ハードコア犬占い【11月1日～11月15日の運勢は？】

イラスト：うかうか

おひつじ座

カジャグーグー（Kajagoogoo）は、古代世界に起きた神々の大戦争のいきさつを伝える、失われた言語で書かれた叙事詩の名前だ。それが嘘かどうかはググればわかるが、まぁ待て。歴史とは書かれたものであり、世界そのものではない。ネヴァーエンディングストーリー、ていうだろ？ あれは、書いてないほうの全部、ていう意味だ。つまり、今ここでこうしている、おれたちのことだ。映画みたいなもんだな。暗いところで、おれたちはじっと観ている。ある種のピラミッドの中は劇場になっていて、そこで居眠りをするおれたちを揺らし続けるすごいサラウンドシステムがあるらしい。それがカジャグーグーだ。いやどうだっけ。とにかく、目を瞑って観る映画があり、サラウンドもバッチリってことなら、おまえはあいつを誘いだして、暗いところで手を握るべきなんだ。各劇場にサービスデーがある。おまえの場合、11/6だ。キスしてみろ。

ラッキーコア：バガヴァットギーター

おうし座

最新のクリームソーダ色の縄文スーツでビシっと決めたビッグバンドを従えて、伝説のソングバード、おまえが登場する。ポテトとソーセージくらいしかメニューがないビアホールには、空腹感と期待感が満ちている。今夜の一曲目は、あの曲だ。静まり返った空気が少し揺れて、誰かがため息をつく。甘く重たいスイングが、ロッキングチェアのように全員の目を瞑らせる。花粉のように宇宙に飛び散った音の一粒ずつが、それぞれひとつの宇宙になって、そこでおまえは目を覚ます。うたた寝するマスターの傍らでレコードが周り続け、溝の最後をなぞる針のノイズが、ホーンスピーカーを微かに震わせている。夜は深く、食べかけのコーヒーゼリーが黙っている。マスターが目を覚ますまで、こうして座っていてもいいだろう。昔、戦争があって、みんな傷ついたが、ともかく今、こうしている。11/9には、憶いだしたことを手紙に書いてみろ。

ラッキーコア：コーヒーゼリー

ふたご座

お堂に集まれ！わー！小坊主たちとロボたちが駆けてくる。今日の仕事は、値段の割にはすごくいい感じと評判の、占い自動販売機に入れるカプセルの梱包作業だ。小坊主とロボたちが一列になって、ラインを形成する。右から左へ、前から後へ、カプセルが運ばれる。筆を舐めてうーん、と考える小坊主。カプセルをお堂の天窓に透かして、キラメキ具合をチェックするロボ。見事なオートメーションが陶酔的な雰囲気を生み出して、全員の心がひとつになる。おれもおまえも、ずっとここでこうしていたい、と思う。ゴーン…と鐘が鳴って、ラインが一斉に止まる。お堂がシーンと静かになり、再びザワザワしてくる。お昼休みだ。食堂に集まれ！ わー！誰もいなくなったお堂に、金木犀の香りが満ちる。すっと戸が開き、ひとりの和尚が入ってくる。あれはいつだったかのう… あの時も、金木犀のいい匂いがしておった。お堂の上空を、スムーズなUFOが通り過ぎる。11/11頃から、新しい匂いを感じるだろう。憶いだせ。

ラッキーコア：カプセル

かに座

家庭用タイムマシン「かこミらi」が、発売直前にちょっとしたトラブル発生とのこと。営業と広報と職人さんが工場に集まったが、朝早いので皆少しぼうっとしている。合わせ鏡に通電して重力分布を調整する仕組みだが、これで本当にタイムトラベルができているのか、わからないらしい。職人さんは、そんなもんだ、家庭用なんだから、という。営業は、できているとも言えないが、できてないとも言えないので、まぁ今回はアリでしょう、という。昼休み近くになった頃、カスタマーサービスからのフィードバックを来月の会議で検討しようということで、全員一致する。広報が食堂の席を全員分確保して、お水を並べる。いい工場ですね。広くてキレイで、みんなイキイキしてる。ジムとサウナもあるんですよ。いいなぁ！ 11/4のお昼頃には、そんな工場の時報が聴こえるだろう。心を無にして、耳を澄ませてみろ。

