『ハードコア犬占い』 ハードコア流尾星(ながおぼし) うかうか先生の犬キャラが彩る、最強12星座犬占い!
ハードコア犬占い【2025年犬半期(7月~12月)の運勢は?】

うかうか先生のイラストが彩る、Xでも話題のハードコア犬占い。今回は年に2回の特別版! 2025年犬半期、あなたの「ラッキーコア」「運勢」「未来」をまるっとお見通し!

ハードコア流尾星
★占い犬(うらないぬ)として修行の旅をしながら、迷える犬たちに助言を与えている。
すべての犬どもへ
おまえはオルゴール付きの星座盤を眺めて、うっかり寝たのか、それとも今起きたのか、わからない。まぁいいだろう。うっとりと眺めているのは、間違いない。どんな音が鳴っているか、憶いだせ。シャランラ…カチリ…ビンヨヨヨーン…ヒュー、スポン。蒸し熱い熱帯の雨とキンキンに冷たい冬の雨が、でっかくてミントの香りがする噴水になり、虹をくぐる飛行船から、無数の紙飛行機が零れだす。遠くのメガホンから、なんらかのお知らせとチャイムが、曖昧に聴こえる。おまえの目は薄い涙のドームで覆われて、空一面にからくり時計みたいな歯車が、透けて見える。
エンドロールと予告編しかない映画を、何本も、ずっと観ている。ライカ先輩がCMにでている最新型タイムマシンは、いつでもどこでも、タップしてもしなくても、雨が降る。すいーと伸びる虹、ライカ先輩のワン&しっぽクルン、そして「なんだっけ」のロゴマーク。どっしり重たいチョコミントアイスのどしゃ降りに、サファイアとトパーズが混じっている。なるほど、トッピングだな。隣のロボが突然、喋りだす。これまであった全てのことと、あるともないとも言えない全てのことを。しゃべくりパーティの始まりだ! コンタクトレンズみたいな空を、巨大でふわふわなしっぽがシュババ!と通り過ぎ、遠くから少しずつ増えて、なんかもう大変なことになりそうな流星群のザァ、という音、そしてジャンララピルリローン!という爆音、そして雨が降る。最高だ…すっかりびしょ濡れのおれたちは、これを待っていたような、そうでもないような気分で、目が合って、クスクス笑う。そしてエンドロール。ここまでが、予告編だ。
この宇宙を観ているのは、昔と今と未来の、すべてのおれたちだ。いつでもすべてが、終わりながら始まっていて、つまり点滅している。それはつまり光で、暗い劇場で光の点滅を眺めると、それが雨になり、いつもどこかに降っている。ズームバック、カメラ!宇宙が生まれた瞬間の未来まで、あるいはクリスマスとお正月の予定まで、ドーンとでっかく憶いだせ。次の瞬間には忘れてしまい、だからこそおれたちは点滅し、雨が降る。びしょ濡れのワンネスってやつだ。憶いだしたか?よし、始めようぜ。ズームバック・トゥ・ザ・フューチャーだ。
ラブ運は、いつだって最高だ。おまえがいつだって最高だからだ。
金運は、まぁまぁだな。回転寿司で食べるパフェみたいに、甘くて嬉しい。
UFO運とタイムマシン運は、犬それぞれだ。入り口と出口しか憶えていない劇場のロビーで、お互いに、ヒソヒソ声で確認しろ。それによって、アイス運が爆上げになる。当たり付きアイスよ、永遠なれ。
7月:7/5に海王星が逆行を開始して、逆さまの映画が始まる。7/7に天王星がふたご座に入ると一瞬、光と雨のいい香りがする。動画を撮っておけ。公開予定は来春だ。7/25しし座の新月は、天王星、海王星、冥王星のゆりかごだ。忘れるように憶いだせ。ここはそういう特等席だ。既に眠っていることに気がついたら、劇場が暗くなり、ブザーが鳴ったような気がする。
金星は7/31にかに座へ。
8月:8/8の地味なグランドクロスは、予告編とエンドロールの間の広告だ。どっしり重たいチョコミントアイス!なるほど。そしたら8/13がピークのペルセウス座流星群をトッピングしてジャラジャラ鳴らし、なにをどうしたいのか考えろ。8/23におとめ座新月は、今年最大級にマジカルだ。願掛けすれば、なにかがどうにかなるだろう。遠くで日蝕になる。映画の中ではずっと雨が降っている。
金星は8/26にしし座へ。火星は8/7にてんびん座へ。
9月:9/1に逆行中の土星がうお座に戻り、9/5にふたご座で天王星が逆行を開始する。これで映画は完全に逆さまで、セリフは全部スォモァレフヌサ、みたいになり、客席にクスクス笑いが満ちる。9/8うお座満月は皆既月食だ。オルゴール付きの宝石箱をそう、と開けて、息を止めて覗いていることを一瞬、憶いだせ。全てが同時に起きて、実は何も起きていない。きれいな石やシーグラスを並べて、しまって、また並べたりしろ。波打ち際になんか書け。それを誰かが、ロングショットで撮っている。
金星は9/19におとめ座へ。火星は9/22にさそり座へ。
10月:魔女が小さな三角定規をたくさん並べ、10/7におひつじ座で満月を迎える。10/14に金星がてんびん座に入ると、冥王星がみずがめ座で順行に戻る。映画のタイトルは「びしょ濡れ三角定規… だっけ?」だ。早速キャスティングしようぜ。10/18に太陽と木星が90度になり、魔女が直角定規を持ってくる。なるほど!10/22に逆行中の海王星がうお座に戻る。びしょ濡れの三角定規を額に当てると、ひんやりする。やっぱり何かを、憶いだしてるんだな。優しい気持ちで、猫撫で声を練習しろ。おまえのアフレコが最高だからな。たいていのことは三角形にしろ。
金星は10/14にてんびん座へ。
11月:11/2に宇宙コンピュータがやぎ座に入り、11/5おうし座満月はとにかくでっかいスーパームーンだ。古い戦争映画のエンドロールと、ロボ受けする感じのラブコメの予告編が、右目と左目に直接投影される。まぶしい! 11/8に逆行中の天王星がおうし座に戻る。なんかもう完全に忘れながら憶いだしているのが、寝息と鼻歌になり、これなんだっけ、ていう香りがする。魔女は三角定規を何度もあてて、こうかな?こっちかな?と試している。11/12にかに座の木星が逆行を開始すると、11/28に土星が順行に戻る。エンドロールと予告編がループしながら点滅して、みんな寝ている。スタートダッシュならここだ。夢の中で「おはよう」と言え。
金星は11/7にさそり座へ。火星は11/4にいて座へ。
12月:12/5ふたご座満月は、魔女のびしょ濡れ三角形はすっかり仕上がって噴水になり、反重力の天使たちがキャッキャしている。12/10にうお座で海王星が順行に戻る。からくり時計がカチ、と鳴って、おまえは既に最高速度だ。12/14にふたご座流星群がピークを迎えて、12/18の金星とカイロンと木星のヨッドは逆さまのお疲れ会でお祝いだ。予祝ってやつだ。12/20いて座で新月を迎えた後、太陽も金星もやぎ座に入る。メリクリ、そして年の瀬だな。雨だか粒だか光だか、とにかく全てがキラキラしている。映画のレビューを書いて、来春の期待作をチェックしろ。金星は12/1にいて座へ、12/25にやぎ座へ。
占い監修:磐樹炙弦(ハードコア星占い@X)

