『「もえこと畑とお寺ごはん」がもっと楽しく! 萌飯コラム』青江覚峰 料理僧として活躍する緑泉寺住職の美味しいコラム!
11話 物語を食べている

油揚げをつかった「信田巻き(しのだまき)」は、安倍晴明ゆかりの食べ物です。今日はお料理の物語に、思いを馳せてみませんか。
「信田巻き(しのだまき)」は、油揚げでさまざまな具材を巻いて仕上げる日本の伝統料理です。調理法には煮る、揚げる、蒸すなどがありますが、今回はじっくりと煮含める仕立てにしました。
出汁をたっぷりと吸い込んだ油揚げは、口に含むとじゅわっと旨味が広がります。
素朴な料理ですが、どこかほっとする味わいで、昔から多くの人に親しまれてきました。
ところで、この「信田巻き」という名前には、美しくも哀しい物語が隠されています。
その由来は、現在の大阪府和泉市にある「信太(しのだ)の森」に伝わる伝説です。
平安時代、陰陽師として名高い安倍晴明の父・安倍保名(あべのやすな)は、信太の森で狩人に追われていた一匹の白狐を助けました。その白狐は恩返しのために「葛の葉(くずのは)」という女性の姿となって保名のもとを訪れたのでした。
やがて二人は夫婦となり、一人の男の子を授かります。その子こそ、後に日本で最も有名な陰陽師となる安倍晴明です。
しかし、ある日、葛の葉の正体が狐であることが知られてしまいます。
別れの時、葛の葉は障子(しょうじ)に「恋しくば たずね来てみよ 和泉なる 信太の森の うらみ葛の葉」という歌を残し、愛する家族のもとを去って信太の森へ帰っていったと伝えられています。
安倍晴明は、その後、卓越した陰陽道の力を持つ人物として数々の伝説を残し、千年以上を経た今もなお、小説や映画、漫画などで描かれ続ける、日本文化を代表する存在となりました。
その晴明を育んだ物語の舞台が「信太」であり、狐にゆかりのある食べ物とされる油揚げを用いた料理に「信田」が付けられたと言われています。
普段、私たちは何気なく料理を口にしています。
しかし、その名前をたどってみると、土地の記憶や人々の願い、伝説や歴史が幾重にも折り重なっていることに気づかされます。
一つの料理は、単なる食べ物ではなく、長い年月をかけて受け継がれてきた文化そのものなのです。
そう考えると、目の前の一皿は、数え切れない人々の知恵や物語がつないできた贈り物のようにも感じられます。
そんな背景に思いを馳せながらいただく一口は、きっといつもより少しだけ豊かで、味わい深いものになるのではないでしょうか。
第11話のレシピをご紹介!

しいたけとほうれん草のジャーマンポテト風
【材料(2人分)】
新じゃがいも 4個(200g)
しいたけの軸 6本
ほうれん草 2把
サラダ油 小さじ1
醤油 大さじ1/2
サラダ油 大さじ1
塩 ひとつまみ
胡椒 少々
【作り方】
1 じゃがいもを蒸し器で串がすっと通るまで蒸す(もしくは一つずつラップして串がすっと通るまで電子レンジにかける(ちなみに900ワットで2分半くらいでした))。ほうれん草はよく洗い、3センチの長さに切っておく。
2 しいたけの軸を薄切りにし、フライパンを中火にかけ、サラダ油小さじ1を入れて炒める。火が通ったら醤油を加え、全体を混ぜたら火を止める。
3 別のフライパンにサラダ油大さじ1を引き、中火にかける。食べやすく切ったじゃがいもを炒め、表面に焦げ目が出てきたらほうれん草と2のしいたけを加える。
4 ほうれん草がしんなりとしたら塩胡椒で味付けをし、盛り付ける。

にんじんのしりしり
【材料(2人分)】
にんじん 150g
絹ごし豆腐 1/2丁
(A)
酒 小さじ2
醤油 小さじ2
みりん 小さじ2
砂糖 小さじ2
ごま油 小さじ2
白いりごま 適量
【作り方】
1 にんじんを千切りにする。豆腐は手で潰しておく。
2 中火で熱したフライパンにごま油を引き、1を入れてにんじんがしんなりするまで炒める。
3 (A)を入れて中火で炒め、全体に味がなじんだら豆腐を加えて水気がなくなるまで炒める。
4 皿に盛り付け、白いりごまを散らす。

信田巻き
【材料(2人分)】
薄揚げ 2枚
水菜 80g
餅1枚
(A)
だし汁 200ml
醤油 大さじ1/2
塩 小さじ1/4
酒 大さじ1
みりん 大さじ1
【作り方】
1 水菜は根元をよく洗っておく。薄揚げはキッチンペーパーで油を軽く拭き取り、包丁で開く。餅は薄く切っておく。
2 薄揚げの長い方の辺を手前に置き、水菜の1/2量ずつを端からはみ出ないように並べる。餅も同様に並べる。
3 手前から奥に向かい、きつめに巻きあげて、つまようじで開かないように止める。
4 鍋に(A)を入れて中火にかけ、ひと煮立ちしたら3を入れて中火で5分、落とし蓋と蓋をして煮る。
5 火を止めて、全体が冷めるまで煮汁の中で冷まし、食べやすい大きさに切り分けて、器に盛る。

厚揚げ
【材料(2人分)】
豆腐 1/2丁
あまった野菜 適量
(例として)にんじんの皮/ アスパラガスの皮/さやえんどう/だしをとった昆布など
(A)
昆布だし 3/4カップ(150ml)
みりん 小さじ1
薄口醤油 小さじ1/2
塩 少々
サラダ油 大さじ1
(水溶き片栗粉)
水 大さじ1
片栗粉 大さじ1/2
【作り方】
1 ⾖腐を⾷べやすい⼤きさに切り、170℃の油(分量外)でじっくり揚げる。
2 あまった野菜を千切りにし、熱したフライパンにサラダ油を引き、しんなりするまで中⽕で炒める。
3 2に(A)を加え沸騰したら、⽔溶き⽚栗粉でとろみをつけ、器に盛った厚揚げにかける。
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