『木曜日のシェフレラ通信 うこぎんの相談室』杉田真也 スクールカウンセラーによる子どもの心と向き合うコラム
第3回 子どもの自傷行為(前編)

エレガンスイブで連載中! Souffleでも公開中のマンガ「木曜日のシェフレラ スクールカウンセラー五加木純架」がもっとよく分かる。臨床心理士、公認心理師の杉田真也さんによるコラム連載です。
今回から2回にわたり、子どもの自傷行為について取り上げます。
子どもが自傷行為をしたと知ったとき、たいていの大人は動揺します。怒ったり、泣いたり、二度とやらないように約束をさせたり…。
でも、そういった大人の反応は、子どもが助けを求めようとする意志を簡単に奪ってしまいます。
このコラムが、自傷行為についての正しい対応を知ってもらう手助けになると幸いです。
リストカット
自傷行為で真っ先に思いつくのは、手首をカッターなどの刃物で傷つけるリストカットでしょうか。小学校高学年くらいでも、リストカットをしている子どもの話題はさほど珍しくありません。中学生、高校生ともなれば、リストカットをしている生徒はかなりいると思います。
リストカットと聞いて、「かまってほしいんでしょ?」「どうせ本当に死ぬ気はないんでしょ?」と思われた方は、この機会に是非考えを改めてほしいと思います。
リストカットをしている人の大半は、誰にも相談していないことが知られています。また、リストカット自体で死ぬことがほとんどないのは事実ですが、リストカットから徐々に自傷行為がエスカレートしていき、結果的に死に至ることもあります。


「木曜日のシェフレラ スクールカウンセラー五加木純架」1巻より
自傷行為の目的と効果
それでは、なぜ自傷行為は行われるのでしょうか?その多くの理由としてあげられるのは『不快な感情をやわらげるため』であるようです。自傷行為によって脳内麻薬と呼ばれる物質が分泌され、実際に不快な感情が緩和されているという研究もあります。
つまり自傷行為は、不安や恐怖、激しい怒り、絶望感などの感情に支配されそうになったとき、一時的ではあるものの、『自分で自分を助ける』ための『対処法』となっているのです。裏を返せば、自傷行為をしなければならないほど、その人は追い詰められている可能性があるのです。


「木曜日のシェフレラ スクールカウンセラー五加木純架」1巻より
子どものSOSに気づく
もちろん、「自傷行為は役に立つからやめさせなくて良い」というのではありません。自傷行為は、つらい現実に追い詰められた結果、やむを得ず行われているものだと言えます。そうだとすれば、誰かが手を差し伸べることができたら、何か新しい対処法が見つかっていくかもしれません。だからこそ、自傷行為を知ったときの対応が大切なのです。
自傷行為は、目に見えない心の傷を見える形にしてくれたものでもあります。それが子どもであればなおさら、大人はそのSOSサインを見逃さないようにしたいものです。
後編にて、子どもの自傷行為に気づいたときに大人がとるべき対応についてお伝えしたいと思います。




「木曜日のシェフレラ スクールカウンセラー五加木純架」1巻より
【参考文献】
松本俊彦 『自傷・自殺する子どもたち』(2014年、合同出版)
次回は8月17日更新です。漫画「木曜日のシェフレラ スクールカウンセラー五加木純架」ためし読みはこちら▶▶
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