『月曜日のお寺ごはん』青江覚峰 浅草・緑泉寺のお坊さんによる人生相談
#52 身体を介在しない恋。
今週の相談:既婚女性です。夫ではない、とある男性に好意を持ちはじめています。その彼と体を交えるつもりはないのですが、精神的には仲を深めたい気持ちが高まっています。これは不倫になるのでしょうか。
精神的な恋愛が不倫行為に当たるかどうか。実際に弁護士さんのサイトを見てみると、
【不倫(不貞行為)とみなされる例】
・肉体関係を持った
・同棲している
・ラブホテルに入り長時間二人きりだった
とありました。つまりあなたのように体を介さないものに関しては法律上は「不倫」と呼ばれることはないようです。
では、仏教ではどうでしょうか?
仏教で悪とされるものの一つに不邪淫というもがあります。この定義の範囲は非常に曖昧なのですが、少なくとも「夫婦間以外での性的な関係」は不邪淫にあたると考えてよいでしょう。
さて、仏教では一つの罪悪について、3つの側面から考えます。すなわち、身(しん)・口(く)・意(い)の三種類です、
身(しん)
身体で犯す罪。
口(く)
口で犯す罪。
意(い)
心で犯す罪。
この最後の「意」がまさに今回の罪に当たりましょう。いくら体の関係に及んでいない、及ぶつもりがなくても、恋愛感情は性的な感情の一つですから、配偶者以外にそのような気持ちを持った時点で、すでに心が不邪淫を犯していると言えます。
ご質問は、体の関係でなく精神的なものであっても不倫にあたるのかどうか、ということでした。
これについて、お経の中で明確に示されている箇所はちょっと思い当たりません。
しかし、法的な不倫にあたらずとも、心の中での恋愛が罪になるのかどうかということであれば、このようにして誰かに相談したいという気持ちになっている、そのことが答えであるように私は思います。
犬が好きだけど猫も好き、ケーキも好きだけどおはぎも好き、というのとはわけが違います。自分で自分の行い(そのような気持ちを持ったこと自体)に不安がある、後ろめたさがあるからこそのご相談なのでしょう。であれば、それはすでに不邪淫であると言えるのではないでしょうか。
だからと言って、これは罪だからと瞬間的に気持ちを切り替えらるわけではありません。自分は罪を犯している、煩悩を抱えていると知りながら、その罪を手放すことができず苦しむ。それが茨の道なのです。
次回は12月9日更新です。
今後の最新コンテンツが気になる方は、ぜひSouffle公式Twitterをフォロー!