『部屋から出ないで100年生きる健康法』 カレー沢薫 目指せ元気な引きこもり!
#1 この調子でいくと死ぬ
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健康を害している。
まずこの連載が始まることを締め切りの10日前まで忘れていたため、思い出した瞬間寿命が50年ほど縮んだ。多分明日死ぬか、死んだことに気づかず仕事をしているかだろう。
つまり、このコラムのテーマは「健康」である。
しかし、こうやって連載が一個増えた時点で健康に悪い、だが仕事が減るのも悪いし、ゼロになったら死に直結する。作家にとって仕事はあってもなくても体に悪いのだ。
このように、執筆業などという仕事を選んだ時点で「健康」などと言うのは寝言である。
しかし作家全員が、夭折や自殺をしているわけではない。あの全盛期は多忙を極めたであろう、水木しげる御大だって、見事大往生なされたではないか。
などと言うと「貴様ごときを水木神と同列に語るな」と殴る蹴るの暴行を受け、全治三か月になるので、やはり作家業は体に悪い。
だが、若い漫画家が急逝したというニュースは決して珍しいものではない、しかもニュースになるのはそこそこ知名度のある作家だろうから、実際はもっと死んでいるはずである。
しかし、本当に漫画というのは体に悪い、不規則な生活で内臓的に悪いのはもちろん、目や腕も酷使する、そして何より座りっぱなしなのだ。
「漫画家は座りっぱなしだ」「座りっぱなしだとどうなる?」「知らんのか」「足がやられる」思わずコブラ寸劇が始まってしまうほどの理不尽だ。足を全く使わないのに、タイボクサーより足にダメージを負っている。さらに、久しぶりに立ち上がった瞬間、脳が梗塞したりするのだ。もはや、生きているのが不思議である。やはり死んでいるのかもしれない。
先ほどから漂う異臭はワキからきていると思ったが、死んでいる上に腐ってきたせいのような気がしてきた、早急に冷蔵庫に入るか土に埋まったほうが良い。
仮にまだ死んでいないとしても、最近若い頃に比べ、体の不調、そして死を具体的に感じるようになった「この調子でいくと死ぬな」と思うのだ。
「ぜひその調子でいってくれ」との声も聞こえるが、死んだ瞬間砂になる等のエコ設計なら良いが、私の死体を発見する人の迷惑を考えると、突然には死ねない、樹海、ポリ袋二重重ねなど、周到な準備をして、人らしく死にたい。
前置きが長くなったが、当コラムの趣旨は色んな健康法を試して健康になろう、ということだ。しかし私には継続力がない、美容健康を志したことなど一度や二度ではないが、続いたためしがない、ついでに連載も続かない、こちらに続ける意志があっても続かないのだから相当だ。
なので、毎回違う健康法に飛びつくことにする「新しい健康法に飛びつき続ける」健康法である。
ちなみに担当からは「水○水など、物議を醸し出しているものはケンカの元なので、日光浴など、どことも揉めずに、金もかからない健康法を取り上げて欲しい」と言われた。
まさかヤングチャンピオンさんから「日光浴」などという言葉が飛び出すとは思わなかった、ペットボトルの水一本だけ渡して、人を砂漠に放置するような漫画ばかり掲載しているくせに驚きである。
しかし、確かにケンカは体に悪い、訴訟は精神的負担になるだろうし、リアルケンカはさらに悪い、多分血とか出る、出血と健康は対極だ。
それを考えるとヤンチャン誌面では、健康に悪い事が頻繁に行われているように思える、良いのはセックスぐらいだ。
しかし、ヤングチャンピオンで健康に悪い行為をしているタイプの方に「そんな健康に悪い事はやめて水○水を飲みなさい」と言ったら、多分出血することになると思う。
それに、そういうタイプの方が日光浴ばかりしだしたら、この雑誌は廃刊になるだろう。
つまり、すごく相性の悪いテーマである、
具合が悪くなってきた。
次回は9月20日、『部屋から出ないで100年生きる健康法』発売日に更新します!
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コミュニケーションしたくないからジムには行きたくないし、面倒くさいのは嫌だし継続力もない。本コラム連載中に会社員を辞め、ほぼ外に出ることもなくなった著者が、頑張らずに健康法を試していく新時代健康コラム!! 目指せ元気な引きこもり!