「サンタクロースにお願いしたいものは?」『凪のお暇』コナリミサト×『SANDA』板垣巴留 新刊発売&クリスマス対談
「凪のお暇」9巻発売記念特別対談!コナリミサトさんがおしゃべりしたい方を招いてお話する連続企画”スナックコナリ”、初回のゲストは「SANDA」1巻が発売されたばかりの板垣巴留さん。久しぶりの再会で、プライベートからお互いのマンガ話まで話題はつきず…。
コナリ お久しぶりです〜。お忙しいところありがとうございます。巴留さんは、仕事の息抜きってどうしてますか?
板垣 一番は……お金を使うことですかね。服でも布巾でも、スクリーントーン爆買いでもなんでもよくて。お金を回すと気持ちが明るくなるんです。
コナリ わかる! 私もこの間、うろんな目でふるさと納税を調べてて、ハッと気づいたら2時間くらい経ってました(笑)。
──「お買い物」じゃなくて「お金を使う」っていう言い方は新鮮ですね。
板垣 社会に触れてる感じがするのかも?
コナリ その考え方、素敵ですね。罪悪感もなくなるし。私の場合、煮詰まったら散歩かな。缶コーヒーを何本も買いながらぐるぐる歩き回って。
板垣 ネームに行き詰まってる時、机に向かい続けるのは一番よくないですよね。派手なことはしないでパッとお風呂に入っちゃうとか寝るとか。生活者の自分を戻すのがいいですね。
コナリ クッキー焼くのもおすすめです。めちゃくちゃ癒されるんですよ!
板垣 それ、ビリー・アイリッシュも言ってましたよ。
コナリ ほんとに⁉︎ スーパースターと被ってしまった…恥ずかしい(笑)。私が焼くのはすごい簡単なヤツですけどね。型抜きもしないで包丁でトントン輪切りにして焼くような。クッキーって材料は大体いっしょだけど、配分でちょっと違うのができたりするのが面白い。
板垣 私もたまにマフィンを焼いたりします。焼き立てのお菓子、めっちゃおいしいですよね。
コナリ 焼けてくるにおいで幸せになります。
──『凪のお暇』にもよく料理ネタが出てきますよね。
コナリ ご飯が出てくるのが好きなんですよ。人の作品でも。
板垣 急に実感がわきますよね。
コナリ 私は凪ほどマメじゃないですけど、こんな風になれたらいいなと思って。あ、でも、ゴミになりそうなものを使い切るとかは得意かも。トイレットペーパーの芯を切ってタコの形にして遊ぶのとか、いまだにやります(笑)。
板垣 『凪のお暇』の9巻を読ませていただいて……ここまでお母さんがラスボスかと思ってたんですけど、お父さんの顔が初めて出た時は鳥肌立ちましたね。お母さんにもいろいろあったんだなぁと。
コナリ ここまでお母さんのことを詳しく描くことになるとは思ってなかったですよ。でも、パーソナルな部分を掘っていく必要はあると思って描き始めたら、可愛げが出てきちゃったんで困ってます。
板垣 長く描いていると心が揺れますよね。キャラも成長しちゃうし。
コナリ そうなんですよ。私こんなに一作を長く書いたことがなかったので、キャラが成長していくのに驚いてます。
板垣 そうそう、作者が追いつけなくなるんですよね。一番成長したのはゴンさんじゃないですか? 私、最初はゴンさんが怖かったですもん。
コナリ こんな人間になるとは思わなかったですね。でも、怖がってもらえて嬉しいですよ(笑)。
──9巻では慎二がだいぶかわいそうな感じになってしまって……先が気になってしょうがないです。
コナリ 9巻は慎二をはじめ、キャラ全員が「まさかこうなるとは?」っていう意外性を見せた巻になったと思います。TVドラマ版の〝結末〟を観てくださった方にもぜひ読んでほしいです。展開がその〝向こう側〟に行ってるので!
──着地点は決まっているんですか?
コナリ ぼんやりは決めてたけど、今はどうなるかわからないですね。
板垣 私も毎週「この次どうするの?」って思いながら描いてます!
コナリ 私は月刊連載、巴留さんは週刊ですけど、毎回どんなふうにお話を作ってますか? 私の場合は、まずオチを決めてそこに向かっていく感じなんですけど。
板垣 私は基本、「1話の中で3つ出来事が起きる」って決めてます。その3つをキャラがつないでいくみたいな。
コナリ 連載を始めた頃に、3つがちょうどいいと思ったんですか?
板垣 そうですね。
コナリ 私、ネームを描こうとすると、毎回同じように呆然とするんですよ。「どうやって描くんだっけ?」って。
板垣 それ、すごく大事じゃないですか。こなれちゃうとダメなんじゃないでしょうか。
コナリ あまりにも描き方がわからなさすぎて怖くなるくらいですよ。寝てる間に、何かの強大な力によって記憶を消されてるんじゃないかと。でも、気づいたんです。毎回違う話を描いてるから「わからない」んだって。
板垣 結局、同じネームは描けないってことですね! 私は短編形式で『BEAST COMPLEX』を描いてましたけど、これに関しては、こなれちゃったかなと思っていて。良くも悪くも及第点のお話を作れるセオリーがわかってしまって「まずいな」と思ってたんです。心穏やかに連載できましたけど。
コナリ 私も心穏やかになってみたい!
板垣 ダメです! つらいけど、穏やかじゃない道を行きましょう(笑)。
コナリ 『SANDA』は1巻目からターボ全開、フルスロットルって感じですよね。物語の設定はどうやって思いついたんですか?
板垣 『BEASTARS』で「草食と肉食」を対立項にしたので、今度は「大人と子ども」をテーマにしようと、まず考えたんです。サンタをモチーフにしたのは、もともとサンタクロースが好きだったから。幼少期は異常に執着してました。
──サンタに執着とは⁉︎
板垣 ずっと存在を信じていて……といっても中学くらいになると厳しくなってきたので「存在はしてるけど、親に委託してる」っていう設定にシフトチェンジしました(笑)。イブの夜にはドキドキしながら手紙とか差し入れとか用意して。
コナリ 差し入れは何を?
板垣 外国人だから、牛乳とクッキーとか。なくなってるとテンション上がるんですよ。
コナリ うわ、かわいい!
板垣 体格の大きい男性が好みなのもサンタがベースなんです。そういえば、実は今年初めて『ターミネーター』を観て、すごく面白かったんですよ! ターミネーターってその後は正義の味方みたいになってますけど、第1作ではただただ女性を追っかけ回しててほとんどホラーみたいで。
コナリ シュワちゃん(アーノルド・シュワルツェネッガー)、大きいし!
板垣 めっちゃカッコいいですね。「こんな人いるんだ!」ってときめきました。
コナリ もうすぐクリスマスですけど、今サンタクロースにお願いするとしたら何ですか?
板垣 そうですねぇ……私、お酒飲めないので、アルコールを分解できる肝臓が欲しいかな。クリスマスの朝、起きたら臓器が移植されてるとか(笑)。
コナリ すっごくいい発想! 今日はノンアルシャンパンでしたが、お酒に強い肝臓を手に入れた暁にはガツンとしたやつで乾杯しましょう~!! 私は電動歯ブラシが欲しいです(笑)。
板垣 私、使ってるけどめちゃめちゃいいですよ。楽です。
コナリ 歯磨きが楽しいって思いたいんですよ。サンタさんにお願いします!
(取材・文/粟生こずえ 写真/竹中智也)
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