『天幕のジャードゥーガル』トマトスープ×相沢梨紗(でんぱ組.inc)特別対談【後編】 | Souffle(スーフル)
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トピックス 2024.08.30

【特集】

『天幕のジャードゥーガル』トマトスープ×相沢梨紗(でんぱ組.inc)特別対談【後編】

徹底した取材と史料研究・時代考証によって実在の人物を物語作品で甦らせ、歴史研究家からも高い評価を得ている話題作の最新第4巻発売を記念して、トマトスープさんとアイドルグループ「でんぱ組.inc」のリーダー相沢梨紗、モンゴル渡航歴のある二人が、作品の舞台裏、モンゴルの文化、魅力などをたっぷり語り合った。

(前編はこちら)

日本や中国の歴史や文化が、いかに文字を基本に築かれてきたか(トマトスープ)

『天幕のジャードゥーガル』トマトスープ×相沢梨紗(でんぱ組.inc)特別対談【後編】

相沢 13世紀といえば、日本は鎌倉時代ですよね。広大な領土を治めて発展していたモンゴルに文字を記録した史料があまりないって、不思議ですね。

トマトスープ その点についても、やっぱり価値観や文化の違いと言えるかもしれません。モンゴルのことを知ろうとすると逆に、日本や中国の歴史や文化というものが、いかに文字を基本に築かれてきたかということをあらためて感じます。チンギス・ハンの一生をまとめたモンゴル秘史といわれている物語がありますが、最も古いものは、モンゴルの言葉を中国語に翻訳したものではなく、言葉に漢字を当てて残したものだといわれています。もともとはおそらく、語り部のような人たちによって口頭で残されたようです。同じように、モンゴルで伝わってきた英雄譚とか、さまざまなお話や歌などは、基本的に文字ではなく言葉で伝えていく文化だったんだと思います。

相沢 モンゴルを訪れたときに、伝統的な「ホーミー」という独特の歌唱法で歌われる方にお会いする機会がありました。歌唱というより、むしろ人間が楽器のように声を発する歌い方で、口や喉からビームが出てるんじゃないか⁉︎って思うくらい、声とはまた違う音のような、耳がビリビリするような倍音を体から発するんです。いま先生のお話を聞いて思ったのは、声の発し方や歌い方、楽器の奏で方というものにもいろんな意味が込められているんだろうなって。「きっとできるはずだからやってみろ」って言われてトライしたんですけど、これがまったくできなくて。

トマトスープ やはり、振動を感じるんですね。特殊な方法で倍音が発生して、声が二重にウェーって聴こえるらしいですけれど、私は生で聴いたことがないので、すごく貴重なお話だなと思いました。どうやったら習得できるんでしょうね。

相沢 喉も特殊な開け方があるみたいで。滞在中に習得できなくて残念でした。

トマトスープ 言葉や伝承の話で言うならば、モンゴルでは子どもが生まれると、そのときに親が目にしたものやその日あった出来事などを子の名前にすることがあるそうです。チンギス・ハンの幼少のころの名前は「テムジン」だったのですが、その由来は、彼が生まれた日に倒した敵のテムジン・ウゲだといわれています。どうやら、戦勝記念として名付けられたようです。そういう名前の由来などを調べてみると同じようなケースが多いらしくて、ひょっとするとモンゴル特有の記憶法なのかもしれないなって想像しています。

相沢 なるほど。目に留まったものや出来事を忘れないように、人に名付けて記録する。なんだか賢いやり方だなって思えてきました。顔を見たら思い出すし、ずっと覚えていられるってことですもんね。ところで、先生はどうして「トマトスープ」というペンネームにされたんですか?

「トマトスープ」の由来は・・・・・。モンゴル的?

『天幕のジャードゥーガル』トマトスープ×相沢梨紗(でんぱ組.inc)特別対談【後編】

トマトスープ アカウントを作らなければいけない時にペン立てに使っていたのがたまたまトマトスープの空き缶だったからです。これでいいかみたいな感じで(笑)。最初はアルファベットだったんですけど、編集者さんから「アルファベットだと縦組みしにくいから、こだわりがなかったらカタカナか日本語にしてほしい」って言われて、じゃあっていう感じでカタカナにしました。食べ物系のペンネームって、あまりメリットがないような気がするんですけれども(笑)。

