみたい!」と思ったから、です。
大島 中井さんから突然呼び出されて、マンガを渡されて、「ものすごくドラマでやりたい作品を見つけたので、とにかく読んでみてください!」って、強烈な熱量で言われたんです。その熱さがとにかくすごくて(笑)。
コナリ ええ〜! 光栄すぎます!! 私のマンガのどこにそんなに熱くなってくださったのでしょうか…。
中井 「空気を読む」というキーワードを、あえてこのご時世に切り取った作品であることがまず1つ。それからキャラクターが全員キレイにすれ違っているところが、非常にドラマ的というか、映像的だな、と。あとは慎二です。慎二のラブストーリーとして、僕はとても惹かれました。
大島 私も慎二の描かれ方、ものすごくおもしろいと思いました。シンプルに、主人公を追い詰めるキャラでありながら、『凪のお暇』は彼の物語でもある。あとは、マンガの中での<慎二が泣くシーン>の描かれ方。絶対に泣き顔を見せないというところに興味を惹かれました。
中井 泣いている顔が見えないというところは、社内で読んでもらった方、全員がズキュンと来ていましたよ。
コナリ 慎二…、よかったなぁ(笑)。おっしゃるとおり、マンガでは慎二の泣き顔は今まで描いたことがないんです。だから、ドラマの1回目でそれがバーンと出てきたのを見て、驚いたと同時に「マンガの分も慎二が泣いてくれている…」って思って、嬉しかったです。
──コナリさんが慎二の泣き顔を見せないのはなぜですか?
コナリ え、美学…。慎二の美学? 私の美学? どっちかな…。うわー、恥ずかしいですね、こういうこと答えるの(笑)。
大島 あと、脚本家として惹かれたのは、凪と慎二の水族館のデートや、バーベキューなど、片方はこう思ってるのに、それがまったく伝わっていないという描写が結構あって、それをドラマで描いたら、すごくおもしろそうだなって。それからなんといっても、凪のお暇生活の昭和感(笑)。そこにある、ちょっとした工夫で日常がおもしろくなるんだよっていうメッセージは、観た人に力になるのでは、と思いました。
──コナリさんは、最初にドラマ化の話を聞いたときは、どう思いました?
コナリ もちろん、もちろん嬉しかったです。でも正直、最初はちょっと不安もあったのは事実です。自分の作品のはじめての映像化だったので…。でも、試写会で第1話を見たときには、そんな不安は全部吹き飛んで、嬉しさしかありませんでした。会場に来てくれた人たちと同じように、私も感想のアンケートを書いたのですが、嬉しさが余って、誤字脱字だらけのすごいものになったのを覚えてます(笑)。
中井 伝説の(笑)。
大島 でも私たち制作側はコナリさんからのアンケートを読んで、「原作者が褒めてくれている…」って、それはそれは感動したんですよ。
中井 発売中のシナリオブックに、その現物が掲載されるので、ぜひみなさんに見てもらいたいですね。
コナリ 誤字脱字は直しました(笑)。
「凪のお暇」DVD&Blu-ray BOX 好評発売中!
製作著作・発売元:TBS 発売協力:TBSグロウディア 販売元:TCエンタテインメント
©コナリミサト(秋田書店)2017
金曜ドラマ 凪のお暇 シナリオブック 好評発売中!
大島凪、28歳。ワケあって恋も仕事もSNSも全部捨ててみた
脚本:大島里美/原作:コナリミサト
定価(税込): 1,980円
出版社:株式会社 誠文堂新光社
Ⓒコナリミサト(秋田書店)2017ⒸTBS
──コミックスをドラマの脚本にするとき、どんなふうに物語を構成するのですか?
大島 『凪のお暇』の場合、連載中の作品なので、ドラマとして、どういう方向、結論に向かうのか、それを決めますね。その上で、全10回の起承転結を考えて、原作のエピソードを割り振っていきます。今回でいうと、起で凪がお暇生活に入り、承でゴンさんと恋に落ち、敗れる。転で親との戦いがあり、結で凪、慎二、ゴンの三角関係に結論をもたせる、という感じです。
コナリ なるほど〜。
大島 その骨組みに、原作のエピソードを当てはめていき、つながらないところはオリジナルのエピソードを考え…とやっていくのですが、『凪』の場合、入れたいエピソードが多すぎて、削るのが悲しかった…。特に私、うららちゃんと、うららちゃんのビスケットのエピソードが好きで、それを入れたい、まだ早い! みたいな攻防が、私と中井さんの間で何度も繰り広げられましたよね。
中井 ああ、ありましたねビスケット攻防。結果、2話に短く入りました。加えて、うららちゃんのママとママ友の話も2話に入れたかったんだけど、僕が「まだ早い!」って(笑)。
コナリ 確かドラマでは、5話の、凪が立ち直って海に行くきっかけのところに使ってくださいましたよね。あれ、すごく良かったです。立ち直るきっかけとしても使えるのか…と、勉強になりました。
中井 ドラマとしては、まずはメインキャラに興味を持ってもらい、そこから2話、3話…と引っ張っていければ、と思うんです。このドラマで言うと、凪、慎二、ゴンですよね。うららちゃんとママは素敵なキャラなんど、メインキャラを知ってもらってから、見てもらったほうが愛情を持ってもらえる立ち位置。なので「もうちょっと後ろの話で出す」と、大島さんを説得しましたよね。
コナリ うわー、こういう話、すごいおもしろい!
