『月曜日のお寺ごはん』青江覚峰 浅草・緑泉寺のお坊さんによる人生相談
#67 株で大損してしまいました。
今週の相談:株で大損してしまい、何をしていてもそのことが頭から離れません。損をすることに自分がこんなに過敏なんだということを初めて知りました…。気持ちの持ちようを教えていただけないでしょうか。
世界同時株安の影響で、このような不安を抱える方が少なくないと思われます。
今でこそ、「かぶ」と入力すると株より先に蕪が出てくる私も、学生時代にはだいぶ株をやっていましたので、そのお気持ちはよくわかります。損切りをしないといけない。でももしかしたら今が底値かもしれない。むしろ買い時かもしれないなどと、と悶々としてしまいますよね。それで結局大きく赤字を膨らませてしまっても、うまいこと切り抜けられたとしても、その都度過度に一喜一憂してしまう。
そういう人は、残念ながら株に向いていないのかもしれません。
経済用語にサンク(埋没)コストという言葉があります。
これは、既に発生して回収が不可能なコスト、例えば既に消化した予算や、建築した工場の建設費用、使ってしまった開発費などのことです。既に使った予算はどうしたって戻ってくることはないので、サンクコスト=戻らない過去にとらわれず、今、何が必要で何をするべきかを正しく判断しなければなりません。
株も同じです。もともといくらあった資本が今はこれだけになってしまったと嘆く気持ちはわかります。でも、どれだけ悲しんでも元通りにはなりません。今手元にある資本。それが唯一の現実です。その資本で何ができるのか、何ができないのかを考えましょう。
仏教ではよく「今、ここ、わたし」を大切にしましょうといいます。
「昔はこうだった」と思いを過去に置き去りにすることは、今を冷静に見ることを阻害します。
同時にまだ見ぬ未来に思い及ばせてばかりいることもまた、適切な判断を邪魔します。
株でも同じことです。
この株は今が底でこれから跳ね上がるに違いないと思っても、先のことなんて誰もわかりません。まさに今世界中を騒がせているコロナウィルスのパンデミックだって、この先どうなっていくかは誰にもわかりません。
過去も未来も気にすることなく、今自分の手元に何があるのか。
それを用いてできること、したいことを、現在の自分自身を起点に考えましょう。
次回は3月30日更新です。
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