SNSは安住の地だったのに。|ほがらかSNSライフ|カレー沢薫 | Souffle(スーフル)
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コラム 2018.10.16

『ほがらかSNSライフ』カレー沢薫 最近、SNSが殺伐としていないか?

#1 SNSは安住の地だったのに。なぜ私たちはこんなに疲れてしまったのか。

『ほがらかSNSライフ』カレー沢薫

OL兼業作家から、ついに専業作家になったカレー沢薫さん。そこで気がついたのは「SNSにしか居場所がない」という事実でした。現代を生き抜く人に送るSNS術。

ほがらかSNSライフ最近つくづく思う。「SNSにしか居場所ねえな」と。

現在、会社を辞めて無職だし、部屋に引きこもっているため家族とも会話がない、親戚と集まってもその時間の5億%を「無言苦笑い」で過ごしている。さらに最近、ご近所からは「住民を見かけない謎の家」と言われていることが判明した。絵に描いたような、突然殺人事件や、腐乱死体が発見される家だ。

そんな社会の一員としては明らかに「よくない」状態でも、ひとたびSNSに良さげなことをつぶやけば、いとも簡単に他人から「いいね」がもらえ、こちらも「ええのんかー!」と安心できる。それも自分の実力である必要さえない、いい景色、オシャレなカフェ飯、最悪他人の猫の写真でもいい。これでほぼ確実に「いいね」が貰える。もしおキャット様画像を投稿して、いいねが1個もつかないようなら、貴様のフォロワーは全員目がアナルビーズなので、そいつらを全員切ることからスタートだ。

つまり、ここまで安く、自己肯定感を得られるツールはないし、飲み会ではずっと「店員を呼ぶボタンを押す係」のコミュ症だって、SNSでは人とコミュニケーションが取れるのである。もはやインターネットそしてSNSがなかった時、どうやって自分の自我を保っていたかすら思い出せない。SNSは救済であり、特に私のような社会に不適気味な者にとっては、安住の地と言っても良い、しかし「俺たちの前に地獄はない 俺たちの後に地獄が出来る」と高村光太郎も言っていたような気がするように、なんでも地獄にしてしまうのが我々人間である。

SNSにも地獄が存在する、もちろんSNSをやるやつが作り出した地獄だ。よくインターネットをやっていると「キラキラ女が陥ったSNS地獄」みたいな漫画の広告を目にすると思う。見るだけで胃の粘膜が全部剥げおちるが、数字の上ではそういう話は人気らしい、みんな他人の地獄が大好きだ。あそこまで極端ではなくても、楽しかったSNSで嫌な思いをした、疲れてきた、そこにすら居場所を見いだせなくなってきた、ということは誰にでもあるのではないか。

ここで「たかがインターネット上のこと」などというぬるいことを言ってはいけない。何故なら冒頭言った通り「貴様ここに居場所がなくなったら、一体どこに存在するつもりなのだ」というところまで来ているからだ。つまり、SNSを地獄にすることなく、居座り続ける、というのは先祖代々受け継いできた土地を守るレベルの聖戦ということである。

よって、このSNSというぬる泥に、一秒でも長く首まで浸かりつづけるために、本コラムでは「疲れないほがらかSNSライフの送り方」を考えたいと思う。

さっそく担当に「SNS疲れするときってどんな時だ」と聞いてみたところ、担当の友人から「何気ない日常話がムカつく」という返答があったそうだ。

思った以上に、この地は荒れているようだ、ここでまた農作物が育つ日はくるのか。

次回は10月30日更新。SNSに感じる”怒り”について考察します。

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OL兼マンガ家から専業作家になったカレー沢薫さんが気づいたのは、「SNSにしか居場所がない」という事実。しかし、唯一無二の居場所のSNSには炎上、マウンティング、キラキラ女子など、闇も広がっているのです。インターネットという大事な居場所を地獄にしないために、カレー沢薫さんが提案する、SNSとのほがらかな付き合い方コラム。

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