私は朝6時半という、フリーランスにあるまじき時間に一度起床する。
その時間帯に今日の日経平均や株主総会予定など、私に世界一関係ない情報を教えてくれる経済特化のニュース番組が放送されており、それが何故かついているのだ。
そんな何重にも無意味が重なって逆に有益ともいえる領域が毎朝展開されていたのだが、ある朝起きぬけに「イーロン・マスクの総資産が68兆を超える」というニュースが飛び込んできた。
86兆だったかもしれないが、庶民にとっては「どっちにしても金持ち」でしかなく、誤差と言っても良い。
これは個人資産としては初だそうで、イーロンのことは金持ちだとは思っていたが、世界一レベルで金持ちとは思わなかった。
謎の感慨深さに襲われ、その場にいた夫に「他のXユーザーはイーロンのこと嫌いな人多いけど、俺は好きだよ…」と謎のカミングアウトをしてしまった。
当然、夫は「そうなのか」というリアクションであり、自分でも何故あんなことを言ってしまったのかわからないのだが、起き抜けのイーロン摂取が体に悪い、というのだけは確かだ。
だが実際に私はイーロンが圧倒的強者であることを嬉しく思っている。
日本にも格差が広がり、もはや政府も弱者切り捨ての方針を隠さなくなりつつある。
私もいつ自分が社会的最弱になるかわからない以上、弱肉強食の世界観には反対である。強者が良い暮らしをしてもいいが、握力が3しかないバカでもそれなりの暮らしをして、それに対し握力8のバカが「ズルい」などと怒り出さないのがいい社会だ。
しかし、それは理想であり、現実はそうでない部分も多く、むしろ理想が高いほど現実とのギャップに絶望し、闇落ちしてしまったキャラを私は何人も見ている。
だがそれを悲劇だと感じながら、「だがこのキャラ、闇落ち後の方が好き」と思う自分もいる。
個人の中ですら、理想と現実、そこに性癖が電撃参戦して決着がつかなくなっているのだ。万人の理想が叶う世界などできるはずがない。
そんな世界に絶望して人間を滅ぼしたりしないよう、理想は理想で持ちながらも、今ある現実は受けとめなければいけない。
そういう意味で「そうは言っても弱者は強者にボコられるしかなく、それに文句を垂れ流しながらもそいつの土地から去ることもできない」という最弱者の現実を受けとめさせてくれるイーロンには感謝している。
むしろこの現実を他の場所で思い知るのはきつい。そんな「最高の弱者体験」をXという去ろうと思えば去れる場かつ、無料でさせてくれるというのは、サービス過剰ですらある。
サービスにとって「ユーザー離れ」は避けたいことであり、ユーザーの意見を無視し続けた結果、サ終になったものもある。
しかし、他にも多くの事業を持ち、資産が80だか60兆あるイーロンには、「そんなことばっかりしてたらXからいなくなっちゃうよ」という脅しは一切無効であり、Xがなくなっても困るのは我々だけであり、多分イーロンは困らないのだ。
実際それが嫌でXを離れた人も多いと思うが、現場からは「逆に清々しくなってきた」とお伝えしたい。
次回は1月21日更新です。
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