『月曜日のお寺ごはん』青江覚峰 浅草・緑泉寺のお坊さんによる人生相談
#32 いい歳をして、だいぶ年下の若手俳優にどハマりしてしまいました。
今週の相談:何十冊と同じ写真集を買い、何十枚とDVDを買って2ショットチェキを撮って何度も舞台に通って…と端からみて痛いことをしているのは重々承知なのですが、現場にいるときは本当に幸せでやめられません。また彼の他のファンに負けたくないという気持ちもあるのか、仕事などで現場に行けない時はストレスを感じます。私はこのままでいいのでしょうか…?
いいと思いますよ。
「趣」という字は「急ぎせかして走らせる、早く走る」という意味に由来します。それが「行く」という意味の「おもむく」から転じて「おもむき」となったそうです。
興味を持って突っ走ってしまう、まさにあなたの行っていることこそが「趣味」だと言えるでしょう。
ただ、他のファンに負けたくない、というのは気になりますね。
本来、趣味というのは自分の心がウキウキとし、思わず走りたくなってしまうようなもの。
それが、他のファンとの比較、競争に目が向いているようでは、純粋な気持ちで趣味を楽しめなくなってしまいますよね。
阿弥陀経というお経の中に、こんなお話があります。
極楽の真ん中に池があり、たくさんの蓮の花が咲いています。
青い花は青く輝き、黄色い花は黄色に輝く。赤い花は赤く、白い花は白く、それぞれの色に輝いている。
一つ一つの花が、生まれ持った色やかたちでありのままに咲いている様を表した一節です。
それに引き換え、人間はどうでしょうか。
私たちはつい自分と他の人を比べてしまいます。もっと美しければとか、もっとお金があればとか、若ければ、頭が良ければと、他の人にあって自分にないものを探して落ち込んだり苛立ったりします。その結果、ありのままの自分で自身の人生を謳歌する機会を逃してしまうのです。
人と比べるのは虚しいことです。どうしたって周りが気になってしまうのは仕方のないことですが、金子みすゞさんも「みんなちがってみんないい」と詠っているように、本来、私たちは誰も自分だけの輝きを持っているのです。各々がそれを大切にしてそれぞれの色で輝くから世の中は美しいのです。
趣味などその最たる例でしょう。
どうしてその趣味を持ったのか、どうして好きでしょうがないのか、時間もお金も費やしてしまうのか。理由なんてどうでもいい。だって好きなんだから、楽しいんだから仕方ない。その俳優のどこがどんなふうに好きなのかも、応援してどんなに幸せな気持ちになれるかも、それでどれほど自分の毎日が潤うのかも、他の人には味わえない、あなただけの大切な趣味の醍醐味です。
みんなそれぞれ時間やお金の事情、家庭の事情がある中で、自分にとっていちばん都合のいいように趣味を謳歌する。それが即ち「おもむき」のある人生につながるのです。
次回は7月8日更新です。
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