『月曜日のお寺ごはん』青江覚峰 浅草・緑泉寺のお坊さんによる人生相談
#15 子育て中、ときおり全てを投げ捨てたくなります。
今週の相談:就学前の二児の子育て中の母です。子供のことは好きで仕方ありません。それは絶対的に本当なのですが、ときおり全てを投げ捨ててしまいたくなります。その衝動はどう落ち着ければよいでしょうか。
お子さんが好きではあるけれど、ときおりふと嫌になってしまう。私自身も3人の子供を育てていますので、お気持ちはとてもよくわかります。
これはもはや仏教で云々ではありませんが、私がいつも子育てをする中で心に置いていることをお伝えしたいと思います。
それは、「子どもは育てるものではなく育つもの」だということです。子どもを育てようという気持ち、こう育ってほしいという気持ちがあるのはもちろんです。ごく当たり前の親心ですね。でも、「子煩悩」とも言うように、子どもを守りたい、大切にしたという真心も、裏を返せば親の煩悩=欲でしかないという現実もあるのです。
子どもと言っても生き物です。ちゃんとご飯を食べ、最低限衛生的にしていればどんな動物の子どもも、植物ですら育ちます。それは人間も一緒。育てるのではなく、自然の命の力に任せて育つのを見守るだけで、本来は十分なのです。
ただ、動物の子どもと違って人間の子どもは社会を学ばなければ生きていけません。ですから、栄養を摂取させ、最低限整った環境を与えることのほかに、危険を察知することやある程度の処世術は教えてあげる必要があります。
様々な危険のある社会の中で、安全に生きるために知るべきこと。これは保護者としてこれは教えないといけません。
そのためには、子どもを「見ている」ことが大切です。ただ見ているだけでいいのです。見守ってさえいれば、子どもに降りかかる危険をいち早く見抜き、助けてあげることができます。
ところが、見ていればだんだん口を出したくなる、手を出したくなるのが親心。それが行き過ぎると、注視する対象が子どもではなく自分の欲になってしまう。つまり、子どもを見ているのではなく自分の理想を投影した子どもの影を見ている状態になってしまいます。
どんなに幼くとも子どもは子ども、自分とは違う人格を持っています。お子さんが小さいうちは、なかなか子どもから離れるタイミングはないですよね。でも、どうしても疲れてしまったなというときは、最低限、子どもの安全を確保することだけ心にとめて、目だけやってぼーっと眺めているだけでもいいと思いますよ。
次回は2月18日更新です。
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