相沢 てっきりトマトが大好きなのかと(笑)。それこそモンゴルでの名付け方みたいですね。

トマトスープ 考えてみれば、文字で記録を残さないモンゴルが特別なのではなく、日本や中国のように文字先行型の文化の方が特徴的でめずらしいのかもしれません。イスラム教の聖典「コーラン」は文字で書かれていますけれど、当初はアラビア語が成立していなかったので文字で正確に内容を表現できず、言葉先行で記録されたそうなんです。文字はあくまで補助的なものであって、基本は口で一言一句間違えずに伝えていく。神様の言葉と捉えられているものなので、アクセントや息継ぎのポイントなども全部決まっているんです。そのほかにも、ペルシャ語には基本的に母音がなく、長母音といわれるアーという文字などがありますが、基本的に子音しか記されていないんです。こういう言葉や声音で伝え、つなげていくという発想は、アイヌの文化もそれに近いように思いますし、世界的に見ても多いのでないかと思います。

相沢 確かに、言葉はみんな知っているわけだから伝えやすいし、限られた文字だけでも読めますものね。それでも、トルイの正妃ソルコクタニ・ベキは、戦利品として宝石よりもエウクレイデスの「原論」という数学書を欲しがりました。勉強したいから遠征先から持って帰ってきてほしい、と。異国で生まれたものや文化も受け入れて学ぼうとする姿勢を持ち合わせていて驚きました。知的好奇心みたいなものを制御しないって、とても素敵なことだなと思って。

トマトスープ エウクレイデスの原論は古代エジプトで編纂された数学書といわれていますが、中世のキリスト教では異教徒の書物ということで宗教的に“NG扱い”されたんです。ただ、異端とされたキリスト教徒たちによって東方のイスラム圏にも伝えられ、ヨーロッパやアラビア語の翻訳家たちが必死に細々とつなぎ、やがて近代科学にも影響をもたらしたといわれています。

相沢 近代にまでつながる書物だなんて、宝石よりも手に入れたかったはずですよね。目の付け所というか、視点がほかの人と違いますよね。

トマトスープ ソルコクタニ・ベキは史実でも有名な人物で、かなり賢い人だったと評価されています。彼女の息子で後に皇帝になった人物もエウクレイデスの「原論」を実際に読んでいた、という話が残っています。

私はモンゴル的なリーダーなのかも。この範囲の中であれば好きしていいよって(梨紗)

『天幕のジャードゥーガル』トマトスープ×相沢梨紗(でんぱ組.inc)特別対談【後編】

相沢 モンゴル帝国にはいろんな地域の人や産物が出入りしていて、宗教も割と自由に信仰していますよね。捕虜になって連れてこられた人も普通に生活できたみたいですし。

トマトスープ 遠征に赴く部隊には必ず、「技術者や知識人は殺さずに連れて帰れ」という命令が出ていたようです。役に立つ人材として重宝され、ソルコクタニ・ベキはそういう人たちのための慈善事業も行っています。モンゴル帝国はなぜか宗教に関してもすごく寛大で、「自分たちは天の神を最上だと思っているけれど、イスラム教の人たちはアッラーに祈りを捧げてくれれば我々もうれしいし、尊重するよ」というスタンスだったようです。常にダブルスタンダードというか、誰かがいいというものは全部いいだろう、みたいな発想らしくて。おそらくそういう考え方は、さまざまな交流の中で育まれて、生きていくために必要なものだったのだと思います。史料を紐解くと、イスラム教徒の生活様式で宗教的に決められていることがモンゴルの法律では認められておらず、そのことが原因で衝突も起きたようです。皇帝オゴタイは、モンゴル人がイスラム教徒の習慣に目くじらたてないように配慮したというエピソードも残っていて、文化的な衝突をかなり気にしていたみたいですね。当時、他国の統治者が無理やり民衆を改宗させようとしてしっぺ返しを食らい、最後は殺されてしまった事例もあったので、宗教を縛るという不寛容さに良いことなし、というのが分かっていたのかもしれませんね。

相沢 私、もしかしたら、でんぱ組ではモンゴル的なリーダーのかも。「いいよ、みんな。お好きにおし」っていう感じですから(笑)。なんでもオッケーというわけではないけれど、その子のそれいいね、それを全部まとめるとでんぱ組が良くなるね、じゃあそれにしようみたいな。この範囲の中であれば好きにしていいよっていうのは、もしかしたら、モンゴル帝国が大きくなるにつれて人も増えていったときの感覚と近いことをやっていたのかもしれないですね。もともと自分の意見をぶつけることができないタイプなので、リーダーとしてグループをまとめるためには、なるべくみんなの意見を聞いて、いいところを話し合って活動したいと思っています。その方が私も息をしやすいというか、グループの一員として一番居心地が良いやり方なんだと思います。

