空気読みすぎエピソード

ゆいP

インタビュー·テキスト:夏生さえり
撮影:豊島望
編集:鈴木 梢

「すごくリアリティがある。
でも誰も傷つけない」
芸人としての苦悩から抱く、凪への憧れ

KY(空気読めない)。そんな言葉が流行ったのは、2007年ごろだろうか。KYという言葉のポップな響きを借りて、時代はますます「空気は読みましょう」という風潮へと流れていった。

『凪のお暇』の主人公・凪(なぎ)は空気を読みすぎてしまう女性だ。

「わかる」を口癖にして、誰からも嫌われないように溶け込もうとする凪。

彼女はあることをきっかけに悟る。
「空気は読むものじゃなく、吸って吐くものだ」ということを。

「お暇(おいとま)」をもらった彼女は、自分らしく生きはじめる。話しかけなかった人に話しかける。入らなかった場所へと入っていく。好きなものを作り、好きな人と食べる。ただそれだけのことが、彼女の心を次第に緩めていくーー。

『凪のお暇』特設サイト・空気読みすぎ部SPECIAL INTERVIEW第一弾は、おかずクラブのゆいPさん。
日本テレビ系で放送中の人気番組『世界の果てまでイッテQ!』に出演し、AbemaTVで放送中の『恋する♥週末ホームステイ』ではMCを務めるなど、活躍は目覚ましい。

「自分らしさとかって、まだわかってないんですけどね」と謙虚に語るゆいPさん。そんな彼女は芸人という「空気を読む仕事」を、どう思っているのだろうか。

あの頃の私は、
貧乏だけど豊かだった気がする

−今日はよろしくお願いします。今回のインタビューは、マンガ『凪のお暇』の特設サイトに掲載されるのですが、ゆいPさんも本作のファンだと伺いました。

ゆいP:はい、大好きです! 私、本屋さんでマンガをジャケ買いするんですけど、それで出会ったのが『凪のお暇』でした。読んでみたら本当に面白くて。いろいろなキャラクターが出てくるんですけど、共感できる人が必ずいるんです。
私はシングルマザーに育てられてきたので、「うららちゃん」に自分の幼少期を重ねてしまいましたね……。どんな人でも共感できるようなエピソードが入っていると思います。
それに当時は主人公の凪と同じく、三軒茶屋に住んでいたんです。そのうえ、実家は凪がお暇をもらって暮らしている立川。「一緒だ!」って、びっくりしました。
ガンバレルーヤのよしこが入院しているときはお見舞いにマンガを持って行きましたよ。よしこは「私がいまお暇をいただいているから、持ってきてくれたんですね」って嬉しそうにしていましたが……。別に何も考えていなかったんですけどね(笑)。

−凪は「空気を読みすぎちゃう女子」ですが、凪に共感するところはありますか?

ゆいP:うーん。凪へは共感というより、憧れがありますね。「もう無理」と思った時に、全部を捨てて六畳一間の部屋へ引っ越せるなんてすごい、って。お金も無い中で工夫していて、本当に豊かですよね。

私、最近お金遣いが荒くて……。お昼に1万円以上の食事をしてしまったり、欲しいものを我慢しなかったり。その生活も楽しいのですが、あまり良くないなぁとも思うんです。
昔は本当にお金がなかったので、100円で古着を買ったり、電車に乗らずに自転車で移動したり、暮らしの工夫をしていたんですよね。あの頃の私は、貧乏だけど豊かだった気がするんです。だから凪を見ていると、なんだか羨ましいと思いますね。

−凪は「空気を読んでいる自分」を脱しようともがいていますが、芸人さんというと「空気を読むのが仕事」という節がありますよね。ゆいPさんは、空気を読むのがつらい! と思うことはないんでしょうか?

ゆいP:そうですね……。上手に読めなくてつらいときはありますよ。それから、空気を読む塩梅を間違えて、つらくなる時も。
たとえば、劇場でやるお笑いライブのとき。すごく人気の芸人さんがいて、その人を見たくて通い詰めているお客さんが結構いるんです。その空気を察して、「あの人を目立たせなきゃ」と思ってしまうことがあって……。それで自分は、後ろの見えないところに立って、時間をやり過ごしてしまう。
芸人として、そういう行動は正解じゃないんです。どんどん前へ出て行かないと生き残れない。なのに、「自分なんか見たくないだろう」って勝手に思ってしまうんですよね。

−そんな空気を察しても、空気を読まずに突破できる人もいるんでしょうか?

ゆいP:もちろんいます。自分が気後れしている時に、前に前に出ていける人をみると「あんな風になりたい」って思います。
テレビでも、大御所が話しているときに会話に入っていく勇気が必要。「この人たちの足元に及ばないことしか言えないし」「自分の話なんて聞きたくないだろうし」って思ってしまうけど、空気読んで黙っていたら、出番なんて本当になくなってしまいます。かと言って、「どんどん前へ出て行こう」と張り切りすぎると「喋りすぎ」と怒られるときもある。本当に難しい仕事だなと日々痛感しています。

−かなり気持ちに負荷がかかりそうですね……。

ゆいP:そうですね。テレビに出始めた頃は、「胃がキリキリする」というのを初めて体験しました。移動中も痛くてずっとうずくまっていたので……。勝手がわからなくて、どこでコメントしたらいいかがわからなくて。慣れるまでは本当に大変でしたね。

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