「凪の、さっぱりした生活が羨ましい」
日本一のサロンモデル・柴田あやなの本当の理想
「わかる」。
波風を立てない人間関係を築くために、これほど便利な言葉はない。
相手の気持ちに同調して迎合しておけば、誰かに嫌われることも、誰かとぶつかることもない。でもそうしていくうちに、だんだんと心は蝕まれていく。他人の意見にばかり合わせている生活では、自分の幸せの形はいつまでも見えてこないから。
『凪のお暇』の主人公・凪は、空気を読みすぎて自分を押し殺してしまう女性だ。いや、そんな女性「だった」。
彼女は一念発起して会社を辞め、自分らしいシンプルな生活を始める。空気を読んで同調するばかりだった自分を変えるために。
まずは、些細なことから少しずつ。たとえばレジの打ち間違いを伝える。商品販売の勧誘をハッキリと断る。マウンティングしてくる先輩に言い返す。
「空気を読む」のをやめようと勇気を出して変わっていく様子は、見ている人も気持ちがいいものだ。
「凪が、自分の気持ちをハッキリと言えるようになっていくのを見ていると、スカッとしますね」。そう共感するのは、モデル兼タレントの柴田あやなさん。
柴田さんは、日本一のサロンモデルを決める『サロンモデルアワードジャパン』で2017年にグランプリを受賞し、その後はファッション誌でのモデル活動や『めざましテレビ』への出演、ファミリーマートのCMにも起用されるなど、これからさらに幅広い活躍が期待されている23歳の女性だ。
人形のように小さな顔、綺麗な澄んだ目、そして「モデル」という肩書き。Instagramで見ている限りでは、さぞかしキラキラした女性なのだろうと思っていた。だが、彼女から出てきたのはこんな言葉だ。
「芸能界に憧れていたわけじゃないんです。サロンモデルだって、『全部無料でやるから!』と言われてつられたのが始まりで(笑)」
外見のやわらかい雰囲気とは裏腹に、迷いのない口調でテンポよく話していく柴田さん。言葉を選びながらも、気持ちをはっきり伝えてくれる柴田さんの話は、不思議と心が軽くなっていくものだった。
好きな男性とは平等な関係がいい
−柴田さんは『サロンアワードジャパン』で、全国のサロンモデルの中から1位に選ばれたんですよね。今はモデルのお仕事が多いんでしょうか?
柴田:タレントとモデルの両方をしていますが、割合で言うとモデルのお仕事が多いかもしれません。芸能事務所に入ったのは、2年前です。
−そもそも、サロンモデルになったきっかけは何だったんでしょうか?
柴田:3年前に渋谷のスクランブル交差点で、美容師さんから「サロンモデルをやりませんか?」って声をかけられたんです。でも特に興味がなかったので、すぐ断ったんですよね。それでもずっとついてきて、何度も「お願いします!」って言われて……。優しい雰囲気の女性だったんですけど、そのときは「しつこいなぁ、嫌だなぁ」とばかり思っていました。
当時は今よりも10kgも太っていたし、自分に自信もなかった。見渡せば他に可愛い子はいっぱいいるし、化粧や髪型など美容全般に興味もなかったので、もっと可愛い子にすればいいのに、と……。
でも、最後の最後に「毎回、カットもカラーもトリートメントも無料でやらせてもらうので!」って言われて、「え、無料でいいんですか!?」ってなっちゃって。
恥ずかしいんですけど、結局は「無料」って言葉につられただけなんですよね(笑)。
−自ら門を叩いたわけじゃなかったんですね。サロンモデルとしての活動をきっかけに、Instagramで話題になったんですよね。
柴田:そうですね。サロンモデルを始めて半年くらい経った頃に、ヘアカタログに1ページ分掲載してもらったんです。それが話題になって、わたしのInstagramにいろんな美容師さんから連絡がきて、どんどん依頼が増えて……という感じでした。今ではInstagramには17万人のフォロワーさんがいて、応援してくれていますね。
−「モデルになりたい!」という強い意思があったわけじゃないのに、そんなに急に知名度が上がって、「注目されて嫌だ」という気持ちや戸惑いはなかったですか?
