先日、久しぶりに編集者と会食したので、「正直なところ御社、景気がいいでしょう」と聞いたら、「いい」という竹の代わりに頭を割りたくなるような明快な答えが返ってきた。
だがそんなことは聞かずともわかっている。
漫画を原作としたアニメ映画が何本も何百億と売れている昨今である。これで景気が悪かったら、漫画以前に日本円が終わっているとしか言いようがない。
もちろん今売れている漫画も売れているのだが、それよりも過去作の電子配信による収益がかなりのものだったそうだ。
確かに、過去の名作は今読んでも面白いだろうが、今から紙の本で読み直すのは難しい。
しかし電子なら気軽に読めるため、まず中高年が懐かしさで死にながら読むだろうし、もしかしたら若年層も「静かなるドン」とかを初めて読んで、「このどこを開いてもギャグか暴力かエロがある漫画はなんなんだ」と衝撃を受けたかもしれない。
しかし編集者によると、今漫画を読んで理解できるのは相当「上」の子供だという。
何が上かは明言しないが、下からショート動画、YouTube、アニメや映画、そして漫画が来て、頂点に君臨するのは「小説」だそうだ。
乱暴なランク付けであり、じゃあ小学校のころ病院の待合室に潜入してジャンプを読んだ私が知的だったかというと、完全に口が開いていたと思う。
しかしショート動画の類いが、あまり脳に良さそうでないのは何となくわかる。
ショート動画の世界では、「出会って4秒で合体」程度ではもう遅きに失しているらしく、サムネの段階で合体しているものが再生した瞬間空中分解するレベルでないと、見ている者は見るのをやめて次の動画へ行ってしまうという。
つまり、何の「待ち」もなく、永遠に刺激的な映像を見て快楽物質を得続けることにより、著しく集中力が低下するという。
確かに1秒の待機、そして努力もなく刺激物というご褒美が手に入るのに、勉強をしてテストでいい点をとるなんて、面倒くさい上に、達成感が得られるまで時間がかかりすぎることをする意味がわからない。
私が子供のころは、むしろ漫画を読みすぎるとバカになるという風潮だったが、時代は変わったものだ。
もし今だったら、明らかに健康体なのに病院の待合室で3週遅れのジャンプを読んでいる私も、「こいつデキる」と思われていたかもしれないということである。
しかし、刺激物漬けになっているのは子供だけではなく、昔は漫画を読んでいた中年も今じゃすっかりショート動画だけで2、3時間トリップできるようになり、絵と字なんか読んでいられない体になっている場合もある。
また比較的、時間をかけて楽しむコンテンツである漫画も面白くなるまでの時間は短縮が求められており、1話目で面白いと思わせられなければもうダメという場合もある。
描き手としてはそんなにすぐ面白くなんかできないから、もう少し落ち着いて読んでほしいと思うが、2秒で面白いことが起こらないと次の動画に行ってしまっている奴にそんなことを言う資格はない。
次回は12月16日更新です。
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