『月曜日のお寺ごはん』青江覚峰 浅草・緑泉寺のお坊さんによる人生相談
#18 婚約している彼以外に好きな人ができてしまいました。
今週の相談:現在31歳の女性です。婚約者がいるのに別の人を好きになってしまいました。別れて新しい好きな人と付き合うか迷っています。この先のこと考えると年齢的にも何が正解なのかがわかりません。愛情は無くなってしまったのですが、今まで付き合っていた婚約者とこのまま結婚するのが良いのでしょうか。
人生なんてそんなものです。先のことなどわかりません。どんなことでも選択は半分正解、半分不正解。でも、それが正解でなかったとしても自分の人生は一つだけなので、結果としては正解も不正解もありませんね。
さて、その上でお伝えするのは、どんな状況でも「目的のために力を尽くすことを必ず妨げるものがある」ということです。それは、過去にとらわれること。過去に起きた事象にとらわれ、今目の前にある物事に適切な対応をとれないということです。
サンク(埋没)コストという言葉を聞いたことがあると思います。
これは、既に発生して回収が不可能なコスト、例えば既に消化した予算や、建築した工場の建設費用、消費してしまった開発費などのことで、それらはもう戻ってくることはありません。ですから、それにとらわれず、今何が必要で何をするべきかを正しく判断しなければなりません。
さらに、まだ見ぬ未来に思い悩むこともまた、適切な判断を邪魔します。情報過多気味の現代は、私達の妄想を過度に刺激し、欲を引きずり出し、他にやらなけれなならないことがあるのではと焦ったり、あれもできるはず、これもやってみたいと欲求を膨らませたりしがちです。それらはすべて実態のないものへの焦燥でしかありません。時間があれば、状況が許せば、能力があれば、いつか実現できることかもしれません。けれど実際はまだ見ぬ未来のことですから、それは推測であり、もっと言ってしまえば妄想です。
今回のご質問についても同じことが言えるでしょう。長くつきあってきたから、若くて将来の約束がないからというのは、いずれも過ぎ去ったことであり、妄想です。結論から言えば、どちらの方を選んでも同じです。それで幸せになれるかどうか、未来のことなんて誰にもわかりません。もちろんお坊さんでもわかりません。これでよかった、自分がこれで幸せだ、あのときこの人を選んでよかったと思うには、この先訪れる瞬間瞬間で、そのときの「いま」に誠実に対応していくしかないのです。
ただし、「婚約」は社会的責任を伴っています。その解消には、場合によっては慰謝料を請求されることもあります。それについては社会人としてしっかり心得ておくべきでしょう。
次回は3月11日更新です。
今後の最新コンテンツが気になる方は、ぜひSouffle公式Twitterをフォロー!