トマトスープ 相沢さんには天性の寛容さみたいなのがある、ということなのかもしれませんね。ちなみに、モンゴル帝国の歴代皇帝ではオゴタイが最も寛容だったといわれています。

いい映画をみて、その話をするためにまたみんなが集まって。でんぱ組がそんな存在になれるよう(梨紗)

『天幕のジャードゥーガル』トマトスープ×相沢梨紗(でんぱ組.inc)特別対談【後編】

相沢 すごく褒められちゃった(笑)。戦うのが苦手なだけで、みんなを野放し状態にしているだけかもしれませんけれど。でも、来年の2025年にグループ活動のエンディングを迎えると決めたのも、正直なところ、すべての流れみたいなところがあって。メンバーみんなのいろんな意見を合わせていったら、「私たちはエンディングに向かおう」という1つの目標というか、道筋が立ったんです。いい映画を観て泣いて笑って、何度も見返して、その映画の話をするためにまたみんなが集まって。そんな映画のような存在になれるように、みんなが必要だと思うことを全部、取り入れていきたいですね。でんぱ組.incがエンディングを迎えたときに、みんなで語り継いでいくことが楽しいと思えるようなものを。だから、あらかじめこれを絶対にやらなきゃとか、逆にこれを逃したらもう終わりだ、みたいに決めつけるのではなく、今の流れを大切にしたいと思っています。今日もこうして先生にお話できていることも、きっと、モンゴルでファンになってくださった方とのご縁なのかもしれませんし、でんぱ組のエンディングを知っていただくことで、その先もご一緒していただける機会になるかもしれません。今現在のすべてが運命だと思い、受け入れている感じです。

トマトスープ 必要とされて生まれたグループが、今また“そのときのカタチ”をとる感じですね。

相沢 そうですね。世の中に私たちを必要とする場所があるのならばまた、という感じなので。グループとして意見がまとまることって、なかなかめずらしいことなのですが、みんなの方向性が本当に1つになって今、でんぱ組の歴史の中でも特に、あらためて一致団結している時期なのかもしれません。

トマトスープ 相沢さんって、本当に柔らかい雰囲気の方ですね。これって完全に私の想像ですけれど、もし私が相沢さんと同じグループに所属していたら、ものすごく頼りにします。

相沢 いえいえ、私は本当に一番ぼんやりしていて、周りに助けてもらわないと生きていけないタイプなんです。最初のころは怒ったり泣いたりいろいろあったんですけど、人間って本当にピンチのときじゃないと自分の心をさらけ出せないものなんだなって、いくつになってもすごく思います。でんぱ組でも「実は私、本当はこう思っていたの」「私、全然わかってなかったみたい、ごめんね」という感じで何度も何度も繰り返し話し合っていくうちに、一緒に走っているこの仲間たちを信用しなかったら、私は一生、一緒に戦える人と出会えないなって思うようになりました。お互いにいろんな視点を持ちながら「この子がここまで思っているのなら、私もその子のために命をかけて頑張ろう」と。気持ちを交換し合うこと、しっかりコミュニケーションをとることって、たとえ苦手でも大切にしなきゃいけないんだなってあらためて思います。でんぱ組.incって、最近になってようやく話し合いができるようになったんですよ(笑)。それまではお互いのニュアンスみたいなものでなんとなくやれていたんですね。とくに活動年数が同じくらいのメンバーだと、なんとなく考えていることが一緒だったりすることが多くて、頻繁に打ち合わせとかミーティングをする必要なかっただけで。でも、時代を重ねると、私たちに憧れて入ってきた子、さらにその子たちに憧れて入ってくる子、もっと下の子に憧れて入ってくる子となると、考え方とか感じ方とか、いろんなことがすれ違ってくる。それをすり合わせることで、仲間としての意識がすごく強まって、今はみんな大好き!みたいな感じになっていますね。

トマトスープ エンディングまでの間に、ますます世界観が広がっていきそうですね!

