#2 笑顔で健康になろう | Souffle(スーフル)
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コラム 2019.09.20

『部屋から出ないで100年生きる健康法』 カレー沢薫 目指せ元気な引きこもり!

#2 笑顔で健康になろう

『部屋から出ないで100年生きる健康法』発売記念、特別試し読み!

部屋から出ないで100年生きる健康法この原稿の催促メールを見て嘔吐した。

やはりこのコラムを始めて得た健康より、失った寿命の方が長い気がする。とにかく、今は圧倒的に時間がない、やるソシャゲが多すぎる、エビアンに登ったりする健康法は無理だ。ソシャゲとかエゴサとかPixivをしている合間と言わず、最中にできるぐらいではないと試す価値すらない。

というわけで担当から推奨されたのが「笑顔健康法」だ。確かに、今の私、というか私の人生に圧倒的に足りていないものだ。不健康なのはもはや必然、死んでないのが不思議なくらいだ。しかし「笑顔が大事」と言うと必ず「おもしろくもないのに笑えるか」というクソリプが飛んでくる。しかし昨今ではそれはもう「甘え」なのだ。「可愛い」も「笑顔」も作る時代だ。前者は残念ながら、制作失敗している者の方が多いが、幸い笑顔の方が、汚くても笑顔だ。ジェイソン・ステイサムに背中に銃口を押し付けられながら「どうした? 笑えよ」と言われていると思えば、笑えないわけがない。つまり、笑えるシチュエーションを待つのではなく(そんな場面は永遠に来ない)笑顔も訓練だということである。

というわけで、さっそく健康のために笑顔を作っていこう。まず、一番のコツは、人がいないところでやる点だ。人間が虚空に向かって笑顔の練習している姿は、自分の健康にはいいかもしれないが、それを見ている他人の心には悪い。自分が有害物質になるのは良い事ではない。まず、「あいうえお」の発声だ。それもぼそぼそ言ってはいけない、まるでア行が重大事件であるが如く、大きく口をあけでかい声で、一文字につき5秒、顔の筋肉を意識しながら言う。これを5セットだ。

笑顔を手に入れようとしている自分の姿が全く笑えないという矛盾である。どうやら、笑顔の練習の一番の敵は己の羞恥だ。一瞬でも照れたり「バカみてえ」と思ったら健康どころか即死である。

しかし、世の中には一人で発声どころか、犬猫や、赤子にすら恥ずかしくて言葉を発することができないという奴がいる。そんな、羞恥心がありすぎて逆にドロップキックや水平チョップをされてしまう人間のために、声を出さずにできる笑顔の練習を、いつもどおりネットから拾ってきた。

まず箸を1本上前歯と下唇で挟む、次に上の歯が見えるように両頬の筋肉を引き上げ1分キープだ。1分待たずとも、その時の自分のツラを鏡で見れば、瞬時に笑顔が手に入れられそうな気もするが、逆に永遠に失ってしまうかもしれない、諸刃の剣である。

だが、声も出したくないし、おもしろフェイスもしたくない、という、そうやって、あれも嫌これも嫌と言っているのが笑顔が少ねえ原因じゃねえのという奴もいるだろう。そういう奴はとりあえず、口角、口の端を上げる、練習からだ。私はそういう奴なので、まずそこから始めた。そして「口角全然上がらない」ということに気づいた。四十肩ならぬ「四十口角」である。使っていない筋肉は衰えるということを身を以って知った。

やはり「おもしろくもないのに笑う」というのは、なかなか難易度が高いのである。だったら、Pixivで自分の推しキャラを見ているときなど笑っているのではないか、と思われるかもしれないが、そういう時のオタクは意外と笑っていないのだ。大体、泣いてるか「ツライ」と言って苦悶の表情を浮かべているかだし、萌えが高じすぎると怒り出すこともある。そして最終的に「放心状態」になるので、笑う隙がないのだ。

このように萌えというのは非常に体に悪いのだが、心には非常に良く、「心霊台」を突かれた北斗の拳のレイの如く、一定期間のた打ち回ったあと、晴れやかな顔で「生きる!」とか言い出すのである。

逆に、無理に笑顔を作ったとしても、それはただの顔の筋トレだろう。確かに筋肉は尊いが、筋肉というのはその筋肉でストレス原因を殺せるようになってから初めて、真価を発揮する。顔面の筋肉で相手を挟み殺すには相当の訓練が必要なはずだ。

ならばまずは、心の健康からではないか。よって私はまず笑顔より「Pixiv健康法」を推す。

ちなみに、笑うだけでなく、自分が冗談を言ったりするのも、脳の健康にいいそうだ。自分はギャグ漫画家なので、毎日冗談を言ったり考えたりしているようなものだが、その時の自分の顔と言ったら至って真顔である。自分で自分のギャグに吹き出すぐらいが良いのだろうが、それは小説「人間失格」の主人公がモルヒネをやりながら自分の原稿に笑っているのに酷似している。

「モルヒネ健康法」も視野に入れておこう。

次回は9月24日更新です。

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