◆前編 手書きブログで亀先生に「発見」されたトマトスープ先生~歴史マンガ描きの梁山泊!?~
◆『出会いはムガル。約10年来の交友関係が織りなすプレミアム対談!』
『天幕のジャードゥーガル』トマトスープ×『バットゥータ先生のグルメアンナイト』亀
~「歴史マンガ」に魅せられた2人、本音の盟友対談~
>>>『バットゥータ先生のグルメアンナイト』第1話はこちらからお読みいただけます。
対談にも出てくるので、ぜひ先におさらいしてくださいね。
担当 今回はお集まりいただきありがとうございます。 さて、お2人は以前から交流があり、執筆ジャンルも同じでらっしゃいます。普段もよくお話しされる間柄と伺い「お2人の話、聞いてみたすぎる!」と以前から思っておりました。この対談が実現して本当にわくわくしてます。どうぞよろしくお願いします。
トマトスープ&亀 よろしくお願いします。
担当 はい!さっそくですが、お2人はどういうきっかけで交流が始まったのでしょうか。
トマトスープ まず…亀さんが先にマンガを描いてたんですよね。web上で「歴史系倉庫」というwebサイトに亀さんがマンガを載せてたんですけど、私がそこにたどり着いたんです。
歴史系倉庫(https://rank119.gozaru.jp/)
亀 あれ? 私の記憶では…スープさんが手書きブログにマンガを描いているのを私が先に見つけて、「めっちゃうまいやん!」と思って、私から声をかけに行ったのがきっかけという認識なんですけど…。
トマトスープ いえ、私がまだ学生のころ、歴史にハマりたての頃に「同じことしてる人いないかな?」と思ってマンガを描いている人を探したんですよ。そこで亀さんがすぐ検索で引っかかって、「面白いことをしている人がいるな」と思ったんですよね。その頃、手書きブログには歴史創作をしている人がたくさんいたんですよ。それで、「お近づきになりたい!」と思って、手書きブログの世界に入っていったんですよね…。
亀 え、じゃあ、「見つけてもらいたい」と思って手書きブログを始めたということ?
トマトスープ そういうことになりますね…(笑)。もともと歴史は好きだったんですけど、ちゃんと歴史を調べてみようと思った時に「歴史創作」という、趣味の同人誌として歴史マンガを描いてみようよという文化があることに気付いて、自分でも描いてみたいと思ったので始めてみました。
担当 なるほど。歴史に興味があっただけではなく、歴史を描くということにもご興味があったんですね。
トマトスープ 両方ありましたね。
亀 ただ、手書きブログじゃなくて、サイトみたいなところで声をかけたイメージがあるんですけど…。
トマトスープ そうなんですよ。サイトに私がマンガを置いていて、そこに亀さんがメッセージをくれてたんですけど、半年くらい気付かなかったんですよ(笑)。
亀 そうでしたっけ。
トマトスープ 見つけて話しかけてくれた人がいたのに、その時は気づかなかったという…。それがのちに亀さんだとわかりましたね。それがきっかけで、同好の士としての交流がWEB上で始まりました。
亀 その後、なんで仲良くなったんでしたっけ?
トマトスープ それから手書きブログで少しずつ交流していたんですけど…私たちが描いていたジャンルというのが歴史創作界の中でもかなり狭いジャンルだったんですよね。亀さんは世界史のオールジャンルに詳しかったんですけど、私はモンゴル周辺しかわからず…。他にも、十六世紀のイスラム王朝とかの絵を描いている人たちが結構いてそうした人たちと交流して、仲良くなったんですが…。
亀 やっぱり…ムガルなのかなぁ。
担当 ムガル。
亀 モンゴルという名前からたぶん変化した単語にムガルという言葉があるんですが、それはイスラム王朝なんですよね。私はムガルとイスラム王朝が好きで、スープさんはモンゴルが好きで、私が好きなものの原型がトマトスープさんにあるという、そういうイメージ。
トマトスープ ムガル王朝というのはインドにあった王朝なんですが、遡ると先祖がティムールという人にあたって、ティムールはモンゴルのチャガタイの子孫のお姫様を妻にしている人なので、そこでモンゴルと繋がるんですよ。
担当 へえ~。壮大な時間のスケールでつながるのが面白いですね!
トマトスープ 私からすると、あんまり知らない時代だけど興味があるところだったので、そこを描く亀さんのマンガを読んで、「面白いな」と初めて知ることがたくさんあったんですよね…。そもそも亀さんの「歴史系倉庫」って、知る人ぞ知る有名な歴史系webサイトだったんですよ。だから本になった時(※)は「来るべき時がきた…!」と私は思っていたくらいで。受験生の方とかが、「亀さんのサイトを見て世界史に興味が持てました」とかって反応が結構あったりしたり。そういう需要があったんですね。
※亀先生の歴史webサイト「歴史系倉庫」を書籍化した商業単行本デビュー作「歴史系倉庫 世界史の問題児(クズ)たち」(PHP研究所)のこと。
亀 どう反応したらいいのか…(照)。でもそういう需要だけはあると思っていました。
担当 それが狙いのひとつでもあったりしたんですか?知らない方に世界の歴史を伝えるという。
亀 完全にそういうモチベーションでしたね。私自身、高校時代に歴史を好きじゃなくて、あとから「損したな」という想いがあったので、私のマンガは高校時代の自分に向かって描いていました。このマンガで描いたような面白さに高校生の私が気付けていたら、もっと早く歴史にハマれていたのにと思って描いています。
トマトスープ 私もまさに、「亀さんのサイトにもっと早く出会えていたら」って思ってました。
亀 今から見返すと、間違いもあって恥ずかしいですけど(笑)。モチベーションはそんな感じです。
担当 お2人の歴史マンガのモチベーションのお話、とても面白いです!「歴史の面白さをもっと多くの人に伝えたい」というモチベーションはお2人とも、当初からあったようにお見受けしますが、手書きブログの頃から商業連載をしている今まで、一貫して変わらないお気持ちなんでしょうか。
トマトスープ モチベーションということになると、当時からは変わっている部分もあると思います。「自分が面白いと思った歴史を、みんなに面白く伝えたい」という部分は一貫していると思うんですが…。う~ん…。
亀 スープさんのマンガは、最近、スープさんの思考や主張を感じるようになってきましたよね。
トマトスープ そうですね。歴史の面白さを描くぞ、プレゼンするぞ、というモチベーションとは別に、資料を調べているうちに自分の中に主張したいことが発生してきて、マンガを描いていると、どこかで入り込んでくるという感覚でしょうか。
亀 特に『天幕のジャードゥーガル』を読んでいると、「あ、スープさんは、なにか言いたいことがあるのかなぁ…?」って思ったりします。
トマトスープ 商業マンガとして描く時は、ただ歴史を描くのではなく、なにかしらテーマを持って描くようになりました。その点は同人誌で描いていた頃とは変わったところですね。
担当 あえてお聞きしたいのですが、そのテーマとは…?
