トピックス 2024.09.20

かっぴー×ヒロユキ　物欲サイコー！！　『ブラパト！』１巻発売記念対談【後編】

９月13日、『ブラパト！ブランドパトロール本日も異常なし！』（原作・かっぴー／漫画・大久保ヒロミ）第１巻が刊行されました。発売を祝し、『カノジョも彼女』『アホガール』などのヒット作の作者で腕時計のコレクターとしても知られるヒロユキ先生とかっぴー先生の対談が実現。腕時計コレクションを見せ合う仲の２人が、大好きなブランドを追いかける楽しみを語ります。

前編はこちら

取材・文：粟生こずえ
写真：石川真魚

店員に正体がバレてしまったかっぴー先生、大ピンチ！？

ヒロユキ　最初に買えるまで、どこまで行ったらこの努力が報われるのかわからないっていう状態が一番キツいですよね。

かっぴー　エルメスもロレックスも、いきなり行って「これが欲しい」と言っても買えない。お店に通い詰めて「在庫があります」と言ってもらえるまでひたすら通う。これを「マラソン」というんですが…。

ヒロユキ　欲しかったのを出してもらえたときは超うれしいですよね！

かっぴー　瞬間的に脳汁が出る、あの感じをマンガで表現したい！

ヒロユキ　ホントに「その日」までは買える日が来ると思えないんですよね。あと、自己肯定感がめちゃめちゃ落ちる（笑）。成人してマンガ家になってからこんなにむげに扱われたことないなって思いましたからね（笑）。「ああ、ぼく、これまでけっこう人からやさしくされてきたんだな」って。

かっぴー　まわりに恵まれて、人への感謝を忘れてるかもしれないと思う人はぜひ体験してほしい（笑）。

ヒロユキ　オレなんてただの肉の塊だなって実感しました。

かっぴー　その辺の芸能人だって特別扱いされないんじゃないかな。

ヒロユキ　芸能人の中でも超トップクラスじゃないとダメでしょうね。

かっぴー　じつはぼく、この間エルメスで店員さんに面が割れてしまいまして。わりと有名な店員さんで「エルメスは修羅の道ですよ」ってよく言う人がいて、その人をモデルにした「修羅門さん」ってキャラを登場させてるんですけど。どうしよう、嫌われちゃって買えなくなったら。

本編に登場する修羅門さん。『ブラパト！ブランドパトロール本日も異常なし！』第11話より

ヒロユキ　いや、大丈夫ですよ。『ブラパト！』は店員さんがいやがるようなことは描いてないと思いますし。ぼくも当初は「こんな本出して、嫌われたらどうしよう」ってビビってたけどね。担当の店員さんは全員「おもしろかったです」って言ってくれました。

かっぴー　でも、ヒロユキさんの場合は店員さんとの関係ができあがった後ですもんね。ぼくの場合、まだ関係ができる前なんでちょっと不安…。

ヒロユキ　でも、覚えてもらえるじゃないですか。

かっぴー　だといいんですが。『ブラパト！』が重版したらエルメスの時計を買おうと思って（笑）。

ヒロユキ　ちなみにエルメスの時計なら「H０８」あたりですか？

かっぴー　ああ、あれは試着したんですけどちょっとぼくの腕には合わなくて。今年出た新作モデルの「カット」が欲しいなぁと思ってるんです。

お金をかけたからこそ実現できる
ものの魅力に触れてほしい

──お２人の幸せそうなやりとりを聞いていると、時計やブランド品の楽しさが伝染してくる感じがします！

かっぴー　楽しいですよ！　時計好き仲間で集まって話すときも、みんな目がトロ〜ンとしちゃってる。ちょっと悔しいのは高価な腕時計を「お金持ちアピール」みたいに思っている人がいることですね。お金があまってるから買ってるわけじゃない。本当に好きだし、めちゃくちゃ気持ちが上がるんです。

