『ムーちゃん通信』赤沼美里 発達障害と自閉症がもっと身近になるコラム!
#3 「感覚過敏・鈍麻(どんま)」ってなあに?
ウインナーと卵焼きとカボチャしか食べられない自閉症のムーちゃん。母親が食べさせようとしないせい!? いいえ、本当は「感覚過敏」のせいなんです。今回は発達障害を持つ子に特徴的な「感覚過敏・鈍麻」のお話。
感覚過敏・鈍麻とは
感覚過敏とは、特定の音や光などの刺激に反応しすぎてしまうことをいいます。逆に反応が低すぎるために刺激をほとんど認識できないことを感覚鈍麻(どんま)※とよび、どちらも自閉症スペクトラムを含む発達障害のある人に多くみられる特性です。
※鈍麻:にぶいこと
【例えばこんなふうに感じています】
・雨やシャワーが肌にあたると激痛がする
・赤ちゃんの泣き声や金属音など特定の音で耳が痛い
・教科書が白く見えすぎてまぶしいので、文字が読めない
・特定の食材を食べると、口の中で突き刺さるように痛い
・洋服のタグや材質がチクチクする
・骨折などの大きなけがでも痛みを感じない
・真夏にジャンパーを着ても寒いと感じる
※感じ方は一例で個人差があります
感覚刺激の脳内処理が生まれつき他の人とは異なる
視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚・温痛覚などの感覚刺激は、脳が処理することで「触れている」「痛い」「冷たい」などと認識しています。感覚過敏・鈍麻のある人は、受け取った刺激を脳内でうまく処理できないため、同じ刺激(例:同じ音)を受けていても他の人と異なった感じ方になるのです。しかしどの人にとっても自分の感じ方が標準となるので、本人もまわりも感覚過敏・鈍麻に気づきにくく、我慢が足りないと自分を責めてしまうことさえあります。
環境を整えよう!
感覚過敏・鈍麻は、本人がつらくない環境に整えることが大原則です。
【感覚過敏】
・苦手なことを突き止めよう!
(例)シャワーと桶からの水で違いはある? チクチクする洋服はどんな素材? 苦手な臭いは何? どんな食べ物が苦手? 調理法で違いはある? どんな音が苦手? など
・苦手なことを遠ざけよう!
(例)洋服のタグを切り取る・音から離れる・給食からお弁当に変更する・シャワーを使わないなど
・アイテムを使おう!
(例)マスクをする・サングラスをする・イヤーマフや耳栓をする・大きな音(ホイッスルなど)以外の合図を使うなど
・予告してもらおう!
(例)大きな音を出すよと教えてもらう・注射などは手順を事前に教えてもらうなど
【感覚鈍麻】
感覚鈍麻のある人は感覚を求めて、自傷行為や高いところにのぼってしまうなど危険な行動につながる場合があります。別の刺激で満足できるように、かむオモチャや握りしめるボールなど本人が好む刺激グッズを見つけましょう。また、転んでけがをしても痛みを感じにくい人がいるので、毎日体を観察してけががないかチェックしてくださいね。
ムーちゃんからひとこと |
【参考文献】
・内山登紀夫/監修、伊藤久美/編『新しい発達と障害を考える本(5)なにがちがうの?自閉症の子の見え方・感じ方』(2014年、ミネルヴァ書房)
・鴨下賢一/編著、池田千紗、小玉武志、高橋知義/著『発達が気になる子の脳と体をそだてる感覚あそび』(2017年、合同出版)
・榊原洋一/著『図解よくわかる発達障害の子どもたち』(2011年、ナツメ社)
・プルスアルハ/著(細尾ちあき/お話と絵、北野陽子/解説)『子どもの気持ちを知る絵本(3)発達凸凹なボクの世界 ―感覚過敏を探検する―』(2015年、ゆまに書房)
・本田秀夫/監修『健康ライブラリーイラスト版 自閉症スペクトラムがよくわかる本』(2015年、講談社)
次回は12月25日更新です。
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