──原作者としては、自分が考えた話が再構築されるというのは、どんな気分ですか?
コナリ 幸せな添削をたくさんしてもらったと思ってます。私にとってマンガというメディアは、ドライブ感が必要なので、思いつくまま描いていく部分が大きい。でも今回ドラマのストーリー展開を見て、「ここをこうしておくと、こんなエピソードを入れておくと、円滑に行ったのか…」みたいな発見と学びが、すごくたくさんありました。例えば、3話の、慎二と凪がレストランで向かい合って、慎二が振られるシーン。これを見て、ドラマの凪は偉いなって思ったんです。ゴンに行くまえに、ちゃんと前彼の慎二に筋を通してる。マンガの凪には、これをさせてないんです、私。
中井 あのシーン、朝8時頃に西麻布で撮影したんですよ。
コナリ 朝8時に振られる慎二(笑)。あと、マンガで描くと、“マンガだから、そういうこともあるよね”って思われてしまいがちなシーン、例えばベランダ越しのキスとかが、役者さんが演じることで別の意味が出る感じがして、それも面白かったです。
大島 マンガならでは、ということでいうと、『凪のお暇』は、結構モノローグが多いんですね。でもそれをそのままドラマにしてしまうと、画面が止まってしまうことになる。なので、コナリさんがモノローグで書かれた言葉を、セリフにして役者さんに言わせて、化学反応を起こす、というのは意識してやっていたかもしれません。
コナリ そうなんですねぇ…。でも、自分が書いたセリフや文字を、役者さんという生身の人間がしゃべっているのは、不思議な感覚でしたね。ドラマを観ていて「これ最高の「セリフだな…。こんなセリフ書いた私、天才!」とか思ったら、結構それが大島さんのオリジナルだったりして。ドラマが楽しすぎて興奮のあまりよくわからなくなっていたんですね。まだまだ修行が足りないと思いました(笑)。
──脚本家として、コナリさんが書かれたセリフで、「これは使いたい!」と思ったものはありますか?
大島 もちろんたくさんありますが、4話に使った、「会いたくて会いたくて震えるなんて、都市伝説かと思ってた」っていうセリフ! あれは本当に大好き。あとは、バブルのママの一言一言。胸にグサグサきましたね。
中井 確かに。漫画を見ながら、何度も身につまされました。
──ママが発するセリフ、何か元ネタがあるんですか?
コナリ あれは、私自身の経験が大きいかも。以前飲食店でバイトをしていたときに、いまいち人とコミュニケーションを取れない自分に気がついて、なんでなんだろうと考えたんですが、そのときに、私って、好かれたいと思っている割に、相手に興味を持ってないのでは…と思ったことがあって。それがベースになってます。
大島 そういうところからだったんですね。
コナリ バブルのママに共感してくださる方って結構いらっしゃって、こんなにたくさん同じことを思う仲間がいたのか…って、個人的には驚いています(笑)。
話はまだまだ尽きません〜。後半は、3人それぞれの好きなシーンなどについて語ります。お楽しみに!
マンガ家。’ 00年『ヘチマミルク』でデビュー。今年1月『凪のお暇』(「エレガンスイブ」/秋田書店にて連載中)で、第65回小学館漫画賞の少女向け部門を受賞。他に『たそがれてマイルーム』(「東京ウォーカー」/KADOKAWA)、『浮遊教室のあと』(「Maybe!」/小学館)を連載中。
脚本家。第16回フジテレビヤングシナリオ大賞で佳作を受賞し、’05年脚本家デビュー。代表作にテレビドラマ『わたしに運命の恋なんてありえないと思ってた』、『忘却のサチコ』、『あなたには帰る家がある』、映画『サヨナラまでの30分』など。第1回市川森一脚本賞を受賞。
TBSテレビ編成制作局 制作センター ドラマ制作部プロデューサー。
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