『ムーちゃん通信』赤沼美里 発達障害と自閉症がもっと身近になるコラム!
#4 どうしてムーちゃんはお母さんの呼びかけを無視したの?
普通は母親が迎えに来たら子供は喜ぶはず…。なのにうちの子は無視をする。これには自閉症スペクトラムに特有の理由がいくつか考えられるんです。
対人関係が構築しづらい
自閉症スペクトラム障害(以下、自閉症スペクトラム)の基本的な特性のひとつに「人とかかわることのむずかしさ」があります。自閉症スペクトラムの人は、母親をはじめ他人への関心や興味があまりなく、興味や関心、感情を他の人と共有することが苦手です。そのため名前を呼ばれて応えたり、再会した喜びを分かち合ったりといった対人コミュニケーションが成り立ちづらいのです。
愛情不足が原因ではありません
母親にも関心が薄いのは、愛情不足が原因でもかかわり方が悪いからでもありません。脳の働き方がほかの大多数の人たちとは異なっていて、人とのかかわり方に特性があるからです。自閉症スペクトラム障害のある子どもも、成長とともにいずれ身近な人を認識できるようになってきます。
聞こえていない可能性が
聴覚過敏のために、自分が呼ばれていることに気づけないのかもしれません。私たちは「選択的注意」という脳の機能を使って、無意識のうちに必要な音を選び、不必要な音を遮断しています。この機能が働くおかげで、雑踏のなかで呼びかけに応じたり、相手の話を聞き取れたりするのです。しかし聴覚過敏のある人のなかには、この処理がうまくいかずに、すべての音が洪水のように流れ込み、自分を呼びかける声を聞き取れない人がいます。
人も風景の一部に見えて気づけないのかも
視覚にも同じことがいえます。自閉症スペクトラムの当事者、東田直樹さんは挨拶ができない理由をこう説明しています。
僕には、人が見えていないのです。 |
顔を覚えられない人もいる
自閉症スペクトラムの人は細部を見ることがとても得意で、人の顔を見るときには目や鼻、髪形など自分が気になる部分だけを細かく見ています。そのため服装や髪型が変わって雰囲気が変わると誰だかわからなくなってしまう人がいます。顔を覚えられない人もいますが、親しい人では覚えている部分が多いためにあまり間違えません。
ムーちゃんからひとこと |
【参考文献】
・内山登紀夫/監修、伊藤久美/編『新しい発達と障害を考える本(5)なにがちがうの?自閉症の子の見え方・感じ方』(2014年、ミネルヴァ書房)
・内山登紀夫/監修、諏訪利明、安倍陽子/編『特別支援教育をすすめる本(1)こんなとき、どうする?発達障害のある子への支援 幼稚園・保育園』(2009、ミネルヴァ書房)
・榊原洋一/著『自閉症の正しい理解と最新知識』(2011、日東書院本社)
・榊原洋一/著『図解よくわかる発達障害の子どもたち』(2011年、ナツメ社)
・本田秀夫/著『健康ライブラリーイラスト版 自閉症スペクトラムがよくわかる本』(2015年、講談社)
・東田直樹/著『飛びはねる思考 会話のできない自閉症の僕が考えていること』(2014年、イーストプレス)
・本田秀夫/著『自閉症スペクトラム症の理解と支援 子どもから大人までの発達障害の臨床経験から』(2017年、星和書店)
・宮本信也/監修『じょうずなつきあい方がわかる 自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)の本』(2015年、主婦の友社)
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