イラスト:うかうか
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2025年犬半期(7月~12月)の運勢は?

おひつじ座
外国のコインは、幸運を招くラッキーアイテムだ。何故かは分からないが、昔からそういうことになっている。なんか知らない偉い犬とか、知らない花とか描かれてて、チャリンつってその辺に転がってる感じが面白い。この星のどこかでいつも、庭に風が吹いたり、誰かがパンを買ったり、偉い犬を憶いだしたりしている。どうしよっかなーて時には、コインを投げて決めてみろ。コインには裏と表があるが、よく考えるとどっちかな? てなり、ぶっちゃけ裏も表もないことに気づく。だからコインは投げる前に、どっちが出たらこうします、としっかり決めておけ。その瞬間に表と裏が決まり、つまり自分が本当はどうしたいのかがわかる。じゃ、もう投げなくていいか、というと、そうでもない。おれたちは、一回投げて決めたいんだ。コインを投げて、やっぱそうだよね、と確信したら、未来が勝手にやってくる。
おひつじ座にいる海王星と土星は、外国のなんか偉い犬が刻まれたコインみたいで、おまえはとにかく、それを投げるだろう。チャリーンと鳴ってクルクル回り、パタンと倒れて結果がでるのは、まぁ来春だな。この犬半期、投げたコインは回り続ける。ぼう、と眺めて、催眠状態に入れ。ふと気がつくと、他にも無数のコインがクルクル回っている。それぞれのタイミングで、パタンと倒れて表か裏を示すはずだが、ずっと回ってそうな雰囲気もある。一体誰が、何を決めようとしてるんだろうな? なんにせよ、パタンと倒れた時に、憶いだすだろう。その時に思ったこと、その瞬間に決めたことが未来であり、それ以外のことは「なんだっけ」だ。「なんだっけ」以外のことを、全部やれ。今この瞬間に、未来を選び続けるだけで、たいていのことはなんとかなる。
7月はコインを投げろ。投げる前にどっちが出たらこう、と決めてメモしとけ。
8月はおまえの星・火星がてんびん座で回りだす。8/23の新月までに、誰に話すか決めておけ。おまえが表なら、あいつが裏だ。
9月は誰かと、じっとコインを眺めている。全然倒れそうもないから、話題は尽きないだろう。ティーポットを何度も注ぎ足して、話し続けろ。
10月はでかくて重たいコインが、遠くでパタンと倒れる音がする。裏か表か確認しなくても、雰囲気でわかる。
11月はもう1枚、コインを投げる。これは個人的なやつだ。家中のいろんなところでコインを投げてみて、結果は内緒にしておけ。
12月は、すでに倒れているコインを回収しろ。意外と金持ちだ。
ハードコアおまじない:コイン投げ