ラッキーコア：時報

しし座

なんらかのコックピットに座っている。クールなAIボイスが、なんらかの座標を伝える。ときどきジョークが挟まれるが、いろんな星のいろんな時代のジョークだから、わかるようなわからないような感じだ。AIボイスがクス、と笑って、どうですか？みたいに聞いてくる。親しみ感とおしゃれ感は伝わってくるから、おまえもフフ、と笑って、静寂を味わうふりをする。まぁいいか。紫色の光が立体図形になって、何かがもうすぐらしいことを告げる。よくわからないが、適当にクリックしたりスワイプしたりしてみる。ピン！と音がする。なんかわからないが、よかったらしい。と思ったら、機内食が運ばれてくる。AIボイスが、サラダドレッシングの名前の由来について何かを言って、さすがです、みたいなことを言う。美味しいから、まぁいいか。もうすぐだった何かは、もう通過したらしい。11/13の新月は、そんなスムーズな操作感を味わってみろ。

ラッキーコア：ペンダント

おとめ座

めろめろ詩人が陽の光に酔っ払っている。おお太陽の野郎、そんなところでギラつきやがっててやんでい…てめぇ、あの約束をよもや忘れてはいるまいな…ういーひっく。そこに奥さんが呼びにくる。お昼ごはんができたよ。おうそうかちょっと待っとくれ。今の書いとくから。おお太陽の野郎、あんなところで、ギラつきやがっててやんでい、と。いいのができた。 もう言うほどはギラついてない太陽野郎が、めろめろ詩人と奥さんの背中を優しく照らす。それ、こんどのコンクールにだすやつ？ そうだよ。アレクサンドリアに行ったら、温泉いこうぜ。合わせ鏡の湯ってのがあって、体洗ってるところが無限に映るらしいぜ。なにそれ。昔も今も、ほどよい日光浴がヘルスケアの基本だ。11/5、おとめ座の金星が過去生での温泉旅行を憶いだす。長風呂してから、詩でも読んでみろ。

ラッキーコア：ルーミー

てんびん座

空の色で悩んでいる映画監督の傍らで、助監督とプロデューサーが、考えているふりをしながら、お互いを笑わせようとして、体をつつき合っている。もう何時間も悩んでいるが、誰も急いでもいない。監督、紫色はどうですかね…？ 紫かぁ。うーん。このシーンは、朝ていうか夜ていうかわかんない感じでさぁ… ぱぁーと、深い、みたいな。うーん… 主演女優があくびをして、俳優たちがキッチンにコーヒーをとりにいく。台本を確認するふりをして、プロデューサーが助監督におもしろい顔をする。助監督は体を震わせて、大きく深呼吸をする。もう何時間もこんな調子だが、不思議と悪くない気分だ。ゆっくりと変わり続けるバーチャル空の色が、甘く重たい和菓子の夢のように、スタジオを満たす。そこに、アイスを届けにきたデリバリースタッフのおまえが入ってくる。わぁ、キレイですね。子供の頃、こんな緑色の空で金星を見ましたよ。監督がはっと振り向いて、おまえを見る。11/5の早朝、金星を眺めて、おまえが決めろ。

ラッキーコア：新しいアイス

さそり座

高いところファンが集う場所、それがタワーだ。山とかでもいいし、もうしばらくすれば宇宙ステーションとかも選択肢に入ってくるが、とりあえずタワーでいいだろう。エスカレーターがガラス張りなら最高だが、高望みはしなくてもいい。タワーには他にも、素敵なものがたくさんあるからだ。1Fではおみやげが売っている。よく知らないけど有名な詩人の、ちょっといい毎日の言葉を集めた小さな本とか、そんなんでいいだろう。タワー内に流れる、心地いい静かな音楽も堪能しろ。気圧が調整されているから、聴こえ方も少し違うんだ。少しキュッとした、それでいてリラックスした、タワー独特の空気感を上昇しようぜ。1Fを出発したのは朝だったが、展望台に着く頃にはもうすっかり暗く、星空の真ん中で扉が開く。1Fが尾てい骨なら、展望台は松果体だ。星座がジャズになって流れている。おまえも知っている、あの曲だ。速く、高く、クリアに楽しめ。

