『月曜日のお寺ごはん』青江覚峰 浅草・緑泉寺のお坊さんによる人生相談
#29 悩みを人に相談できません。
今週の相談:なぜ相談できないのか自分でもよくわからないのですが、1人で抱え込んでしまいます。
なぜなのかわからないとご自身でもおっしゃっていますので、あくまでも一般論として考えてみたいと思います。原因はいくつか考えられますが、その一つに、「こんなことで悩んでいるの?」と思われるのが恥ずかしい、という思いがあるかもしれません。こんなくだらないことで、こんな些細なことで悩んでしまう小さい人間だと思われたくない。そんなふうに考えてしまい、気安く悩みを打ち明けられない、といったところではないでしょうか。
自分一人で悩みを抱え込むのは、コップの中に水をためていくことに似ています。
途中まではまだまだ余裕で、最終的には表面張力が決壊する瞬間まで水は入ります。けれど、ため続けていけば水は溢れ出てしまいます。持っているコップの大きさは人それぞれ。ためていくスピードも人それぞれ。途中でタイミングよく水を零しながら、いつまでも溢れさせずにいられる人もいるでしょう。あるいは、まだまだ余裕があると思ってのんびりしていたら、入ってくる水の量が急に増えて慌ててしまう、なんてことがあるかもしれません。
おわかりですね。
このコップは人の心、水はストレスや心配事など、人の心を悩ませるものです。
溢れそうだからちょっと手伝って! 少しだけ引き受けて!
そう言うにはたしかに勇気が必要です。
自分のコップの小ささを知られたくない、自分の分を引き受けてもらうのは申し訳ない。そんなふうに思ってしまう気持ちは誰にもでありますから。
けれど、もし水が溢れてしまったらそんなこと言っていられません。溢れてしまった事実はみんなに見えてしまいますし、それを元通りにするのに自分一人の力ではどうにもならないこともあります。
こんなことになるまえにひとこと言ってくれれば、と思う人もいることでしょう。
体の具合が悪くなって病院にかかるときだって、まだ大丈夫とタカをくくっていたら重症化してしまい、もう一歩も動けない、挙句の果てには救急車騒ぎ、なんてことだってありますね。
心の問題も同じです。本当に切羽詰ってからでは、おいそれと打ち明けられなくなってしまうものです。どんなに賢い人でも、強い人でも、生きていれば大なり小なり悩み事はあるものです。誰かに言いたいな、聞いてほしいな、と思えるうちが花ですよ。
次回は6月17日更新です。
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