#284 「拡散する行為」の危険性 | Souffle(スーフル)
公式Twitter 公式Instagram RSS
Souffle(スーフル) Souffle(スーフル) 息、できてる?
コラム 2024.06.11

『ほがらかSNSライフ』カレー沢薫 最近、SNSが殺伐としていないか?

#284 「拡散する行為」の危険性

『ほがらかSNSライフ』カレー沢薫

最新話更新!

『ほがらかSNSライフ』今朝起きたら、とある芸能事務所が「某Xインフルエンサーが投稿している不倫情報がうちの事務所所属のタレントのことではないかと臆測が飛んでいるが事実無根であり、このような誹謗中傷にあたる虚偽情報を拡散させる者に対しては法的措置も辞さない」という声明を出したとして話題になっていた。

注目すべきは、名誉棄損にあたる情報を流す行為はもちろん、名誉棄損やそれにつながる情報を「拡散する行為」も許さないと言っている点である。

声明内では主にスキャンダル記事を取り上げる有名インフルエンサーの名前が名指しされているのだが、このインフルエンサーはセンテンススプリングのように自らスクープ記事を作り出しているというわけではなく、すでにそこそこ話題になっていることを、まとめて発信している印象だった。

おそらくこの不倫もこのインフルエンサーが言い出したことではなく、すでに誰かが言っていたことを改めてつぶやいただけではないかと思われる。

だが、事務所がキレているのは、最初に言い出した奴ではなく、それを広めた奴なのである。

しかし、すでに出回っている情報をまとめただけにすぎなくても、このアカウントはフォロワー数が多く「このインフルエンサーに取り上げられたことで広く知れ渡る」ということも珍しくなかった。

虚偽情報を広める行為は、虚偽情報を作り出すのと同等かそれ以上に罪深く、「言い出したのは自分ではない」という言い訳は通らないということである。

このアカウントが名指しされたのは、影響力が大きいアカウントで前々から問題視されていた存在だったからというのもあるだろうが、無名のアカウントならよいというわけでもない。

この声明は「皆さまにおかれましては、臆測や虚偽の投稿にくれぐれもお気をつけください」という、巨大な釘を刺すことで締められている。

たまたま名指しされているのはこのインフルエンサーだが、虚偽情報をリポストするなど拡散に加担すれば、誰であっても法的措置を取る可能性があることが示唆されている。

しかし、これだけこのインフルエンサーが影響力を持ったのは、手っ取り早く今起こっているスキャンダルをまとめて流してくれるアカウントを重宝がる人間が多かったからである。

そうはいってもみんなスキャンダルに興味があるし、人の醜聞を知りたいという気持ちはどうしようもないし、おそらく「見ただけで法的措置をとる」という強火の事務所はしばらく現れないと思う。

スキャンダルを見るのはいいが、自らそれについて言及したり、それをリポストするのは避けた方がいい。

醜聞を嗜んでいる時点で下品なのだから、「火の粉がかからない安全な位置で楽しむ」というさらに下品なスタイルを徹底させるべきだろう。

次回は6月18日更新です。

今後の最新コンテンツが気になる方は、ぜひSouffle公式Twitterをフォロー!

前の回を読む 次の回を読む

コミックスを購入

国家の猫ムラヤマ

カレー沢薫 既刊コミックス『国家の猫ムラヤマ』

紙書籍

2XXX年、人間は絶滅しかけ、どうぶつ達が政権を握るようになった日本。投票率0%で続投決定のムラヤマ総理大臣(ツシマヤマネコ)が国を統治する!! 日本の問題点をあぶり出して燃やす、社会風刺行政ギャグ!! 時事ネタひとコマ漫画「文化庁チンアナゴ長官」も同時収録!!

他の回を読む

OL兼マンガ家から専業作家になったカレー沢薫さんが気づいたのは、「SNSにしか居場所がない」という事実。しかし、唯一無二の居場所のSNSには炎上、マウンティング、キラキラ女子など、闇も広がっているのです。インターネットという大事な居場所を地獄にしないために、カレー沢薫さんが提案する、SNSとのほがらかな付き合い方コラム。

ご感想フォーム


    『一億総SNS時代の戦略』の紙書籍を購入