『「もえこと畑とお寺ごはん」がもっと楽しく! 萌飯コラム』青江覚峰 料理僧として活躍する緑泉寺住職の美味しいコラム!
2話 「トウモロコシごはん」が教えてくれること

シンプルな味付けだからこそ、素材のおいしさが楽しめる。そんな「トウモロコシごはん」を味わいながら、持ち味を生かす大切さをふと考えてみたり。
『もえこと畑とお寺ごはん』第2話では、シンプルな「トウモロコシごはん」が登場しました。
夏の定番とも言えるこのお料理、うちのお寺では作り方が非常にシンプルで、米とトウモロコシ、後は少しの調味料だけ。その分、トウモロコシの味と香りがたっぷりと口の中に広がります。そりゃあそうです。材料はトウモロコシとごはんだけですから。シンプルがゆえに、足し算も引き算もない、トウモロコシ本来の味わいが感じられます。

さて、改めて申し上げますと、私はお坊さんです。料理の話ばかりしていますが、お経もちゃんとあげています。
私たちが普段お勤めするお経のひとつに『阿弥陀経』があります。このお経には、極楽浄土というのがどんなところなのかという有り様と、その極楽浄土へ往く方法が書かれています。ちなみに、今年劇場版が大ヒットした『鬼滅の刃』の中で、岩柱の悲鳴嶼行冥(ひめじまぎょうめい)さんが読んでいるものもこのお経です。
さて、その『阿弥陀経』の中に極楽の情景が描かれた部分があります。
「青色青光 黄色黄光 赤色赤光 白色白光」
極楽の中には大きな池があって、大輪の蓮の花が咲いています。そこでは青い花は青く輝き、黄色い花は黄色く輝き、赤い花は赤く、白い花は白く輝く。
花は赤く生まれれば赤く咲き、青く生まれれば青く咲く。当たり前のことです。青い花が赤く輝いたら、それは紫色になってしまいます。
淡いものは淡く、鮮やかなものは鮮やかに。小さいものは小さく、大きなものは大きく。
自分自身の色を素直に咲かせた花々が集うさまは、まさに十人十色。あたかも社会そのもののように思われます。
翻って、私たち人間はどうでしょうか。むやみに自分と周りを比べ、ときには他人を羨んで嘆いたり、人を見下して奢ったりして心を乱してはいないでしょうか。
本来の自分とはどんな色だったのか。
まずはそれをしっかりと受け止めたいものです。そうした上でこそ、足りないものや目指したいところを自らに問うのもよいでしょう。
余計な手を加えないトウモロコシ本来の素朴な風味に、そんなことを思うのです。

次回は12月26日公開です。
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