『ほがらかSNSライフ』カレー沢薫 最近、SNSが殺伐としていないか?
#40 あなたのつぶやきの影響力
今日から真面目に投稿します。
担当から「souffleインスタの薬膳の写真を見て、薬膳漫画の持ち込みがあった」との連絡があった。
souffleのインスタはすでに「インフルエンサー」ということである。
女性誌界をけん引する者としての自覚を持ち、もっと真摯に投稿をしていくべきなのだ。
SNSをする人は自分の影響力について考えたことがあるだろうか。
たまに「フォロワーが多い人は影響力があるのだから、発言に気をつけるべき」という意見を聞く。
何故フォロワー数の大小で発言を制限されなければならないのか、とも思うが、ナイキの社長が「デザインに一目ぼれしました」とアディダスのTシャツでカメラの前に出ていいかというと、やはりもうちょっと「気をつけるべき」でだろう。
立場にふさわしい振る舞いを求められるのは、ある程度仕方ないことなのだ。
しかし「フォロワーが多い人は影響力があるから気をつけろ」と言うのは間違いである。
全員影響力があるし、みんな気をつけるべきなのだ。
例えば、赤信号を無視して渡る大人を見て子供が「こいつはツイッターのフォロワー3人しかいないし全部スパム、ついでにニート」という理由で真似しないかというと、そんなことはない。
現にsouffleのインスタアカもフォロワー「117人」という公式アカとしてはなかなかの数字だが、そこからインスピレーションを得た人間がいて、作品が一つ生まれたとしたら、すごい影響力だ。
つまり影響力自体は全員が持っており、フォロワー数の大小、というのは影響を与える可能性と影響を与える範囲が広いか狭いかの違いでしかない。
見ている人間が1人でも、その1人に影響を与える可能性はあるし、またSNSの特性上、その影響が「広がる」こともある。
「眠い」など、自分的には全く深い意味がない投稿でも、それをSNSという衆目に晒した以上、それを見た他人は「寝れば」「地獄の業火に焼かれて永久(とこしえ)の眠りにつけば良いのに」など、そのつぶやきに対し、何かしら「思う」ものなのだ。
それがすでに「影響」なのである。
自分はフォロワー数が少ないから、何を言っても良いと思うのは「この村は人口が少ないから川に毒を流しても大丈夫」と思うのと同じである。
だから、SNSでは無難で日和った発言をしましょう、というわけではない。
むしろ「自分のつぶやきに影響力がある」というのをポジティブに捉えて発言をすべきだろう。
例えばぜひ人気が出て欲しいジャンルや推しがいるなら、それが如何に素晴らしいかつぶやき続ける。
コンビニのパンでも写真付きで「美味かった」と一言言われたら、意外と買う気になってしまうのだ、自分はフォロワーが少ないから宣伝しても意味がない、と思うのは損である。
また自分が何が好きかをつぶやき続ける。
例えば「少年キャラが好き」とつぶやき続けると、それを見た人の脳にそれが刷り込まれ、少年を見ると「あの人が好きかもしれない」と思い出し「こんな少年がいたんだけど?」と見せに来てくれたりするのだ。
現に私は「猫が好き」と言い続けることにより、猫写真を送ってくれる人が増えた。
この調子で「二兆円が好き」ということも言い続けて行きたい。
逆に、嫌いなものの話ばかりしていると「この人地雷が多いな」と思われ、人が寄り付かなくなる。
ツイッターは「独り言ツール」とも言われるが、その独り言は誰かに聞かれている。
面と向かって、推しを布教することは出来なくても「あー!俺の推しは尊いなー!」と言う独り言を誰か聞いていて「尊いのか!」と思ってくれるならラッキーである。
SNSでは「他人に聞かれても良い、さらに自分に得がありそうな独り言」を意識してブツブツ言って行こう。
次回は8月6日更新です。

『ほがらかSNSライフ』カレー沢薫
OL兼マンガ家から専業作家になったカレー沢薫さんが気づいたのは、「SNSにしか居場所がない」という事実。インターネットという大事な居場所を地獄にしないために、カレー沢薫さんが提案する、SNSとのほがらかな付き合い方とは?
人気記事




