『月曜日のお寺ごはん』青江覚峰 浅草・緑泉寺のお坊さんによる人生相談
#47 遠方の実家へのお墓参りに行けません。
今週の相談:遠方にある実家のお墓参りに行けません。40代既婚者です。地方にある実家のお墓を、親が亡くなったあと、どうすればいいのかわかりません。永代供養ではありますが、親が亡くなったら帰省の理由もなく、日々の生活も忙しくお墓参りにはいけません。ご先祖様に申し訳ないとは思いますが、どのような心持ちでいればいいでしょうか。お墓の移転などは、可能なのでしょうか。
この問題、昨今は実にあちらこちらで聞かれることです。
実家のある地方にお墓があるけど、自分は都市部に出て就職し、そこでの生活ができあがってしまっている。
休日返上で家族にまでお墓参りに付き合わせるのもちょっと……という状況ですね。
さて、
どのような心持ちでいればいいでしょうか。
お墓の移転などは、可能なのでしょうか。
とのことですので、これについてお答えしようと思います。
まず、ふたつめのお墓の移転について。
これはずばり、可能です。
遠方のお墓を自宅近くに移してしまえば、お墓参りは格段に楽になりますよね。
お墓を移動させるには、次の準備が必要となります。
つまり、
・移転先のお墓の確保
・現在の墓所からの離脱
この2点です。
もとのお寺の宗派がわかれば、その宗派の本山で相談に乗っていただき、お住まいの地域のお寺を紹介していただいてもいいでしょう。
いずれにしても、移転先の墓所を用意し、そこで必要な書類などを確認し、もとのお墓の管理者に相談をするという流れになります。
なお、お金のことをお伝えすると、もとのお墓を原状復帰するために少なからずのお金がかかります。
このあたりは賃貸マンションを引き払うのと同じで、更地で購入した地面の上に建てた墓石の撤去、カロートと言われる骨壷を収める部位の撤去などを行う必要があり、その作業を石材店に依頼するための費用です。
次に、
どのような心持ちでいればいいでしょうか
というご質問に対してお答えしましょう。
まず、そのようにお墓参りのことでモヤモヤと悩んでしまうことを、ご先祖様は望まないと思います。
仏教では、今生きている人が、悩みや苦しみを抱え込まずに生きること、それをいちばん大切にしています。
モヤモヤがご先祖様に申し訳ないという気持ちからきているのであれば、毎日手を合わせる仏壇や、ご本尊やお位牌など、家で手を合わせられる環境を作ってみてはいかがでしょうか。
言わずもがな、仏壇は仏様をおまつりするところです。
それに加え、 自分が今ここにいる、それ自体にまつわる数多のつながりを見つめ直すものでもあります。
誰もが自分ひとりで生まれてくるのではありません。
必ず2人の親、4人の祖父母、8人の曽祖父母、16人の……という果てしないつながりがあり、もしそのうちのひとりでも欠けていたら、自分の存在はありえないのです。
自分がいなければ、今の自分が関わっている友だちも、恋人も、仕事仲間も、今と違う人生を歩むことになります。
そのような大きな影響を与えてくれたご先祖様に対して感謝を捧げる。
これはなにも、お墓まで行かないとできないことではありません。
仏壇でもいいのです。それに変わるものでもいいのです。
何かに対して手を合わせ、思いを致し、感謝をする。
そういったことをできる環境があれば、お墓参りに行けないモヤモヤも小さくなるのではないでしょうか。
次回は11月4日更新です。
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