『月曜日のお寺ごはん』青江覚峰 浅草・緑泉寺のお坊さんによる人生相談
#65 父に免許を返納させるには。
今週の相談:実家に帰るたび、父の車の傷が増えています。高齢者事故のニュースを見るたび、人ごとではないとハラハラするのですが、なかなか父が免許を返納しようとしません。どうしたら返納させることができるでしょうか。
お父さんはきっと「自分はまだ大丈夫」と思っているのでしょうね。
誰にでもそういったことはあると思います。
例えば、自分だけは流感にかからないだろうと思っているんじゃないですか、と聞けば、心当たりのある人も少なくないのではないでしょうか。
一寸先は闇と言います。
今ある状態がずっと続くように考えてしまうのは仕方のないことですが、実際にはその限りでないことも、私たちはいくらも見聞きして知っています。それなのに、いざ我が事となると想像力が及ばない。
自分以外の人に、起こるかどうか確実ではない未来を言って説得し、納得してもらうのは至難の業です。
けれど、それでも声をかけずにはいられないのもまた、人の心です。
結局のところ、誰がどんな言葉で言ったところで、最後は本人の気持ち次第です。
強い言葉で説得したり、優しい言葉で絆したり、危険を説いて脅かしたり、心配だからと泣き落としをしてみたり。
アプローチの方法はいくつもあると思いますが、本人の気持ちが動かなければどうしようもありません。そして本人の気持ちが動くというのは、誰かに何かを言われたから起こるのではなく、本当にふと、あるとき急に腑に落ちて起こるものなだのと思います。
だからと言って、では誰も何もアクションを起こさず放っておけばいいのかというと、それもまた違います。
言葉を尽くして説得することは、必ず本人の心に響いています。響いて、気持ちが動いて、かたちに現れるのに時間差があるだけです。
人の心は変えられないとはよく言われることです。それは本当です。けれど、変えようと働きかけることはできますし、それは決して無力ではありません。
お父さんに免許を「返納させる」のだと思っていると、もしかしたらお父さんも意固地になってしまうかもしれませんね。
そうではなく、気長に働きかけを続けることで自ら「返納する」気になってもらうしかありません。
相手が近しい人であればあるほどそれは簡単なことではないと思いますが、大事なのは今後事故なく、本人も周りの人も安全に運転者生活を終えることです。
どうか根気強く声をかけ続けてください。
次回は3月16日更新です。
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