空気読みすぎエピソード

横澤夏子

インタビュー·テキスト:夏生さえり
撮影:豊島望
編集:鈴木 梢

「嫉妬するくらいなら、疑似体験を」
横澤夏子28歳、人生の岐路に何を考えるのか

女性にとって28歳という年齢は、「選択を迫られ、迷いやすい年齢だ」と聞く。仕事や結婚、出産など「わたしは、どうしたいんだろう?」と、多くの選択肢と向き合わなくてはならない。

仕事の全体像が見え始めるこの頃には、新しい仕事への転身に悩む人も少なくない。周りの「結婚」「出産」ラッシュが、いやでも目に付く年齢でもある。周りと比べているつもりはなくても、親戚からのプレッシャーからは逃げられないことも。

マンガ『凪のお暇』の主人公「凪」は、28歳だ。わたしたちが現実世界で悩んでいる頃、凪は一念発起した。すべてを捨てて、生き方を見直すという選択をしたのだ。そうして「お暇(おいとま)」と呼ぶ栄養期間で、彼女はゆっくりと生まれ変わっていく。

「いい30歳を迎えたいなら、今が人生の分かれ目な気がする」。

そう語ってくれたのは、芸人の横澤夏子さん。彼女の年齢は、凪と同じ28歳だ。
横澤さんといえば、『ものまねグランプリ2015』で優勝して以来、テレビで見ない日はない。圧倒的な人間観察力を生かした「身近な人」のモノマネが大人気の芸人だ。一昨年2017年には一般男性と結婚をしたことも話題となった。

「結婚生活は楽しいですが、だんだんと行動力を失っている気がして焦ることもあります」

横澤さんは、そう等身大で語りはじめた。

「芸人」は片足を突っ込んでいる
状態が丁度いい

−『凪のお暇』を読んでみて、いかがでしたか?

横澤:こんなに気持ちが引っ張られる漫画は初めてでした。凪とは思考回路が似ている気がして、自己投影しながら読んでしまいました。「全て捨て、新しい場所で暮らす」というなかなかできない選択をした凪を見ていると、同じ体験をしている気分になって、心がすっきり軽くなりましたね。

−描写がリアルだから疑似体験した気持ちになれますよね。特に共感したシーンはありましたか?

横澤:凪が、恋愛で自分を見失ってしまうシーンですね……。恋愛だけじゃなくて、仕事だったり家庭だったり、どこか一箇所にのめり込んでしまって自分が見えなくなる。そういう依存ってたしかにあるなと思いました。

−なるほど。横澤さんも、何かにのめり込んでしまうって周りが見えなくなるようなことってあるんでしょうか?

横澤:ありますね……。 芸人という仕事も、いい意味で「片足を突っ込んでいるような状態」で続けていないと、すぐにパニックになっちゃう。仕事ばかりしていると、一つの世界しか見えていない気がして焦ってくるし、ネタも作れなくなってくるんです。だから仕事以外の時間をつくって、習い事をしたり趣味の時間をつくったり、友達と話したり。話を聞くだけでも、会社や習い事の話が聞けて新しい世界を感じられるんです。

−―“片足を突っ込む”というのは、少し意外でした。バランスよくいろいろな世界を持っておきたいんですね。

横澤:はい。「芸人」も、もともとは趣味や習い事のうちのひとつのような感覚で、楽しみながらやっていたんです。でも、ありがたいことにお仕事をたくさんいただけて……この年になって初めて、「ちゃんと“仕事”になっている」感覚があるんです。

−仕事としてもステップアップして、最近はバランスの取り方に悩んでいる、と。

横澤:本当に今の年齢って、「自分を見つめ直すとき」だと思っているんです。26〜27歳くらいから、友人が転職・結婚・出産など環境が変わりはじめる。嫌でも「自分は、これでいいのか?」って考えるようになりますよね。いい30歳を迎えたいから「今が人生の分かれ道」と感じています。

−結婚したいのか?出産したいのか?キャリアはどうしたいのか? ……本当に「自己形成」が、再び行われているような感覚ですよね。

横澤:比べるものではないですけど、友人のライフイベントを聞くと焦っちゃうんですよね。家を建てるという話もすごく聞くようになって。……家ってすごくないですか? 地図に載るものを建てるってことだよね? とか感動しちゃって(笑)。

でも冷静になると、「わたしもそれがしたいのか?」「自分の目標はなにで、どこに向かおうとしているんだろうか?」とか。そういうのを考えちゃうんですよね。

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