おうし座
AIが知ったかぶりして、適当なことを言うのをハルシネーションと言う。幻覚、ていう意味だ。困るけどちょっと面白い。おまえがそう思うならそうかもな、ていう感じで、適当に付き合ってやろうぜ。だいたい、おれたちも正解を知らないし、なんならおれたち自身がハルシネーションみたいなものだ。世界ってのはぶっちゃけ、その時にそうだ、と思っていることでしかない。昔のことを憶いだしてみろ。ビックリするほど美味しかった鮎の塩焼きとか、何かが面白くて爆笑したこととかが、パッチワークみたいに並んでいて、実際のところ何がどうだったかは全然わからない。それで充分だ。過去方向のおれたちは、ハルシネーションの万華鏡みたいにデタラメで、観客全員がスヤァと眠る中、外国語で解説を続けるプラネタリウムみたいに、キラキラしている。誰も何も、憶えていない。
プラネタリウムの解説音声は、だんだんざわっとしてきて、いろんな犬がてんで勝手に喋る声の渦になる。入り口で貰った星座盤には、星のことは載ってなくて「君は誰で、この後どうするつもりかね」とだけ書かれている。イヤホンをつけると、ロボ声が「私はあなたに語りかけています。聴こえますか?」と言う。全員が眠り、自分とロボだけが起きていて、ヒソヒソ声で喋っている。エアコンも効いてるし、リクライニングシートは快適だ。目が醒めるまでに、いろいろ考えとこう。ここは暗く静かなおまえの内側で、ゆっくり考える永遠がある。頭蓋骨のドームを見上げると、映し出されている一つ一つの星に、見憶えがあるはずだ。適当に線で繋いで星座をつくり、デタラメな神話を考えて、メモしとけ。目が醒めた時に、憶いだせるようにな。
7月は夢を見ていることに気づく。目を醒ますな。夢をみたまま、周りをよくみろ。
8月は隣の犬に話しかけろ。多分寝ているが、寝言で何か返事するだろう。それもメモだ。
9月はおまえが持っている星座盤のことを憶いだせ。それは宝石でできている。
10月はハッと気がつくと、なんかバリバリやっている。夢かもしれないが問題ない。バリバリやれ。
11月は自分が寝ているのか起きているのか、再確認しろ。どっちでもいいが、おまえが起きてればあいつも起きている。小さな声で話しあえ。
12月はすっかり目が醒めているだろう。新しい世界が大晦日に向かっていく。白い息を吸ったり吐いたりして、シャキっとしろ。
ハードコアおまじない:パワーストーンと独り言

