逃げることが立派な戦略である理由|ぱぷりこ | Souffle(スーフル)
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コラム 2018.10.25

『逃げることは戦略である』 ぱぷりこ 暗黒大陸みたいな場所にとどまらないために。

#2 逃げることが立派な戦略である理由

「妖怪男子ウォッチ」のぱぷりこの大人気コラム! 現状がつらい私たちに必要な「逃げるための具体的な戦略」とは?

「死んだら負け」と「逃げたら負け」に通じるもの

ここのところ「死んだら負け」発言をめぐる議論が活発です。「戦略的に逃げれるようになろうぜ★」を推進する者としては、「死んだら負け」発言は「逃げたら負け」に通じるものがあると感じています。

そもそも「勝ち負け」という判断をするなら「勝ちの条件=ゴール」を決める必要がありますが、「死んだら負け」ならば「生きていたら勝ち」なのでしょうか。だとすると「つらいながらに生きている」現状ですでに勝っているのでしょうか。勝っているから、苦しんでいる本人は救われるのでしょうか。

そうじゃないですよね。「つらい状況から抜け出したい」「ちゃんと息ができるようになりたい」と願っているのに「現状をキープしろ」と言われても苦しい現状は変わらず、「自分の助けになってくれない」という悲しみと孤独が増すだけです。「自分は敗北者になりかけている」と、自信を失わせることにもなりかねません。

「死んだら負け」「逃げたら負け」は、そもそも「勝ち負け」の判定が不明なうえに、現状改善や精神的な救いにならないので、苦しんでいる本人にとって無意味、むしろ自信喪失につながる点でマイナスだと私は思います。必要なのは、相手の苦しい現状とつらい気持ちを認めること、そして「いつ逃げることを判断すればいいか」「どうやって逃げればいいか」という具体的な方法ではないでしょうか。というわけで、まずは「いつ逃げることを判断すればいいか」を判断する方法を考察します。

そもそも「戦略」とはなにか

前回、「逃げることは立派な戦略のひとつ」と書きました。なぜ「立派な戦略のひとつ」なのかを理解するためには、そもそも「戦略とはなにか」を知る必要があります。

戦略とは、ざっくり言うと「ゴールを達成するためにどの方法が効果的かを考える」ことです。具体的にやることは以下の6つ。

1.「達成すべきゴール」を正しく認識する
2.「自分が今いる現状(リソース・環境)」を正しく認識する
3. ゴールと現状のギャップを認識する
4. ギャップを埋める手段、それらのメリットとデメリットを挙げる
5. 総合的に判断して手段を選ぶ
6. 実行して効果を検証し、2〜5を繰り返す。

例えば、ビジネス戦略の超簡易版ならこんな感じです。

1. ゴール:売上を対前年比10%成長させる
2. 現状:売上が対前年比で成長なし。残り3か月。マーケティング予算100万円
3. ギャップ:10%
4. 手段:セール(短期で上がるが、コストがかかり長期でできない)、平均単価上昇(利益が上がるが、競争力低下・顧客離れのリスクあり)などを全部出す
5. 決定:短期で上げる必要があるので、セールで7%、広告で3%上昇させる
6. 実行&検証:セールの実績レビュー、広告の効果測定をして、足りなければ2~5を繰り返す

こうした戦略を立てても、実際にすんなりうまくいくことはあまりありません。だいたいゴール・現状・ギャップの認識がずれていたり、手段を考え切っていなかったり、予想よりうまくいかなかったり、失敗したりします。うまくいかない場合、「ゴール・現状・ギャップ」認識のいずれかを変えるか、「逃げる・撤退」を検討する必要があります。

戦略において「逃げる」ことを考える段階

戦略において、「逃げる」「撤退」を考える段階は3つあります。

まず、「ギャップ」段階。ゴールと現状のギャップが予想よりもありすぎたり、外部環境が厳しくて現状のリソースではゴールを達成できないと判断した時です。

そして「総合的な判断」段階。ギャップを埋める手段がどれも難易度が高かったり、ゴールは達成できるが失うものが多すぎると判断した時です。

また、上記のサイクルを何度か繰り返しても予想していた成果が出ない場合も、逃げることを考えます。

多いですよね。そう、多いんですよ。戦略がきちんとできていると、「逃げる」コマンドを選ぶ機会は、じつは意外と多いんです。

人生で「逃げる」を選ぶ機会はそこそこ多いはず

ビジネスでも「逃げる」を選ぶことはありますが、「個人の人生」で戦略を考える場合、「逃げる」を選択することはビジネスよりもずっと多くなります。なぜなら、ビジネスの場合、主語が「組織」なのでリソースが潤沢にありますが、「個人」の場合はリソースが組織より少なく、適切に逃げないと自分が危うくなるからです。

ゲームで考えてみるとわかりやすいでしょう。パーティーチームが全員体力ゲージ満タンの時はそうそう「逃げる」を選ばないけれど、パーティーメンバーが1人しかいない時は危ないと思ったらすぐに「逃げる」を連打するはずです。

実際、私も「あ、ここは好きじゃない」「はいはいムリムリ」と、戦略的に「逃げる」を選んだことはこれまでにたくさんあります。本来なら、人間が「生きるために逃げる」を選ぶ機会は、そこそこあるはずなのです。

## なぜ「逃げる」を選ばない&選べないのか

にーもーかかわらず!「逃げる」を選ばない人はたくさんいて、「逃げることは悪いことだパーソン」もイキイキと跋扈しています。ホワーイ?

理由はいくつか考えられます。

次回はその理由について語ります。11月1日更新です。

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「逃げてもいい」「逃げることは悪くない」という言葉を聞く機会も増えてきたけれど、具体的な「逃げ方」についての話がまだ足りていない気がする…。「勇気」があればどうにかなるほど魔窟は甘くない。逃げようと勇気を振り絞った瞬間、足元を救われないための「具体的な戦略」コラム。

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