作中では、これから怒涛の時代がやってきます(トマトスープ)

『天幕のジャードゥーガル』トマトスープ×相沢梨紗(でんぱ組.inc)特別対談【後編】

相沢 エンディングに向かうまでの可能性、そしてエンディングを迎えてからもいろんな可能性を感じていて楽しみです。でも、やっぱりまたモンゴルに行きたいなぁ。今はどうなっているんだろうと気になっていて。歴史上、いろんな人の交流が盛んに行われてきたというのは、街を見ても感じましたし、人々はすごく穏やかでにこやかだし、元気いっぱいだし。都会で暮らしている方と接している分には私たちとの違いをあまり感じませんでしたが、自然が深まった場所に行ったときの能力の発揮の仕方というのが、もう段違いで。なんだか人間としてのいろんな能力が私たちよりもはるかに高くて、生命力の強さを感じましたね。

トマトスープ サバイバル能力が高くて、しかもオープンマインドな方が多いですよね。取材でゲルを訪問させていただいたたときも、「どうぞ、好きなだけ写真撮っていいよ」みたいな感じで。見ず知らずのしかも外国人に押しかけられれば嫌な気持ちになるものですが、家の外も中も、普段生活されているところをくまなく撮らせてもらって。この世界に生きている人たちは、本当に一期一会を大切にされているんだなって思いましたね。

相沢 モンゴルではいろんなことを感じられて、おもしろいですよね。そして、歴史も文化も色濃く残されていてとても勉強になりますし、こうしたことを知ったうえで読む、物語の展開が気になります。

トマトスープ モンゴル帝国の歴史年表を書き出してみると、これから怒涛の時代がやってきます。どんどん国が大きくなる中で、王族のポジション争いや官僚たちの思惑なども相まって、さまざまな動きが同時多発的に起こります。その渦中に、ファーティマとドレゲネが巻き込まれていくことになると思います。

相沢 怒涛ですって、怒涛!
確かにもうすでに、いろんな人たちの欲望や、それぞれが思い描くモンゴル帝国像みたいなものが見え隠れしていますから、この先何が起こるのか怖いですね。どうなるんだろう、ドキドキ感でいっぱいです。しかも、この4巻の最後でまったく予想外のところから何かが起きるみたいな描き方をされているじゃないですか。ということは、ここまで登場しているファーティマ&ドレゲネのチームと、オゴタイ&第1皇后ボラクチンのチームと、ソルコクタニ・ベキのチームのほかに、全然別のところから新たな勢力が出てくる⁉️え、そこかい!みたいなことが起こるかもしれないってことですよね。めちゃ気になります!

トマトスープ 歴史をたどれば意外なことが起こるもので、そこは史実に基づきながら、物語としておもしろい部分を取り入れていくことなります。これは歴史物を描く者のサガなんですが、どういう塩梅でフィクションとノンフィクションのバランスを取るのかが悩みどころでして。私の作品はできるだけ歴史に忠実でありたいという気持ちで描いていますが、あまりにも歴史に寄りすぎると無難でつまらないものになりがちですし、とはいえ、その大部分は真実なので踏み外すわけにもいかない。葛藤はありますが、やはり、「忠誠を誓うべきはおもしろさであるべき」、と割り切って見極めることにしています。描くべき史実に物語としてのおもしろさがあるのか、おもしろいけれど突飛な伝説なので触れずにおくのか、もうひとりの自分がいて、指摘してくれています。

相沢 なるほど、自分自身にツッコミを入れながら、誰よりも厳しい目を持つわけですね。だからこそ、読み手も信頼できる作品になっているというか。読んでいて「あ、先生はこの場面をモンゴルの地図を見ながら描いているんだろうな」って想像したり、まるで自分が今、モンゴルを旅してるみたいな気分になったりしますもの。作品に触れることでひと通りの正しい知識を身につけられて、さらにプラスαで、もっと知りたくなったら別の説を調べるきっかけも与えてくれます。しっかり注釈を書いてくださっているので、私にとって教科書みたいな作品です。でも、先ほどの話だとこれから先はちょっと怖くて読めないかも(笑)。これまでの女性たちの戦いぶりがさらにエスカレートして、「大奥」みたいな展開になっちゃうかもですよね⁉︎メラメラメラ〜みたいな。

モンゴルにはこれから何度でも行きたい(トマトスープ)

『天幕のジャードゥーガル』トマトスープ×相沢梨紗(でんぱ組.inc)特別対談【後編】

トマトスープ 私はあまり、リアルな人の生々しさを描きたくないと思っていて。どこかちょっと人形っぽさがある方が好きでして。リアルなところはリアルにしたいけど、そちらに振りすぎないように意識しています。

相沢 確かに、先生の絵柄は柔らかくて癒されます。絵本を読んでいるかのような親しみやすさがあって、大人も子どもも入りやすいと思います。怖いものを見なくてすみそうですね(笑)。萌え系のタッチとは路線が違うと思いますし、ちょっと独特ですよね。どちらで絵を学ばれたんですか?