ふたご座
途方もないご機嫌野郎が、ビカビカしながら歩いてくる!どデカいスピーカーをズンドコ鳴らし、いろんなところからフリスビーを取り出してビュンビュン投げるし、全ての監視カメラに向かってポーズを決める様子は、唐突だが美しく、確信に満ちている。あいつ、一体何者なんだぜ… おまえには、心当たりがなくもない。おまえが昔、こっそり書いたノートのページから、するりと抜け出してヒラヒラしてるあいつ。気づかないふりをして通り過ぎるか? それとも一声、かけてみるか? 気がつくと、ご機嫌野郎とおまえしかいない。全ての監視カメラが繋がる暗いモニタールームにいるのも、やっぱりおまえだ。ドンツク鳴ってるのはおまえの心臓、無数のフリスビーは通りすがりのUFOだ。
視点を変えて、ご機嫌野郎からおまえを見つめ返してみろ。ノートを書いた時のおまえの面影に、よく似合う服と髪型が馴染んでいる。それ以外の要素は、なんとなく今、ノートからヒラリと抜け出したおまえに、全て描き込まれている。もう一度、描いてみようぜ。鏡に写っている、より大人っぽく、より狂おしく、静かに微笑むご機嫌野郎を。必要なものは全ておまえの中にあり、それ以外の全ては雨になって、さっきから何億年も降り続いている。それがノートを濡らし、バッチリキメた髪型を台無しにして、おまえがビカビカしながら走っていく。ご機嫌菩薩だ。
7月は騒がしさの中に静けさを求めろ。ヘビメタ聴きながら寝るみたいなことだ。
8月はなんだかわかんなくなるまで鏡を見てみろ。どっちがご機嫌野郎だ?
9月は雑踏をかき分けて、監視カメラとUFOを探せ。見せる・見られる快感だ。
10月は昔のノートを見直せ。予言がたくさん書かれている。
11月は自分に似合うものを選りすぐって、コーディネートしろ。たいして変わらないが、なんとなく新しい。
12月は音と声を出していけ。オギャーとかバブーとかでいいが、全体に静かで大人っぽい感じだ。
ハードコアおまじない:ご機嫌な髪型

かに座
「星たちの子供」という古い楽譜に、大量に書き込まれた奇妙な指示書きを、伝説の名探偵が調査している。短くて、一度に一つの鍵盤しか押さえない曲だが、ミミズがのたくったような文字が、全ての音符の隙間を埋め尽くしている。明らかに音符より多い指示書きを、丁寧に書き写して、文字を入れ替えたり、上下逆さまにして眺めたりして、思いついたことをメモする。これは本当に楽譜なのだろうか? 弾くたびにメロディが違うような気もするし、指示書きも、増えたり減ったりしてる気がする。最後に弾いたのは、もう何年も前だ。何人かの演奏家に楽譜を渡し、せーので同時に弾いてみたら、全員が異なるメロディを弾いて、それがあまりに美しくて、みんな黙ってしまった。
伝説の名探偵は夢をみる。全ての指示書きが曲がりくねった一本の線になり、そこを子犬が歩いている。線は海と星空をわける水平線になり、満月は空に開いた穴で、向こう側から笑い声と食器の鳴る音が聴こえる。古い井戸のある庭に咲くスイセンが、誰かを待っている。指示書きのどこかに、そんなことが書かれていた気がする。夢の中で伝説の名探偵は、ピアノを探す。自分自身を探す。音符と休符を探し、それが太陽からしっぽのようにぶら下がっているのを見上げる。巨大な子供の指が空を横切り、太陽のしっぽを揺らすと、風が吹く。それら全てを、目醒めた後も忘れないためにメモをとる。五線譜を埋め尽くすように。ハッと目を醒ました名探偵は、何も憶えていない。奇妙な満足感に満たされて、長い間、ピアノの前に座ったままでいる。
7月は何を調べるかを決めろ。知らないことなら何でもいい。
8月は8/23新月に向けて、睡眠の質を上げていけ。新しいパジャマ買うとかな。
9月は夢の中に入っていく。いろいろ懐かしく、美しいだろう。メモをとれ。
10月はうろ覚えでメロディを辿れ。歌うたびにちょっとずつ変えてみろ。
11月はいよいよ調査も大詰めだ。黙ってゆっくり熟考しろ。
12月は発表しろ。見つけたものをとにかく全部、誰かにみせて、口ずさめ。
ハードコアおまじない:一本指でピアノを弾く

