『木曜日のシェフレラ通信 うこぎんの相談室』杉田真也 スクールカウンセラーによる子どもの心と向き合うコラム
第8回 子どものコミュニケーション力
エレガンスイブで連載中! Souffleでも公開中のマンガ「木曜日のシェフレラ スクールカウンセラー五加木純架」がもっとよく分かる。臨床心理士、公認心理師の杉田真也さんによるコラム連載です。
子どものコミュニケーション力
子どものコミュニケーション力に関するご相談をいただくことがたくさんあります。
「うちの子は、他の人にまったく興味がないようで…」「慣れていない人とは全く会話をしないんです」「話の順序がめちゃくちゃで、言いたいことがさっぱりわからなくて…」といった具合です。
「このまま大人になって、やっていけるんだろうか」と、子どもの将来を心配されるお母さんやお父さんの気持ちもよくわかります。
では、子どものうちからコミュニケーション力を上げるために、どこかでトレーニングを積ませればよいのでしょうか。「相手の目を見て話しましょう」「大きな声でハキハキと」「5W1H、起承転結を意識して」「アサーション・トレーニングだ」などなど。どれも間違った方法ではありませんが、いきなりそういった方法を教え込もうと思っても、うまくいかないことが多いというのが私の意見です。
結局のところ、子どもが必要と感じていなければ、トレーニングをしたところで成果が上がらないばかりか、失敗を積み重ねて自信を失ってしまう可能性すらあります。
私は「いかに子どもにコミュニケーション力をつけさせるか」より、「子どものコミュニケーションの取り方を理解しようとする人がいる」ことが最初に必要であると思います。
大なり小なり、自分のコミュニケーションがうまくいっていないことを子どもは気にしているものです。
そこで「自分が表現したいことをわかってもらえる」という喜びと安心感があると、「相手が表現したいことをわかろう」という試みが生まれます。大人もそうですよね。
大人の世界で大切にされているものと違っても、コミュニケーションには違いありません。そして、そこからどんどんコミュニケーション力は発展していくように思います。
その中で、子どものとんでもない魅力が見つかったりすることもあります。
他の人にまったく興味がないように見えた子が、実はこちらが髪の毛を切ったり新しい服を着ていたりすることを的確に見抜いてくれるかもしれません。
全く会話をしないと思っていた子が、誰よりも表現力豊かな「絵しりとり」で驚かせてくれるかもしれません。
話の順序がめちゃくちゃだと思っていた子が、江戸幕府の成立から滅亡までを正確に語ってくれるかもしれません。
身近にいる大人の中には、こういった子どもの魅力を見つけてくれる人が必ずいるものです。
どこかでトレーニングが必要になる子もいます。でも、自分のコミュニケーションの取り方を知ろうとしてくれる大人との出会いは、どんなトレーニングにも勝るかけがえのないものだと思います。そんな人を見つけたら、できるだけ逃がさないようにしましょう(笑)。
スクールカウンセラーが、そんな大人の一人になれると幸いです。
次回は11月23日更新です。 漫画「木曜日のシェフレラ スクールカウンセラー五加木純架」ためし読みはこちら▶▶
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