「逃げるのは悪いこと」という呪いを解く|ぱぷりこ| | Souffle(スーフル)
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コラム 2018.10.16

『逃げることは戦略である』 ぱぷりこ 暗黒大陸みたいな場所にとどまらないために。

#1 「逃げることは悪いこと」という呪い

いま私たちに必要なのは「逃げる勇気」よりも「逃げる戦術」。浮気・DV・泥沼不倫…数々の恋愛を解決に導くぱぷりこによる新作コラム!

逃げることは甘えではない。戦略である

「花束をもう一度」(anou)

こんにちは。筆圧の谷のぱぷりこです。いきなりですけど、ちょっと愚痴ってもいいですか?

かつて私はとある外資企業で「暗黒大陸」と名高い部署に所属していました。SランクやAランクのモラハラ魔獣たちがイキイキと跋扈する魔窟で、まーとにかく人が辞める倒れる異動する。私はモラハラエリートファザーと暮らしていたためか多少の魔窟耐性があるので「さーていつ脱出すっかなー」ぐらいに考えていたのですが、まともな神経の人が一刻も逃げたがるのは当然です。当時の後輩が「モラハラ上司が嫌いすぎて異動したい」とつらそうにしていたので、「モラハラからは一刻も早く逃げよう!このポジションとかどう?」など相談に乗っていました。

そうしたら、どうも後輩がいろいろな人に相談していることを、部長(Aランク魔獣)が聞きつけたらしく、会議で「誰とは言わないが、つらいからと逃げようとしている人間がいる。だが、こんなことで逃げてはいけない。なぜなら逃げると負け癖がつき、人生でずっと負け続けることになるからだ」と宣言したのです。しかも「俺は大企業での人生経験があり、成功してきた。俺の言うことは正しい」という自慢&俺様発言つき。さらには別のマネージャ(Bランク魔獣)も「このていどのことでつらいとか言ってるようじゃまだまだ」「上のレベルにいったらこんなもんじゃない」と合いの手を入れてくる。オー!パーフェクト!パーフェクト魔窟!あなたたちは魔獣だからいいですよ?好きに上のレベルを目指して天空闘技場でモラモラ殴り合ってればいいですよ。でも、20代のまっとうな感覚を持つ若者を巻き込まないでくれ。

しかし、この「逃げることは悪いことだ」という呪いの言葉は、後輩にダメージと罪悪感を植え付けました。後輩は「異動」を諦め、しばらく耐えたもののやっぱり無理がたたって、休職することに。でも、魔獣たちはなんにも思っておらず、こう言うのです。「だから逃げたら負けだって言ったのに」

「逃げたら負け」VS「逃げてもいい」

その後、後輩は復職後まともな部署に異動できて楽しく働いていますが、残念ながら、上記のようなホラー話はインターネット上でも現実でも山ほどあります。

「逃げるのは甘え」「逃げた人間は敗北者」「逃げた人間は、逃げ癖がついてなにもできなくなる」「若者は耐える力が足りない」

よく見る言葉です。

一方で、「逃げてもいい」「逃げることは悪くない」という言葉も増えてきています。この言葉は、つらさを感じている人、いまいる場所から逃げたい人にとってはすごくうれしい言葉です。共感を覚えるし、「自分はまちがっていないんだ」と勇気を与えてくれます。

「逃げてもいい」だけでは、けっこうリスキー

一方で、「逃げてもいいんだよ」言説の多くはどことなく「ふんわり」していて、「どのようにして逃げればいいのか?」という具体的な「逃げ方」の話が足りてないように見えます。

例えば、泣く子も黙る暗黒ブラック企業に勤めている人が「苦しい」「逃げたい」と思っているとします。「逃げてもいいんだよ」という言葉に勇気づけられて「よし逃げよう」とした時、どうすればいいのでしょうか。誰でも思いついてすぐできる行動は「出社しない」「退職届を出す」。これでうまくいけばいいですが、暗黒企業であればあるほど「出社しないのは甘え」「社会人失格」「どこへ行ってもやっていけない」「退職届は無効だ(ビリビリと退職届を破き捨てる)」「もう少し辛抱すれば昇格できるのに無駄にするのか」「ここまで育ててきたのに恩知らず」と暗黒圧力をかけてきて、「お前が悪い」「こちらに従え」と脅してきます。