トマトスープ (言葉を選びながら、教えてくれないトマトスープ先生)…テーマは作品毎に変わりますね。『天幕のジャードゥーガル』と『ダンピアのおいしい冒険』でテーマも違うし…。
担当 後の質問で教えてもらえるかもしれません。また深堀りしましょう。話は戻りますが、お2人が出会った頃、歴史創作をしている方はたくさんいたんですか?
亀 歴史創作をやっている人は多かったんですが、ほとんど戦国時代とか幕末とか、ヨーロッパなら古代ローマとか、有名なジャンルだと昔から創作も盛んでした。一方で、イスラムや中世系だと、ほとんどいなくて…(笑)。
担当 知る人ぞ知る領域だったんですね。
亀 そうすると自然と数少ない仲間で集まりますよね。
最初に行ったのは、三鷹にある中近東文化センターです。
中近東文化センター(http://www.meccj.or.jp/)
担当 それは、どんなセンターですか?
トマトスープ 中近東専門の博物館ですね。普段は申し込まないと入館できないんですが、無料開放日があったので、仲間たちで集まって、そこでオフ会をしました。年に1,2回くらいオフ会をしてましたっけ。京都旅行も行ったような。
担当 京都旅行!それはどちらに?
亀 ゲルを見に行きましたね。
トマトスープ 京都の知り合いの家を拠点に、兵庫にゲルの展示があったので、それを見に行ったりして…。
豊岡市/日本・モンゴル民族博物館(https://www3.city.toyooka.lg.jp/monpaku/)
担当 すごい。とっても楽しそうです!
亀 当時、みなさんの知見を聞きにオフ会に行くようなところがありましたね。ちょっとずつ違う領域に興味を持つ方々のお話がおもしろくて、いつもメモをとっていました。あの場は、私にとっては「勉強会」でしたね。
トマトスープ その感覚、私もありますよ。「その時代、その地域はそうなんだ」みたいなね。例えば十六世紀のある王朝のモスクの扉が展示されていたら、「この時代はね…」と仲間内でその時代・場所に詳しい人が解説してくれたり。誰もわかんない時は「わかんないね」って言い合って終わる(笑)。
担当 へえ~~。お互いに高め合う関係…。
トマトスープ いや、高め合うというより、アニメ好きが集まってあれこれ話すような感じですよ(笑)。1人じゃ網羅しきれない歴史のいろんな話を、他の詳しい人から聞いて、「面白いな~」って思ったりして…。そういうのが、すごく楽しかったですね。
担当 聞くだけで楽しそう。それが何年前くらいですか?
トマトスープ 8~9年前くらいじゃないですか?交流する中で、みんなで同人誌を作ったりしましたね。「グルジア史創作アンソロジー」。
担当 グルジア!へえ~!
亀 スープさんがグルジアでアンソロジーを作るって聞いて、私も何とか歴史上の接点を見つけ出して、参加させてもらいました。
トマトスープ 私はモンゴル帝国の歴史に興味があったので(※)。現在はジョージアに名称が変わっていますが、当時はまだグルジアという名前で普及していたのでグルジア史アンソロジーになったんですけど。(以下「ジョージア」で統一します)
※1243年、グルジアはモンゴル帝国に併合され、その属領となった。
トマトスープ ジョージアの歴史を読みたいと思っていたんですけど、通史で読める本が日本でなかったんです。でも、当時一緒に世界史マンガを描いていた人たちの、それぞれの専門分野にジョージアがちょっとずつ絡んでいたりしたので、それを持ち寄れば一冊のジョージアの本になるのでは?という発想が沸いて、企画を立ち上げました。
担当 発想が編集者的!
トマトスープ 私ともう一人の仲間とで原稿を集めたんですが、最終的に、亀さんも含めて9人が参加するジョージア・アンソロジーになりました。
担当 豪華ですね、9人も。
トマトスープ その中に小説家の並木陽先生(※)もいましたね。
※小説家。脚本家。マンガ原作者。近刊の『斜陽の国のルスダン』はまさにジョージアの女王とイスラームの王子が主人公の歴史ロマンス小説で、トマトスープ先生がイラスト担当。他にマンガ原作『フローラの白い結婚』など。
担当 それが7年前…皆さん年季が入っていますね。そして今のそれぞれの創作活動につながっている…。
トマトスープ 気が付いたらあっという間に過ぎてましたねえ。
▼今回の対談を記念しお互いの作品キャラクターを交換&描き下ろしていただきました!▼
>>>中編はこちら。もっとディープな話が聞けちゃう...かも!?
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