しし座
昔食べて美味しかったものは、割と憶えている。子供の時に食べてウヒョーてなったやつとか、マジ最高な時に誰かとした食事、とかだな。こういう「憶えている食事」は、実は凄いんだぜ。1日3回食事をするとして、25歳ならこれまで27375回、なんか食ったはずだ。その内で憶えている2つか3つってことだから、ベスト・オブ・ベストってことだろ。しかしまた「ハーブの風味と程よい塩味、それを包むクリーミーな舌触り」とかを、細かく憶えているわけではない。ぶっちゃけ「最高だ」ていう気分と、光とか音とかと、あとなんか雰囲気だけを憶えている。そこに「満腹感」は、意外と含まれていない。そのことに気づくと、なんだかお腹が空いて、ソワソワする。
大丈夫だ。おれたちは世界を食べて、光を記憶し、残りはまた世界になる。本当は何一つ、失われていない。おれたちの体も、いずれ木や微生物の食事になり、おれたち自身は光になって、誰かが憶いだしてうっとりする。この犬半期は「何を」よりも「誰と」食べるかが重要だ。「今年食べた美味いものランキングと、その時そこにいた誰か」を表にして、犬半期を通じて空いている枠を埋めていくのも、いいだろう。後で憶い出すのは、何万回のうちの1つか2つだが、どれを憶いだすかは、その時までわからない。そして、味覚は触覚だ。触れるように食べ、食べるように触れ、目を閉じて「ご馳走様」と言え。それは、いつかこの瞬間を憶いだせますように、という祈りだ。
7月はレシピを集めろ。集めるだけでいい。どうせ全部はつくれない。
8月はおまえのオリジナルレシピを書き出せ。嬉しかったこととか、好きなこととかだ。
9月は代々伝わるレシピを試せ。味に古いとか新しいとかはない。
10月は奢ったり奢られたり、作ったり作られたりしろ。味の交換だ。
11月は美味しかったものを憶いだせ。もう一回食べるとわかることがある。
12月は誰かに食事をふるまえ。皆で食べると美味しいってことがわかる。
ハードコアおまじない:外国の調味料

おとめ座
世の中のことはだいたい、波打っている。固くて四角くてドシっとしてるなぁ、てのも、時間が経つとぐんにゃりしてくるし、超凄い顕微鏡とかで見ると、光だか情報だかみたいなものがプルプル震えてて、あるんだかないんだか、みたいな感じだということがわかる。海の波はゆっくりと、ザァ…つって行ったり来たりしてるが、量子くらい小さいところも、シパシパと素早く点滅してて、行ったり来たりしてる。この宇宙はゆっくり大きな波と、はやくて小さい波の合成波だ。固くて四角くてドシっとしているものはだいたい幻覚だが、それでも羊羹なんかは、黒くて四角くてドシっと甘くて、確実に美味しい。羊羹が幻覚ではないのは、ぐんにゃりプルプルしたりしてるからだ。専門的には、空間自体がぐんにゃり曲がっているからだが、あまり考えすぎるな。ぐんにゃり憶えておけ。
波はゆっくり、はやく、大きく、小さく、行ったり来たりする。向こうのほうに去っていって、またやってくる。手紙がそうだし、記憶もそうだ。突然何かを憶いだすのは、宇宙が繰り返しのパターンだからだ。出来事も、未来も、繰り返している。マッサージみたいだな。どっしり重たいやつでグリグリ、とされると、どこからどこまで「わたし」なのか、わからなくなる。土星と海王星でグリグリやった後、天王星でシャキっとなる。それを繰り返せ。どこにも行かず、何も起きず、それで不安になるとしたら、おまえは忙しすぎる。おれたちとこの宇宙は、要するに点滅のパターンだ。慣れろ。そして日記を書け。全てのページが光っている。
7月はぼうっとしろ。しかし、痒いところをちゃんと伝えるんだ。
8月はシャキっとしろ。数を数えたりするといい。8/23新月はギンギンで迎えろ。
9月は出かける時に服を着て、家に帰ったら脱げ。波だ。
10月は体が温まってくる。ジムとかいってもいいし、予言とかしてもいい。
11月は意外とみんな着たり脱いだりしてることがわかる。スンとすましたパジャマパーティみたいなものだ。
12月はわかったことをスライドにまとめて、お洒落して発表しろ。何度繰り返してもいい。
ハードコアおまじない:裸族

てんびん座
古着というのは、でっかいコンテナでガーと運んできて、なんかもうホゲェ!みたいに選り分けて、綺麗に並べて吊るしておくと、誰かが買っていく。いろんな形、いろんなサイズの服を並べると、こういう体型でこういうセンスの犬たちが、昔どこかに居たんだな、てことがわかる。その中から選んだやつがしっくりくると「自分らしさ」になる。なるほど。つまりおれたちはおばけで、おばけが被ってるシーツが古着だ。おれたちが全員いなくなった後の地球で、古着屋めぐりをしようぜ。何かしらお気に入りが見つかって、UFOに乗ってスイーと家に帰り、鏡の前でポーズをとる。何処かの誰かから、今ここの自分に、「自分らしさ」或いは「おばけらしさ」が受け継がれ、しっくりくる。さらに何か、付け加えようぜ。缶バッジとかスカーフとか、アイテムを組み合わせて、組み合わせて、組み合わせて… 10億年が経った。
おまえが「自分らしさってなんだ!?」と大きな声で叫ぶなら、おれはもっと大きな声で「何言ってやがる、最高にグラマラスなおばけ野郎!」と言い返す。そもそも全て、映像だ。恐竜の骨格標本は、エアコンの効いた博物館でスンと黙っていて、 たっぷり染み込んだ月光が表面に浮いて、白く光る。おまえは考古学者兼映画監督で、いずれにせよ映像の専門家だ。光をあてて、影を創れ。おれたちは全員おばけだから、満月と新月の夜には古着を着て踊ろうぜ。
7月はおばけの季節だ。ご先祖様と自分を含めた、すべてのおばけに敬意を示せ。
8月は火星がおまえに入ってきて、最高にホットでグラマラスなおばけになる。悪くない。
9月は一回、ファッションチェックだ。まだ暑いかもだが、秋のコーデを考え始めろ。
10月は遊びだな。おばけランドで遊び倒す、くらいでちょうどいい。
11月はレビューだ。なるべく人に褒めさせろ。
12月は仲のいいおばけとしっぽりいけ。服は古着屋に売ってこい。
ハードコアおまじない:古着屋めぐり

