『木曜日のシェフレラ通信 うこぎんの相談室』杉田真也 スクールカウンセラーによる子どもの心と向き合うコラム
第12回 毒にしかならない「体罰」
エレガンスイブで連載中! Souffleでも公開中のマンガ「木曜日のシェフレラ スクールカウンセラー五加木純架」がもっとよく分かる。臨床心理士、公認心理師の杉田真也さんによるコラム連載です。
前回の続きです(第11回 正しい子育てってあるの?)。
子育てに絶対の正解はほとんどないとお話ししましたが、絶対にやってはいけないことがあります。それが「体罰」です。
今回は、体罰の悪影響についてお伝えしていきます。
体罰信仰
体罰は悪いという話をすると、「昔は当たり前だった」、「悪いことだとわからせるためには必要だ」などと言った反論が聞こえてきます。
確かに、昔は体罰が当前のように行われており、それが正しいとされる風潮がありました。昔の漫画には、悪さをした子どもをこらしめるためのゲンコツやお尻叩きの描写が描かれていますね。
しかし、最近では継続的な体罰が子どもの成長に深刻な悪影響があるとわかってきたのです。
体罰が子どもの脳を変化させる
長期にわたる体罰(頬への平手打ちやベルト、杖などで尻を叩くなどの行為)により、脳の前頭前野のいくつかの部位が縮んでしまっていたという研究結果があります。これらの部分が損なわれることで、将来的にうつ病にかかることや非行に走りやすくなる可能性が高まると考えられています。
「そこまでの体罰はしていない」との反論はあるかもしれません。しかし、「ここまではやっても良い」という線引きがあるわけではないのです。体罰を受ける子どもによっても、その影響は違うでしょう。また、体罰がどんどんエスカレートしていくことだってあり得ます。体罰に程度の問題はなく、全てが悪いのです。
体罰に効果はある?
それでも、「いいや、体罰をすることによって子どもが悪さをしなくなった。だから体罰は必要なのだ」と考える方もいらっしゃるでしょう。それもそのはず、体罰には恐怖で子どもを言いなりにさせる即効性があるからです。大人からすれば、子どもを従わせることができた「成功体験」として脳に刻み込まれ、それは繰り返されやすくなります。
一方で、子どもが体罰によって従うようになる理由は「恐怖から逃れるため」にほかなりません。体罰によって深く反省したというのは大人側の都合の良い妄想です。実際には、体罰が道徳心を養うことについて逆効果になってしまうという研究結果があります。
体罰をしないために
体罰には悪影響こそあれ、良いことは一つもないことをお伝えしてきました。そうとはいっても、子どもにどうやって関わっていけばよいのか困っている親御さんもいらっしゃるでしょう。そんなとき、おひとりで悩まないでください。あなたの住んでいる地域にも、臨床心理士や公認心理師、社会福祉士をはじめとした支援者が在籍している公的機関やNPOなどがあります。学校にスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーがいれば、どこに相談をすれば良いか情報提供をしてくれます。まず足を運んでみてはいかがでしょう。
参考文献
1.Gershoff, E. T. (2002). Corporal punishment by parents and associated child behaviors and experiences: A meta-analytic and theoretical review. Psychological Bulletin, 128(4), 539–579.
2.村中直人. (2022).「<叱る依存>がとまらない」, 紀伊國屋書店.
3.友田明美.(2017).「子どもの脳を傷つける親たち」,NHK出版.
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