逃げることは甘えではない。戦略である

「花束をもう一度」(anou)

ここまで言われても「ノー!私はなにが何でも逃げる!」と実行できる人はそれほど多くありません。どちらかといえば「逃げようとしている自分がおかしいのでは?」と自分の選択に疑問を覚えて逃げることをやめてしまったり、「逃げようとしたのに逃げられなかった」失敗で諦めてしまう人のほうが多いのではないでしょうか。

逃げずにそのまま暗黒郷にステイする場合、心身に異変が起きるレベルまで無理をしてしまい、周囲の介入や入院などによってブラック企業から「強制退場」するコースに向かいます。「強制退場」は、結果的にはちゃんと逃げられますが、とんでもないダメージを負ってしまううえ、「自分の意思で逃げきった」という実感が持てず、自信を失ってしまうことにもなりかねません。

「逃げたいけど逃げる勇気がない人」に、「逃げてもいい」という言葉は勇気を与えてくれます。でも、逃げることへの罪悪感を抱えたまま、逃げ方をよく考えずに逃げたら、ダメージを負ってしまいやすいのも事実。「逃げてもいいんだよ」というだけの「ふんわり言霊」はじつはけっこう危うい、と私は思います。

逃げることは立派な選択肢であり、戦略である

「逃げる」勇気を持つことは最初の一歩としてとても大事なことです。しかし、いざ逃げる時には「勇気」だけでは足りません。

ではなにが必要なのでしょうか?それは「具体的な戦略」です。

そもそも「逃げる」ことは、立派な戦略のひとつです。兵法三十六計では「走為上=逃げることが最善の策である」とあります。自分が不利な状態にある時、負けることがわかっている時は、「兵士や土地などの貴重なリソースを失うより逃げてリソースを守る」「失わないために正しく判断できることは立派な戦略だ」という考え方です。

孫氏もまた「勝機がない時には戦ってはならない」と書いていますし、「三十六計逃げるに如かず」ということわざは「形勢が不利な時は、ごちゃごちゃ変な戦略を立てるより逃げて身を守れ」という意味、マンガとドラマがヒットした「逃げるは恥だが役に立つ」ももとはハンガリーのことわざで「Choose your battles=自分の戦場を選べ」という意味です。

「逃げる」ことは立派な戦略ですし、役に立つし、メリットがあります。「逃げる」ことに罪悪感を感じる必要なんてありません。だって孫氏だよ?ビジネスパーソンのアイドルで定期的に書店に平積みになってる孫氏だよ?それに、いろんな国でことわざになってるんだよ?超クールじゃない?

かっこよく逃げよう、そして自分の戦場を選べ

私は、「逃げる」ことを「選ばないほうがいい消極的な選択肢」ではなく、「堂々と選んでいい超メジャーな選択肢」としてとらえています。かつ、「追い詰められたがゆえの無策」ではなく「戦略」であり、もっと多くの人が罪悪感なく「逃げる」ことを選んでいいと思っています。

一方で、「やっぱり逃げることは罪悪感がある」「そもそも逃げたあとがわからなすぎて不安」「先が見えない状態になるぐらいなら、まだ予測がつく今の苦しみのほうがマシ」という気持ちもよくわかります。

不安になるのは、「自分の判断が正しいかわからない」「逃げた後がわからない」からだと思います。

だとするなら、あるていど「逃げたほうがいいのか、逃げないほうがいいのか、どう判断すればいいか」「逃げたらどうなるか」がわかってれば、不安も減るんじゃない?

というわけで、この連載では「逃げる」ことへの罪悪感を心をこめて爆破していきつつ、「逃げることは立派な戦略である」という立場のもと、「戦略」としての考え方(判断方法・リソースの確保・行動)および「このシチュエーションで逃げたらどうなる?」ということを書いていこうと思います。

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「逃げてもいい」「逃げることは悪くない」という言葉を聞く機会も増えてきたけれど、具体的な「逃げ方」についての話がまだ足りていない気がする…。「勇気」があればどうにかなるほど魔窟は甘くない。逃げようと勇気を振り絞った瞬間、足元を救われないための「具体的な戦略」コラム。

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