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Souffle(スーフル) Souffle(スーフル) 息、できてる?
コラム 2019.09.27

『部屋から出ないで100年生きる健康法』 カレー沢薫 目指せ元気な引きこもり!

#4 無職の始まり

大好評発売中の『部屋から出ないで100年生きる健康法』から特別試し読み!

部屋から出ないで100年生きる健康法ついに無職になった。退職の日、社長が私より先に退社してしまい、10年近く勤めさせてもらった会社を、挨拶なしで消える、という、社会不適合者ここに極まった、私らしい退職劇だった。しかし、退職後の解放感は筆舌に尽くしがたく、危うく塵になって空に吸い込まれるところだった。

それと言うのも、弊社は「辞めると言った次の日から来ない」というスタイリッシュ退職アクションをキメるものが連続しており、残された現場が混乱することが多かったため、私が辞める時は慎重を重ねて「三か月」という壮大すぎる引継ぎ期間を設けたのである。

正直私のやっていることなどひと月あれば十分引継ぎできるのである。では、残り二か月何をやっていたかというと、サラリーシーフ、またの名を給料泥棒だ。会社に行ってもやることがない、いや、探せばやることはあったのだろうが、私が会社でやらなくていいことまでやれる人間だったら、今無職になっていない。

よく、社員を自主退社へ追い込む手口として「仕事を与えない」というのがあるが、それを聞いても「何もしなくて給料がもらえるなんて最高ではないか」と、イマイチその効力がわからないでいた。しかし、実際自分が体験してわかったが、これは 「キツイ」。私はやることがなければ延々虚空を見つめ続けられるタイプだが、「周りが働いていて、自分だけ虚空を見つめている」というのは、すごくキツイ。周りが全員全裸で自分だけ服を着ている気分だ。それを1日8時間である。さらに周りにも明らかに「こいつやることなくて虚空見つめているな」、簡単に言えば「何故いるのか」と思われているのがわかるのがキツイ。

私ほどのスゴ腕社会不適合者ですらキツかったのだから、真面目な人なら初日でメンをヘルと思う。もし、この状況でもお構いなしに、給料をもらい続けられる若者がいたら、その精神のタフさをもっと生かせる職についた方が良い。まだ三か月というリミットがあったからいいが、これが「無制限虚空見つめ放題」だったら、このコラムにも「ゆうゆうヘルスは作者自害のためお休みします」という、ゆうゆうでもヘルスでもない告知が載っていたところである。

つまり「何もさせない」というのは、非常に有効な手段であるとわかった。北風と太陽の如く、追い出すのに激務を与えると、相手の抵抗心に火が付き、出るところに出られる可能性もあるが、逆に与えられてないと、訴え辛い。訴えても「何もしないで金貰えて何が不満なんだ」とセカンドパワハラを食らう恐れがある。そもそも、一週間も働く衆人の中、虚空を見つめ続けたら、訴え出るような気力もなくなっているだろう。

このコラム初の「己の実体験から、皆さまに確実に効果があるとお伝えできるもの」が「健康法」ではなく「人の精神の壊し方」になるという、非常に残念な結果になってしまったが、心配はいらない、私も伊達に何十年も社会不適合者をやっているわけではない、退職日に会社を出た瞬間完治した。

会社と仕事は身体に悪い、ということは前々から知っていたが、最後の最後で「仕事がなくても身体に悪い」ということが判明した。もはや、会社と仕事という概念ごと消し去る以外、人々が健康になる道はない。では、生活から会社という概念が消え去って、健康になったかというと、今度は「経済」という「会社」に並ぶ健康を害する問題が浮上してきたので、1秒でも長く健康(無職)でいるために、デキるだけ節約をすることになった。

会社員の時は、昼ごはんをコンビニで買っていたのだが、これだけでもかなりの出費になる、だからと言って1人分の昼食を自炊するのもだるい。

よって、記念すべき無職一日目の昼食は、家にあるものを適当に食うことにし、そこで、もらいものの酒粕が大量に冷蔵庫に眠っていることに気付いた。これを食えば、節約になるし、おそらく酒粕は健康にもいい。そう思い、とりあえず焼いて食べてみた。焦げたせいもあるかもしれないが、端的に言って、不味い。しかも明らかにアルコールが飛んでいない。

「昼間に、金がなくて、カスを食って、酔っぱらっている」という、無職としてはこれ以上ないほどの好スタートだが、初日でこれだと、拾ったものを食って腹を壊すのも時間の問題な気がする。それは健康に良くない。

どうせ、酔っぱらうなら、ケチらずにストロング○(伏せ字)を買ってくれば良かった。あれは、そのものがリーズナブルなのは言うまでもないが、飲むと「飯が絶望的にマズくなる(個人の意見)」という利点があるので、飯をそんなに食わなくて良くなるのだ。

節約は大事である、しかし出すべきところ(ストロング〇代)までケチると、不味いカスを食って、心までうらびれる羽目になる。

「貧すれば鈍する」、ストロング〇はいつだって大切なことを教えてくれる。

次回は10月1日更新です。

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『部屋から出ないで100年生きる健康法』 カレー沢薫

『部屋から出ないで100年生きる健康法』 カレー沢薫

ヤングチャンピオンにて連載中の健康コラム『カレー沢薫のゆうゆうヘルスケア』待望の書籍化! コミュニケーションしたくないからジムには行きたくないし、面倒くさいのは嫌だし継続力もない。本コラム連載中に会社員を辞め、ほぼ外に出ることもなくなった著者が、頑張らずに健康法を試していく新時代健康コラム!!

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