トマトスープ もともと絵が好きだったこともあって、多摩美術大学で学びました。絵を描くにあたっては、水木しげるさんのイラストを参考にしようと思って、かなり模写をした時期がありましたね。読みやすいって言っていただけて、この絵が間違ってなかったと思いました。そういえば、でんぱ組のメンバーにも多摩美大出身の方がおられましたよね?

相沢 そうなんですよ、夢眠ねむちゃんが多摩美大卒です。
こんなすごい作品を描かれているわけですから、スタッフさんも大勢いらっしゃるんですよね?

トマトスープ 私一人で描いてます。

相沢 えー!お一人なんですか‼️漫画家さんのお仕事大変じゃないですか!

トマトスープ 私の絵はあまり描き込みが多くないので、1人で何とかやっております。さすがに調べ物は、秋田書店さんとつながりのある研究者の方にご協力いただくことがあるんですけれど、ほとんど編集さんと二人三脚で描いています。

相沢 すごい、すごすぎる! モンゴルにはこれまで何回くらい行かれているんですか?

トマトスープ 内モンゴルを含めると3回訪れていますが、これからも何度でも行きたいと思っています。博物館を全部回りきれていないので、ぜひ行きたいですね。おそらくこれから先もいろいろ調べていくうちに、どんどんわからないことが増えていって、あれを見ておけばよかった、というターンが来るだろうなと思っているので。一度目にしたものでも、そのときは何とも思わなかったものが、今だったらその価値や意味に気がつけるかも。やはりモンゴルは広くて、行く先々の場所で土地柄や人、文化も多様性にあふれています。古来から遊牧民の営みは続いていますし、経済活動もかなり初期の段階から持続的に発展してきていますから、もしかしたら今の時代に学ぶべきところがあるかもしれません。

相沢 私は今度行く機会があれば、モンゴルの伝統的な歌や音楽、ダンスをぜひ習いたいです。前回訪れたときは、シャーマンやスポーツ学校のこと、文学的なことを勉強させていただいたので、音楽的な文化にもっと触れてみたい。今もそうですが、これからも歌で伝えたり表現したりできればと思っているので、言葉をすべて理解するのは難しいかもしれませんが、新たな何かをモンゴルで感じられれば。8年前は、私たちがモンゴルに行くってどういうことなんだろう?って思っていたんです。アイドルの訪問先としては大変めずらしい国だったみたいで、周りの方にもびっくりされて。ツイッターに「モンゴルにいってきます!」って書き込んだら、ウランバートル出身の朝青龍さんから「がんばれ!」ってリプをいただいたくらいで(笑)。モンゴルの素晴らしさを少しでも広められるように頑張ろうと思いましたし、これからもその気持ちを持ち続けたいです。

『天幕のジャードゥーガル』トマトスープ×相沢梨紗(でんぱ組.inc)特別対談【後編】

「天幕のジャードゥーガル」最新4巻では、対金戦争の英雄・トルイが没し、帝国全体が動揺。さまざまな人物の思惑が錯綜する中、ファーティマの「静かなる戦い」は続くが、皇帝オゴタイから驚きの提案を受ける。帝国の拡大にあわせて新たな勢力や敵味方不明な存在も続々登場する。これからモンゴル帝国の存亡は? そしてファーティマの決断、運命は? どうぞご期待ください。


トマトスープ【トマトスープ】
群馬県出身。2021年9月、WEBコミックサイト「Souffle」(スーフル)で「天幕のジャードゥーガル」連載開始とともに注目度が高まり、宝島社「このマンガがすごい!2023」オンナ編で歴史漫画初の1位に輝く。2023年のWINGS 10月号から、モンゴル帝国に侵攻されたグルジア(ジョージア)王国の地方領主の活躍を描く「奸臣スムバト」も連載スタート。そのほかに、完結作「ダンピアのおいしい冒険」(イースト・プレス)など主に中世〜近世の世界史をテーマにした創作歴史漫画を手掛ける。

相沢梨紗(でんぱ組.inc)【相沢梨紗】
8月2日生まれ。大阪府出身。アイドルグループ「でんぱ組.inc」リーダー。中学時代にコスプレーヤーだった先輩に勧められてコスプレを始め、高校生のころから秋葉原に通う。コスプレーヤー仲間の紹介でメイドカフェに入店し、料理の腕をかわれてキッチンメイドに。その後、秋葉原ディアステージのオープニングメンバーに応募し、2009年に古川未鈴らと「でんぱ組.inc」を結成した。グループではどじっこ担当。キャッチフレーズは「2.5次元伝説」。特技は妄想とお菓子づくり。

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