ヒロユキ　そう！　お金があまってるから買ってるわけじゃないってのは、ぼくの本のタイトルを見れば丸わかりですが（笑）。

かっぴー先生がパトロール中に出会ったエルメスのオータクロアというバッグ。今ではかっぴー先生の相棒のような存在です。

かっぴー　エルメスや時計に興味を持った人はぜひお店に行ってみてほしいです。

ヒロユキ　いいものってやっぱりよくできているんですよ。いろんなものをじかに見ているうちに、目が肥えて見る目が養われていきます。時計ひとつにもとんでもない技術革新があったり、すごくおもしろいデザインがあったり。お金をかけたからこそ実現できるものがある。それを身につけることができるのが面白い。「いいな」と思うこと自体、一種の豊かさかなとも思います。

かっぴー　時計もエルメスのバッグもアートの一種だととらえています。ぼくはアート作品も好きなんですが、飾る壁面が足りなくなってから買わなくなっちゃった。どこかに保管する手もあるんだけど、ぼくの場合、好きなものはそばに置いて毎日見たい。バッグや時計なら、まさに毎日楽しめる。すごく手のこんだ工芸品であり、デイリーユースできるアートともいえますから。それに、刺激になります。部屋にエルメスのバッグがあったら自分もちゃんとしたもの作らなきゃって思う。エルメスに見張られてるみたいな。

ヒロユキ　物に負けないようにしないとですよね。

物欲が人間を人間たらしめている！
買うことは未来を作ること

──おふたりが今欲しいものは何ですか？

かっぴー　次はやっぱりバーキンが欲しいです。時計に関しては、ぼくが買える範囲ではそろってきたというか満たされてきたというか。次のレベルに行くとなると、かなり背伸びすることになりますね。

ヒロユキ　ぼくも本当に好きなものだけ買おうと心に決めて、今後はより絞っていく感じかな。欲しかったものは一定そろったんでここで終わっても後悔はないけど、あわよくば…のドリームウォッチはあるんですよ。

かっぴー　何です？

ヒロユキ　何本かありますが、１本はリシャール・ミルの「RM３５-０３」の白。非常に人気のモデルで、ぼくのような人間に回ってくる確率は低いとは思いますが。「これが欲しい」と店員さんには発表されてすぐ伝えてあって、何年でも待つつもりです。もちろん、ただ待つだけじゃなく、ぼくはぼくなりに「どうしたら買えるのか」っていうことは常に考えてます（笑）　

かっぴー　うわー、買えてほしい。ニッコニコのヒロユキさん見たい！

ヒロユキ　なんにせよ連載準備をして資金を貯めないと（笑）。

かっぴー　腕時計って現代では必需品じゃないけどーー必要じゃないものを欲しがる動物はほかにいない。これが人間ですよ！　物欲が人間を人間たらしめている（笑）。時計とかバッグに限らず、買う人がいるから新しい素晴らしいものが生まれる。欲しいものを買うことは未来に残していくことにもつながるんですよね。

ヒロユキ　マンガだってそうなんですよね。

かっぴー　マンガも今はたいてい無料で読めるけど、なんでお金を出して買うかっていったら「次」が読みたいからです。

ヒロユキ　最後になりましたが『ブラパト！』１巻刊行おめでとうございます。これからの作中の展開も、かっぴーさんのエルパト展開も楽しみにしています。

かっぴー　ありがとうございます！

【かっぴー】
漫画家・漫画原作者。1985年神奈川県生まれ。株式会社なつやすみ代表。武蔵野美術大学を卒業後、大手広告会社に入社、アートディレクターを務める。WEB制作会社のプランナーに転職後、noteに掲載した漫画『フェイスブックポリス』が大きな話題となり、2016年に漫画家として独立。代表作は『左ききのエレン』（集英社）。現在連載中の作品に『左ききのエレン-DOPE-』（note）、『柳さんごはんですよ』（集英社）。『ブラパト！ブランドパトロール本日も異常なし！』（Souffle）で原作を担当。

【ヒロユキ】
漫画家。1982年石川県生まれ。代表作に『ドージンワーク』（芳文社）、『マンガ家さんとアシスタントさんと』（スクウェア・エニックス）、『アホガール』、『カノジョも彼女』（ともに講談社）などがある。この4作品はすべてアニメ化されている。2023年に腕時計コレクター遍歴を綴ったエッセイ『アニメ化４作品のマンガ家が腕時計にハマった結果5000万円の借金をつくった話』（ワニブックス）を上梓。