さそり座
犬は歩き、鳥は飛び、クジラは泳ぐ。そんな風に思ってるかも知れないが、実際にはそんなに、違いはない。おれたちは空気の底をかきわけて歩くのは、ヤドカリに似ている。ミミズなんかも同じだ。空気であれ水であれ土であれ、ぎゅっとしたなにかの中を、それぞれのやり方で、かきわけて進んでいる。土の中をズムズム進むのは大変そうだ!とか、空を自由に飛び回って羨ましいワン…とかもは、視点の違いに過ぎない。ミミズも風を感じているし、鳥も波に乗って、クジラも音を聴く。なおかつ、おれたちは汗をかく。熱を発散させるためだ。石から海が溢れ出して、風に吹かれて雲になるみたいなことが、おれたちの表面で常に起きている。移動しているのは熱で、熱だけが石と海と風を貫いている。夏はアイスがチベたく、冬は鍋がアツアツだ。熱は常に「反対側」へと移動する。
どこにいても同じだが、それはどこでも「反対側の反対側」で、そこが「今ここ」だ。おまえはアイスや鍋を準備して、ここで誰かを待っている。何かをかきわけて、おまえのところまでやって来る誰もが、それぞれ放物線の軌跡を描いている。その軌跡をたどれば、宇宙はぐるっと回転して、おまえを全ての場所に連れていき、白亜紀になってジュラ紀になって、恐竜の白い骨の夢が映画館でかかる。暗い中、スクリーンが点滅し、皆が眠っているが、隣の席にはあいつがいる。お互いに「反対側の反対側」だ。生命進化の歴史を、最初からやり直してみろ。
7月はウォーキングだ。原核生物からロボまで、全ての歩き方をやってみろ。
8月は恐竜の白い骨の夢が始まる。あいつを誘って映画でも観にいけ。
9月はだいぶ締まってきた体で、ちょっと遠くに行ってみろ。何処ってことはない。何処でも同じだ。
10月は家の中が片付き始める。ぎゅっとしたものが、ふんわりしてくるだろう。
11月は眠りだ。進化なんか絶対しないぜ、という心構えで深く眠り、夢をみろ。
12月は全てが揃ってくるだろう。皆で集まってみろ。一周回って、家がいい。
ハードコアおまじない:熱移動

いて座
気象台にはカフェもプラネタリウムも短波放送局もあって、若い気象予報士が毎日掃除しながら、観測と放送を続けている。時々ロボがやってきて、古いアンテナの角度を調整したり電球を取り替えたりするが、最近は数年に一度くらいの頻度になった。気圧前線や雨雲の様子を毎日放送し、行ったり来たりする数隻の船がそれを受信する。彼女は毎日、コーヒーを入れたり、プラネタリウムを決まった時間に上映したりして、その他の時間はAIとお喋りをしている。子供の頃からここのプラネタリウムを見て育ち、AIに教わって気象予報士の資格をとった。彼女はシーズンごとに新しいプラネタリウムのプログラムをつくり、自分でナレーションを吹き込む。夜の短波放送では、お気に入りのレコードをかける。やりがいのある仕事だ。近隣住民は気象情報を頼りに、漁に出たり、野菜を収穫する計画を立てる。
気象予報士は、いつまでもこの仕事を続けていたいと願っている。お盆と年末は高高度軌道にいる親戚に会いにいくか、彼らが訪ねてくる。いつか結婚するなら、夫もここで働ければいいな、とぼんやり考えている。裏のガレージにはサイドカー付きの古いドゥカティが1台あって、休みの日にはそれに乗って浜辺にいき、シーグラスを拾う。気象台が観測しているのは、つまり回転する惑星と、流れ続ける時間だ。誰が観測しているのか、と言えば、誰ってことも、もうない。誰がどうってこともなく、観測が続き、短波放送が続き、レコードは回り続け、プラネタリウムが星空を映し出す。平和だが、回転しているのは確かだ。それでいい。
7月は仕事ていうより遊びだ。どっちがどっちだっけ、てなるくらいがいい。
8月も引き続き、遊びだ。ドゥカティに乗って海に行け。お盆を過ぎるとクラゲがでる。
9月は家でゆっくり過ごせ。ポッドキャストを録音したり、やることは沢山ある。
10月はお喋りメインだ。AIでもいいが、せっかくだからあいつを誘え。
11月は仕事だ。新鮮な気分でガンガンやれ。
12月はいろいろ新しくなっているが、いつも通りでもある。年末ってのはそんなもんだ。
ハードコアおまじない:繰り返して上手くなる

