『木曜日のシェフレラ通信 うこぎんの相談室』杉田真也 スクールカウンセラーによる子どもの心と向き合うコラム
第4回 子どもの自傷行為(後編)
エレガンスイブで連載中! Souffleでも公開中のマンガ「木曜日のシェフレラ スクールカウンセラー五加木純架」がもっとよく分かる。臨床心理士、公認心理師の杉田真也さんによるコラム連載です。
後編では、子どもの自傷行為に気づいたときの対応についてお伝えしていきます。
初めて自傷行為を見つけたとき、冷静でいられる大人は少ないでしょう。でも、自傷行為についての知識が少しでもあれば、できる対応も変わってきます。その時に、このコラムをお役立ていただけると幸いです。
まずは落ち着いて
自傷行為を見つけたとき、あるいは学校の先生を通して聞いたとき、保護者の多くは不安でいっぱいになります。自責の念に駆られることもあれば、何とかやめさせようと子どもを叱ることもあるでしょう。でも、そういった行動は、せっかく芽生えた『助けを求める気持ち』を摘み取ってしまうかもしれません。子どもは保護者の反応をものすごく気にしているのです。例えばお母さんが泣いて取り乱しているのを見たら、もう二度と悲しませないように自傷行為をしなくなるかもしれません。例えばお父さんが強く叱ったら、もう二度と怒られないように自傷行為をしなくなるかもしれません。しかし前編でもお話しした通り、自傷行為は『自分で自分を助ける』ための『対処法』です。自傷行為がなくなることは保護者の安心にはつながるかもしれません。でも、本人の辛さは何も変わっていない、それどころか一層強くなっている可能性すらあるのです。自傷行為をやめさせることをゴールと思ってはいけません。
まずは落ち着いて、子どもが話すことを遮らずに耳を傾けてみてください。
話せたことをねぎらいましょう
自傷行為について子どもが自分から誰かに話すこともあれば、誰かに発見されて仕方なく話すこともあります。どちらにしろ、人に話すことはとても勇気のいる行動であり、さらに言えば自傷行為以外の『自分を助ける』ための方法にもなります。
「よく話してくれたね」、「教えてくれてありがとう」など、子どもが『話せて良かった』と思えるような言葉かけをしてあげてください。『他の人に話す』ことは『自分で自分を助ける』ための重要な対処法です。ぜひ、その新しい芽を大切にしてあげてほしいと思います。
生活環境で変えてあげられるところを探しましょう
子どもは良くも悪くも環境に左右されやすいものです。日常生活で何か困っていることはないでしょうか? おうちの中で夫婦喧嘩が絶えない、学校の勉強についていけない、友人関係がうまくいかない、受験のプレッシャーに押し潰されそうになっている…。子どもの生活は、大人が思っているよりも波乱に満ちています。その一方で、まだまだ対処能力は育っていないのです。
そこで、周りにいる大人が連携し、様々な角度から子どもの困りごとを探していくことがとても重要です。ただし、決して責任のなすりつけ合いをしてはいけません。原因が1つであることなんて、ほとんどないのですから。明確な答えが出なくても、子どものために何ができるかと皆で頭を悩ませること自体が大切なのです。
学校にスクールカウンセラーがいるようでしたら、何かお役に立てるかもしれません。子どもと同じく、保護者の皆様も自分だけで抱え込まずに、相談してみてはいかがでしょうか。
【参考文献】
松本俊彦 『自傷・自殺する子どもたち』 (2014年、合同出版)
次回は8月31日更新です。漫画「木曜日のシェフレラ スクールカウンセラー五加木純架」ためし読みはこちら▶▶
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