『月曜日のお寺ごはん』青江覚峰 浅草・緑泉寺のお坊さんによる人生相談
#55 親を諦めています。
今週の相談:成人するまで、父親からネグレクトを受けて育ちました。今は普通に話すのですが、親と接していてもどこかで「今更何を」とずっと思っており、期待も何もしていないです。このままの親子関係でもよいでしょうか。
結論から言えば、それでいいのです。
我が子に深い愛情を惜しみなく注ぎ、ひたすらかわいがってくれる、慈しんでくれるというのは、「親」としての理想像の一つだと言えるでしょう。でもそれはあくまでも理想であり、フィクションです。もちろん、子から見てそのように見える親も世の中にはそれなりにいるでしょう。けれど、それはあなたにとっての現実ではない。
親子の縁、恋人の縁、夫婦の縁など、人と人との関係がうまくいくこと、これは決して当たり前の事ではありません。「たまたま」が重なって、いい関係を結べることもあれば、その反対もあります。
そうとわかってはいても、理想とかけ離れた現実が我が身のこととして起こってみるとどうしても苦しい。なぜ自分がこんな目にと、悩んだり恨んだりすることもあることでしょう。
けれどその環境、関係もまた、たまたま自分が縁を持ったものなのです。それを世間の常識と比べてたところで、苦しみは増すばかりです。
事実は事実として存在しますが、それを今現在のあなたがどう受け止めるかは、事実とは別の問題です。
「他人と過去は変えられない 自分と未来は変えられる」はカナダの精神科医エリック・バーンの有名な言葉です。ネグレクトを受けた過去は変えられません。残念ながら。
では未来のことを考えましょう。
今さら何を、と本当に何も期待していないのなら、それこそ「そのまま」でいいでしょう。子どもの頃にあなたを苦しめていた世の中の常識との乖離がない今、わざわざ波風を立てることはありません。
そうではなく、お父さんとの関係を変えたいなど、何か求めるものがあるのなら、そのための行動をとってみるのもいいかもしれません。
いま、ここ、私。
通り過ぎた過去でもなく、想像するだけの未来でもなく、今、ここにいる自分自身がどうしたいのか、じっくりと見つめてみてください。その結果、お父さんとの関わり方が違ってくるのであれば、それがどんなものであれ最も自然なかたちなのでしょう。
次回は12月30日更新です。
今後の最新コンテンツが気になる方は、ぜひSouffle公式Twitterをフォロー!