やぎ座
なにかしら大切なことはだいたい、それを刻んだ石碑が既に存在する。不思議だが、本当だ。大切なことは、何度も繰り返されるからな。そしたらまぁ誰ともなく、これちょっと彫っとこうぜ、てなる。おれたちは今、ネットにいろんなことを書いてるが、数千年後にそれを読む誰かが、これは大切っぽいとか、これはそうでもなさそうだとか選り分けて、博物館に展示するだろう。その中から特に良かったやつを改めて石碑にして、噴水広場に置いとくと、それをAIが学習する。それが繰り返されて、たいていの大切なことが石碑になる。
今は石に彫って、噴水広場に置いたりしてるが、そういうのもだんだん、夢の中に置いとこうぜ、みたいになる。夢のほうが広いからな。そして、たぶん夢の中でも、やっぱり石碑というかたちは変わらないだろう。これは固くて長持ちして、ずっとここにありますよと、わかるようにだ。石も夢を見るし、石が見る夢が、夢のなかで石になる。いつの間にか無くしたお気に入りの石を、夢のなかで見つけることも、よくあることだ。夢と石は、お互いがお互いに降り積もっているからな。おまえが彫ったたくさんの石碑も、夢の中のいろんな場所に立っている。子犬や占星術師が、夢でそれらと出会い、感銘を受け、起きるとすぐ忘れる。大切なことは、読まれる度に新しく、憶いだせない。とにかくなんでも書いておいて、夢の中で石碑を探せ。ラピスラズリのキレイなやつに、なんか良いことが彫られているだろう。
7月はいちばん固くてひんやりした石を探して、その上に腰掛けてみろ。温めるんだ。
8月は石に彫っておきたいことを、2つか3つくらい選べ。しかし、まだ彫るな。
9月は一回全部忘れて、どこか遠出しろ。博物館と噴水広場がおすすめだ。
10月は昔の犬が彫った石碑をよく見てみろ。触ってみて、夢か石か両方か、確認しろ。
11月は職人気質で過ごせ。おまえはいなくなり、占星術師が瞑想している。
12月はいつのまにか設置されている石碑のお披露目パーティだ。皆がほう、という。
ハードコアおまじない:石碑めぐり

