『木曜日のシェフレラ通信 うこぎんの相談室』杉田真也 スクールカウンセラーによる子どもの心と向き合うコラム
第7回 不登校 (3)
エレガンスイブで連載中! Souffleでも公開中のマンガ「木曜日のシェフレラ スクールカウンセラー五加木純架」がもっとよく分かる。臨床心理士、公認心理師の杉田真也さんによるコラム連載です。
不登校について、「子どもがずっと家にいてよいのだろうか?」「高校に進学できないのではないか?」というご心配をされる方はとても多いようです。「休ませることが大事」と言われても、現実的な問題についてどう対処していけば良いのか、保護者の立場としては悩ましいことと思います。
今回は、不登校の児童・生徒が学校以外で通える場所、中学卒業後の進路選択について触れていきます。
学校以外の通える場所
市町村によって、『教育支援センター(適応指導教室)』という場所が設置されています。文部科学省によると、令和元年には全国の市町村の6割以上が設置しているそうです。自治体にもよりますが、教育支援センターは子どもそれぞれに合わせた学習や体験活動などを行っています。また、学校に戻りたいという意欲が湧いた子どもには、学校と連携して登校をサポートしてくれることもあります。
一方、公的機関以外では『フリースクール』と呼ばれる場所が全国各地にあります。こちらは有料ではありますが、施設ごとにさまざまな特色を打ち出しています。難点は、やはり有料であること、設置数が少ないこと、それぞれの質に差があることでしょうか。
いずれにしろ、「自分がいても良いんだ」と思える場所があること、自分と同じ境遇の仲間がいることは、子どもが次に進むための大きな原動力となります。
注意したいのは、新しい場所に通うことは子どもにとって大きな負担になるということです。本人も保護者も、「心機一転、ここで頑張って、今までの分を取り戻すぞ!」と気合を入れ過ぎてしまうと、あっという間に息切れしてしまうことがあります。家族同士や施設の担当者とよく相談しながら、「この場所は本当に子どもにあっているかな?」「無理をし過ぎていないかな?」と、あせらずじっくりの姿勢で通うことが良いように思います。
学びの多様化学校(不登校特例校)
教育支援センターやフリースクールは、それまでの学校に在籍したまま通う場所です。一方で、「不登校児童生徒を対象とする特別の教育課程を編成して教育を実施する学校」として、『学びの多様化学校(不登校特例校)』の設置が全国で進められています。
この学校へは転入学をする必要があり、まだまだ設置数は少ないです。しかし、かなり柔軟なカリキュラムを設定し、子どもたちの成長を支えているようです。
今後は不登校児童・生徒の選択肢として全国に広がっていくことが予想されます。
進路について
中学生になると、進路選択の時期が迫ってきます。中学生が不登校になった場合、進路への悩みが重くのしかかってきます。「自分はもうおしまいだ、どこの学校にも行けないんだ」なんて思い詰めてしまうこともあります。確かに公立の全日制高校は内申点の影響が大きいため、出席数によっては合格が難しくなるかもしれません。しかし、現在では高校の選択肢は非常に多くあります。例えば、私立の全日制高校や公立の定時制高校、通信制高校は内申点を重視しないことがあります。
通信制高校は、最低限決められた回数の通学(スクーリング)がありますが、基本的にはレポート提出と試験によって卒業することができます。また、私立の通信制高校では通学日数を選択できることが多く、普通高校のように毎日通うコースもあります。スクールカウンセラーの配置などサポート体制が充実していることも多いようです。私立の場合には事前の学校訪問が必須の場合がありますので、注意してください。
いずれの学校に行くにしても、不登校の中学生が進路に向き合えるようになるためには長い時間が必要です。しかし、いざ本人が動き始めた時、進路の情報が何もないと心もとないでしょう。「こんな学校もあるよ」と提案してあげられるよう、保護者の方は早めの情報収集を検討してみてください。
参考サイト
文部科学省 「教育支援センター(適応指導教室) に関する実態調査」結果
文部科学省 学びの多様化学校(いわゆる不登校特例校)(不登校児童生徒を対象とする特別の教育課程を編成して教育を実施する学校)について
次回は10月26日更新です。 漫画「木曜日のシェフレラ スクールカウンセラー五加木純架」ためし読みはこちら▶▶
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