#228 数字が可視化されるSNSの功罪とは | Souffle(スーフル)
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コラム 2023.04.04

『ほがらかSNSライフ』カレー沢薫 最近、SNSが殺伐としていないか?

#228 数字が可視化されるSNSの功罪とは

『ほがらかSNSライフ』カレー沢薫

最新話更新!

『ほがらかSNSライフ』「SNS疲れ」も結局リアルと同じで「人間関係」が疲れの主な原因であり、私のように「19時間ほど画面を見続けたせいでもう目が開かない」という物理的疲れを感じている者は少数派のようである。

しかし「人間関係」といってもSNSとリアルでは疲れ方が違うようで、SNSでは他人との直接的やりとりというより「他人の目」を気にして疲れてしまうケースが多いようだ。

もちろん現実でも他人の目は気になる。
しかし現実では「他人は貴様のことをそこまで気にしていない」というケースの方が大半である。
SNSでも目立たずにいようと思えば、いつまでも「フォロワー8」とかでいることは可能だ。
しかし、ネット上ではそもそも「目の数」が桁違いに多い。
同じ全裸を晒すにも、現実であれば不運にもその周囲にいた人たちと若干名の国家権力に注目されるだけだが、SNSであれば一瞬で万単位の目に晒されてしまうこともある。
もちろん「全裸になっても8いいね」ということもままあるが、誰でも「拡散」により予期せぬ注目を浴びる可能性があるのが、SNSというものだ。

まずここで、想定外の注目にビビってSNSをやめたり鍵アカウントにしてしまう者も少なくない。
やはり大人数に注目されるというのは人によっては大きなストレスなのだ。
しかし逆に、注目されることに快感を覚え、さらに注目を集めようとしてしまい「映え疲れ」したり、他人の寿司を舐めて書類送検されるというトレンド入り級の注目を集めてしまったりする。

どちらにしても、これはSNSでは人の視線が「可視化」されるせいだと思われる。

現実では自分が何人に見られているかなどわからないし、どう思われているかも謎だ。
もし相手の頭上に「-30」など「お前にあいさつされたせいで落ちたテンション」が数字で表示されるようになったら、我々はさらに他人の顔色をうかがうようになるし、それ以前に精神を病む。

対してSNSはフォロワー数やいいね、RT数などで、自分がどれだけ注目されているかが、数字で見えてしまうのだ。

数字というのは明快だが、それゆえに残酷であり人の心を乱す。
体重のわずかな増減に人は一喜一憂するし、下半身のセンチ数で男としての勝敗を決めてしまうことすらあるのだ。

先日、Twitterが新たに、どれだけつぶやきが表示されたかという「ビュー数」、さらに「ブクマ数」を表示するようになった。
おすすめ表示に比べれば邪魔くさくはないが、数字を気にしてしまいがちな人にとっては新しいストレスになっているようである。

数字はモチベを上げてくれるものだが、気にしすぎると数字が全てのように思え、振り回されるようになってしまう。

確かに数字は気になるが、数字ですべてが決まるわけでもない。
先日、9人のインフルエンサーがSNSなどで得た所得を隠して指摘を受けたようだが、中にはフォロワー数千人のインフルエンサーもいたようだ。

私は現在4万5千人ほどフォロワーがいるが、脱税以前に企業案件が来たことさえほぼ皆無である。
このように、数が多ければ価値があるというわけではない。
首を落とせば体重は一気に10キロぐらい減るがそれを「ダイエット成功」とは言わないだろう。
迷惑動画やパクりで数字を伸ばしても企業案件は来ないし、その数は観客ではなく火事を見物しにきた野次馬、もしくは自分を取り囲む「敵」が集まっている場合すらある。

私に案件が来ないのも、私のフォロワーは、珍獣を見に集まってきた動物園の客であり、珍獣が美容液を勧めても客は買わないと思われているからだろう。

数字は集めれば良いというものではない、「集め方」が大事なのだ。

次回は4月11日更新です。

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OL兼マンガ家から専業作家になったカレー沢薫さんが気づいたのは、「SNSにしか居場所がない」という事実。しかし、唯一無二の居場所のSNSには炎上、マウンティング、キラキラ女子など、闇も広がっているのです。インターネットという大事な居場所を地獄にしないために、カレー沢薫さんが提案する、SNSとのほがらかな付き合い方コラム。

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