柴田:「嫌」とか「嬉しい」とか、初めはそういうことを何にも考えてなかったですね。フォロワーが1万人になっても5万人になっても、特にそれを実感するようなこともなかったし、フォロワー数が世間的にどういう意味を持つのかとか、考えることもありませんでした。ただ単に、見てくれる人がいることや「応援してます」と言ってもらえることが嬉しかったんです。
でも、フォロワー数が10万人を超えた頃に、遊園地に行ったら「柴ちゃんだ!」って知らない人から声かけられて……。「Instagramってすごい」ってそのとき初めて思いました。変な話ですけど、「本当にたくさんの人が知ってくれているんだ」って実感したというか。
−Instagramを拝見しましたが、ファンの子にコメントを返したり、結構意欲的に使われていますよね。
柴田:そうですか……?
正直、「使命感に駆られて頑張ってアップしている」かもしれないです(笑)。
『凪のお暇』でも、“インスタ映え”する食事を同僚が撮りまくるシーンがありましたけど、わたしはああいうのって面倒くさいんですよね。本当に楽しいときって、インスタの存在とか忘れちゃう。
SNSには、わざわざ見たくないものを見に行って、悪口を書くような人もいる。せっかくSNSを使うなら好きなもののために使えばいいのに、そういう人の投稿を見ると「心に余裕がなくなっちゃってるのかな……」ってなんか悲しくなっちゃうんですよね。SNSに気を取られてばかりいるのって、窮屈じゃないですか?
−たしかに。柴田さんも“SNS疲れ”することもありますか?
柴田:疲れることはあまりないです。でもたまに、全部シャットアウトして凪みたいにさっぱりとした暮らしをしたいなと思う時はありますね。
凪の生活をみていると、羨ましいな、楽しそうだなって思います。お隣に住む“ゴンさん”からゴーヤのお裾分けをもらったり、美味しい節約料理を食べたり……すごく素敵ですよね。
−凪のようなシンプルでまっすぐな暮らしに憧れる人もいれば、貧乏は無理って人もいると思うんです。柴田さんは、たとえば付き合う相手が貧乏でも問題ないですか?
柴田:お金持ちと結婚したい!
と思ったことはないですね。デートに行くとしても絶対に割り勘のほうがいいです。
奢ってもらうのって「何かをしてもらうこと」だと思うので、何かお返しが必要じゃないかと思ってしまう。たとえば、「ご飯を奢ってもらっているから、代わりに家事をやらないといけないのかな?」とか。相手からはっきり言われなくても、無意識で役割分担ができてしまうこともあるかもしれないなと。
そうなる可能性が少しでもあるんだったら、初めから平等がいいとわたしは思ってしまいますね。
−なるほど。無意識にでも役割分担ができてしまうことがある、と。
柴田:はい。その役割分担に、二人が納得しているなら問題はないと思います。
でも、「自分は何もしたくないけど、奢って欲しい」というふうに「してほしい」ばかり言っているのは良くないなと思って。
男の人だって、当然自分のために働いていますからね。互いに尊重し合うことが大切なのかなと思っています。
−大事な考え方ですね。たまにTwitterで見かける「デートでサイゼリヤありえない」みたいな議論はどうでしょう?
柴田:デートでサイゼリヤ、大歓迎です。
これはわたしの価値観ですが、マナーを気にしながら堅苦しく食べるよりも、キッズメニューに載っている「間違い探しクイズ」をしながらパスタ食べているほうが楽しいなって。そんな考え方だから、会社を辞めたあとの凪みたいな、さっぱりとした暮らしにも憧れるのかもしれません。
……それにしても凪は、自分なりの幸せを探そうともがいていますよね。都内の暮らしを捨てて、節約暮らしをしていてもまだ世間体とかを気にしているところがありそう。凪自身が、どんな幸せにたどり着くのか。先が気になって仕方がないです。
−自分がどうなったら幸せか、何を嬉しいと感じるのか、わかっていない人が実は多いのかもしれないですね。そういう意味でも「凪」のような女性は、すごくリアルですよね。