『月曜日のお寺ごはん』青江覚峰 浅草・緑泉寺のお坊さんによる人生相談
#37 定職につかない娘が心配。
今週の相談:36歳になる娘がいるのですが、今だに定職につかず結婚もせず家にいます。アルバイトのようなことはしていますが、いつも長くは続きません。私が亡くなった後、娘のことが心配です…。育て方を間違ってしまったのでしょうか
育て方を間違ったかどうかはさておいて。
厳しいことを言うようですが、一言聞かせてください。
本気でお嬢さんのことを心配をしてらっしゃいますか?
もしくは現状が良くない、変えないといけないと「あなた自身が」自分の問題として感じていますか?
このコーナーでは何度かお伝えしてきましたが、人間関係の問題はどちらかが悪いということは決してありえません。そして、どちらか一方の働きかけだけで相手のことをどうのこうのできるわけでもありません。できることがあるとしたら、自分がどう変わるか、どう動くかだけなのです。
もし本気で娘さんのことが問題であり、解決をしなければならないと考えているなら、家から追い出したり、いっそのこと自分たち親世代が引っ越しをしたりするという選択肢もあります。そんなことを言うと、きっと、そんな極端なやり方は現実的ではないと思われることでしょう。でも、本当に解決しないといけない問題、例えば住んでいる地域の治安が非常に悪く命の危険を感じるとなれば早急に引っ越しを考えるでしょう。もっと身近なことでも同じです。冷蔵庫の中身が明日にも底をつくとなれば、すぐにも買い物に行くでしょう。
しかしながら、これまでそういった決断をしてこなかったことを考えると、このままでは良くないと言いながらも、親御さんもお子さんがそばにいて見守っていられる状況を、心のどこかで喜んでいるのではないでしょうか。もちろん、心配はしつつも。
つまり、危機感の度合いとしてはそこまで緊急度の高いものだという認識がないのでしょう。
さて、「育て方を間違ってしまったのでしょうか」というご質問に戻ります。
よく「子育てに正解はない」と言いますよね。これは、裏を返せばそのまま「子育てに失敗もない」と言えるのです。
そもそも、もし誰かが貴方の子育ては間違っていませんよ、もしくは間違いでしたよ、と判定してくれたとして、現実に親御さんが、ひいてはお嬢さんの人生になんの改善ももたらしません。
そのようなことを思い悩むより、このままでは良くないと感じている現状を、どのように変えたいのか、変えるためにはどのように行動すればいいのかを、今一度自分自身の問題としてじっくり考え、そして実践してください。
次回は8月26日更新です。
今後の最新コンテンツが気になる方は、ぜひSouffle公式Twitterをフォロー!