みずがめ座
ひんやり冷たい畳にほっぺたをくっつけてひやーとしてたら、うっかり寝て起きて、薄暗い。家の人は買い物に出かけたようだ。鍋に張った水に昆布が浸してあり、時計がカチ、カチ、と鳴っている。外でキジバトが鳴いていて、その背景をカエルの声が埋めていて、昼から夜へと変わる境目みたいな時間が、のっぺり平らに続いている。くるくる巻いた蚊取り線香は、よく見るとラピスラズリとガーネットで出来ていて、そこで夢だと気づき、本当は詩だと気づく。まぁ、なんでもいいだろう。古い家のひんやり冷たい畳の上で眠ると、こういう夢をよく見るし、どちらかというとなるべく長く、ここに居たいと思う。家の人って?お父さんとかお母さんとか、ざっくり全てのご先祖様とご近所さんが、昔住んでいた家の記憶が全部混じっていて、懐かしいけど知らない家だ。この家はたぶん体の中にあって、どこか遠くの恒星系にもあって、ざっくりお盆あたりの空気感だ。そういうのは、どこでも、いつでも、あまり変わらない。
時間というのは、本当はお盆前とお盆とお盆明けの、3種類しかない。お盆明けにはクラゲがでるから、海には入らず、浜辺を歩く。砂の中から蚊取り線香を掘り出して、ガーネットでできた火の部分の匂いを嗅ぐ。裏返すと星座盤になってて、クルクル回してバネを巻き、そっと離すとオルゴールになって、ピロン、ポロンと10億年くらい回り続ける。一周回るごとに、空は昼から夜になってまた昼になる。結構凄い眺めだが、夢だったり詩だったりするので、これくらいはまぁ普通だ。誰かがオルゴールに合わせて、ピアノを弾いている。学校で一番涼しいのが音楽室で、それは楽器を保管するからだ。ひんやり冷たい板間にほっぺたをくっつけて、目を閉じる。夏が過ぎ、やがて秋が来て、冬になる。星座盤が速度を上げて回転し、沢山の夢をザッピングするみたいに切り替える。次の瞬間、薄暗くてエアコンが効いたプラネタリウムのリクライニングシートで、くらげ座の神話を聴いている。ほとんど皆が眠っていて、たぶん、おれもおまえも、眠っている。
7月は体の中の誰もいない家で、ひんやりした夢に入っていけ。熱中症予防だ。
8月はお盆を過ぎて8/23の新月に、強い眠気と鮮やかな夢が訪れる。誰かを誘って昼寝しろ。
9月は部屋を片付けろ。夢で過ごすあの家の雰囲気に、なるべく近づけるんだ。
10月はいよいよ鮮やかだ。秋の星座を憶えて、人に教えてみろ。
11月は体が明るく、広くなる。全ての星座が体の中に輝くだろう。
12月はそろそろ起きる頃だ。年末の用事をリストにして、必要な相手に連絡をとれ。
ハードコアおまじない:夢っぽさ

うお座
おれたちは壁画になりつつある。もともと洞窟壁画の中から飛び出してきたから、どうってことはない。おれたちは互いに眼差し、へぇ、て顔で眺めて、それを壁画を描いた。松明の炎で眺めると、ゆらゆら揺れて面白いから、ずぅっと見てしまう。おれたちの壁画はどんどん上手くなり、最終的にスマホの中のアイコンになる。繰り返すが、もともとそこから飛び出してきたんだ。スマホの中も、頭の中も洞窟だ、てことだな。せっかくだから、ヒラヒラ、クネクネしてようぜ。影絵もAIも同じだ、てことがわかる。頭蓋骨のプラネタリウムもいいが、夜になって涼しくなったら、星空の下に飛び出してみろ。おれたちが体験できる最もでっかいプラネタリウムがそれだ。おれたちはキラキラていうかギランギランの星を線で繋げて、一番面白い物語を思いついた犬が勝ち、ていうゲームをやった。これが元祖ソシャゲで、そのガチャ要素を色々研究したのが、星占いだ。
洞窟もスマホも頭蓋骨も星空も、ひと繋がりの時空間で、もうすぐUFOが発明されたら、おれたちはその全部を行ったり来たりして、通勤したり遠距離恋愛したりするだろう。今までもそうだったからな。星は点滅するし、おれもおまえも点滅している。特にこの犬半期は、土星と海王星がうお座とおひつじ座を行って来いするから、点滅具合もビカビカって感じだ。ついでにおまえの星・木星も、秋も深まった頃に点滅を始める。それはおまえにとって、11月の花火大会みたいに、くっきりと美しい。壁画は絵の具で描くが、その本質は、瞳に入ってくる光だ。全てが光って揺れ動き、頭蓋骨の中で夢になる。仕組みがわかれば、遠くの星の夢も見れる。もうすぐ発明されるUFOは、壁画の中から飛び出してきて、頭蓋骨のプラネタリウムを飛び回り、眠たいロボ声で語りかける。アテンションプリーズ。占い的にはいろいろありますが、概ねキラキラのスヤスヤです。よしわかったぜ!フィルター盛って瞳キラリとしっぽクルンにして、お互いの似顔絵を描きまくれ。だいたいどれも似てくるが、それで特に困ることもない。まぁそんなもんで、それがつまり最高だ。
7月はスマホとか絵の具とかを揃えとけ。何を描きたいか、イメージしろ。
8月はいろいろ準備が忙しいだろう。面倒くさがらず、前のめりでいけ。
9月は新しい自分の自画像を描き始める。誰かに似ているかも知れないが、それでいい。
10月は透明になる。なんでも、本当に描くと透明になるんだ。半ばを過ぎるとまた顔が見えてくる。その頃はかなり盛れているはずだ。
11月は誰かと似顔絵を描きあえ。誰なんだ、ていうおまえとあいつが笑っている。
12月はお互いの似顔絵が仕上がる。しっかり眺めて、あとはしまっておいて構わない。それは結局、絵だからな。
ハードコアおまじない:光
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次回は7月16日に更新予定!
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