『木曜日のシェフレラ通信 うこぎんの相談室』杉田真也 スクールカウンセラーによる子どもの心と向き合うコラム
第9回 お母さんから離れられない
エレガンスイブで連載中! Souffleでも公開中のマンガ「木曜日のシェフレラ スクールカウンセラー五加木純架」がもっとよく分かる。臨床心理士、公認心理師の杉田真也さんによるコラム連載です。
登校班で学校に行けず、お母さんと一緒に登校するけれど、お母さんが帰ろうとすると泣いて離れられなくなってしまう…。小学校低学年の子どものお母さんからよくいただくお悩みです。
育て方のせい?
こんなとき、自分を責めてしまうお母さんが多いようです。周りの人からあれこれ注意されているお母さんもいらっしゃいます。ある人からは「子どもを甘やかすからだ」、またある人からは「子どもへの愛情が足りていないからだ」と、まるでお母さんの育て方が悪かったことが原因かのような言われようです。「愛着の問題だ」など、専門家のようなことを言う人までいる場合もあります。
私は、これらの意見はほとんど役に立たないと思っていますので、無視をするようにお伝えしています。
学校に安心・安全を感じられていない
確かに、過去の経験から「お母さんがいなくなってしまうのではないか」と感じる子どももいるようです。しかし、低学年の子どもが学校でお母さんから離れられない理由のほとんどは、学校が子どもにとって『安心・安全と感じる場』になっていないことであると思います。
安心・安全でないと感じるきっかけはさまざまです。座って勉強をすることが苦痛であったり、騒がしい音を恐ろしく感じたり、先生が怒っていたのを見て自分が怒られることを想像してしまったり…。人間含め、動物は危険に対して自分の身を守ろうとする本能があります。考えてもみてください、低学年の子どもたちです。まだ困りごとに対しての対処能力が備わっておらず、言葉で説明することもままなりません。経験したことのない恐怖に対して、一番安心感を得ることができるお母さんと一緒にいようとすることは、むしろ正常な反応であると感じませんか?
実際の対応
さて、そのような背景の中で、お母さんと一緒でないと学校にいられない子どもに、どう対応することが良いでしょうか。説得で登校できるようになると良いのですが、そううまくいかないことも多いです。やはり、どうしたら学校が『安心・安全と感じる場』になるかを考えていくことが必要です。一番良いのは、子どもと担任の先生が良好な関係を築くことです。それが難しいようでしたら、保健室やスクールカウンセラーがいる相談室などで過ごすことを最初の目標にしても良いでしょう。学校の決まりとの兼ね合いもあるため、担任の先生やスクールカウンセラー、場合によっては管理職の方と相談していきます。学校そのものが怖くなってしまっている場合には、校門で先生とタッチして帰ることから始めるだけでも十分です。しばらくはお母さんやご家族が付き添う必要がありますが、少しずつ少しずつ慣れていくことを目指します。
気をつけたいのは、事前に「今日はここまでやってみよう」と子どもと相談し、きちんと同意を得ておくことです。また、子どもの調子が良さそうだからと言って、事前に約束していないことを急にさせるのは好ましくありません。自分の意思をどれだけ尊重してもらえるかが、子どもが安心・安全を感じるための肝となります。
もちろん、全てにこの対応がうまくいくとは限りません。どうしても学校が合わない場合には、他の居場所を見つける方が大切な場合もあります。また、仕事の都合で朝の時間を取れない親御さんも多いでしょう。小学校にスクールカウンセラーがいるようでしたら、まずは相談してみてはいかがでしょうか。子どもを支えるお手伝いをできるかもしれません。
漫画「木曜日のシェフレラ スクールカウンセラー五加木純架」ためし読みはこちら▶▶
今後の最新コンテンツが気になる方は、ぜひSouffle公式Twitterをフォロー!