ラッキーコア：ハミング

いて座

おれたちはだいたい、何らかの秘密結社のメンバーだったりするが、自分では気づいてない場合がほとんどだ。秘密結社のほうも、メンバーであるおまえのことを、憶えていない。お互いに憶えていないメンバー同士がときどき、例えば展望台みたいなところで、すごく綺麗な一瞬の空の色をぼうっと眺めていたりする。秘密結社といっても、特にやることもない場合がほとんどだから、そんなんでいいんだ。おまえは寝たり起きたりするだろう？ 同じように、宇宙も実は点滅しているんだ。おれたちはいつも新しく出会い続けていて、毎回なにかを憶いだしてもいる。たいした用事はないから、気にするな。その場のフィーリングで、適当なメロディを口ずさみ、何が食べたいか言ってみろ。神話や叙事詩っていうのは、実はそういう風にできている。おまえもイラストつきで、なんか記念に書いておけ。11/8の夜は、ちょっといいもの食って、軽く踊れ。

ラッキーコア：スニーカーとスカーフ

やぎ座

古いものと新しいもの。天気予報と占いの違い。人工衛星に積み込んだ石碑に刻まれた、曖昧なことわざ。言っても言わなくても、どっちでもいいことがあり、そういうのが沈黙になって、暗闇になる。だから耳を澄ませると、闇が笑いを堪えているのが感じられる。爆発寸前のちょっとした幸福感、それがジョークであり、それは聞くたびに新しく、永遠に変わらない。遠い未来に、AIが知った風な感じでそういうのを引用するだろうが、まぁおまえは気にするな。ゼラチンで固めた暗闇の中で、無数の映画が上映されていて、それはいつでもレイトショー、つまり記憶だ。誰かが、おまえに伝えたいことがあるようだ。おまえは前にもそれを聞いたかも知れないが、何度でも聴こうぜ。暗闇のヒソヒソ＆クスクスが、レコードの最後の溝に刻まれている。レコードを無限に回転させると、それは太陽になる。11/4のお昼ごろ、それを再生してみろ。

ラッキーコア：いいことが書いてあるカレンダー

みずがめ座

なんでもないが、すごく眩しい。いつもと同じように、新しい。結構まぁまぁ冷える朝が、すべての屋根、柱、木の影を伸ばす。この強烈な光には全ての情報が含まれて、黙っている。歴史が書かれたものなら、朝は沈黙だ。この後ディープパープルを聴いてもいいが、今とりあえず、この広大な沈黙に耳を澄ませろ。白い息や暖かい陽や苦いコーヒーが混ざり合って、おれたちは同時に、ゆっくりと目を覚ます。カーラジオからは、古代神話と渋滞情報、そしてリクエストだ。おまえも、リクエストしてみたらどうだ？ 心に想うだけでいい。それは視えない星座のネットワークを通じて、世界中の朝と夜にオンエアされる。ずっと昔とはるかな未来で、おまえはそれを聴いている。おわかりかな？ おはようとおやすみで構成されたアンビエントミュージックのタイトル、それがディープパープルだ。11/5、夜が朝になるのを感じてみろ。

ラッキーコア：ローカルFM

うお座

おまえは過去生と未来生のどこかの時点で、時報アーティストになる。エメラルドグリーンカレーのCMソングがヒットして、その後も何曲か立て続けに売れたんだが、しばらく活動休止して旅をした後、いろんな時報だけを集めた実験的なアルバムを発表して、みんなを驚かせた。新しいファン層の絶大な支持を得て、おまえは時報というアートを探求する。実験的な銀河系ジャズ専門レーベル、アルクトゥルスから、その時期のおまえの作品を集めたベスト盤もでてるんだ。そんなことをおまえは全く憶えていないが、言われてみればもしかしてそうかも、みたいな感じも、なくはない筈だ。小銭とかスプーンとか、いろんなものを鳴らしてみて、誰かが振り向いたら、目を合わせてみろ。それ以上でも以下でもない瞬間を、おまえが報せるんだ。11/4には、ちょっといい音が鳴る。その時一緒にいる誰かと、このことを話し合え。

ラッキーコア：風