第14回　性の多様性①　LGBTって何？

エレガンスイブで連載中！ Souffleでも公開中のマンガ「木曜日のシェフレラスクールカウンセラー五加木純架」がもっとよく分かる。臨床心理士、公認心理師の杉田真也さんによるコラム連載です。

今回と次回は、性の多様性についてお伝えしていきたいと思います。

私が子どもの頃は、ことさら「男らしさ」「女らしさ」が強調された漫画やドラマが多かったように思います。今となっては、性の多様性、トランスジェンダー、LGBTなどの用語がメディアでも流されるようになってきましたが、昔の私にはそういったことへの理解はなく、現在の仕事について勉強するようになって衝撃を受けたものです。今考えると、自分はそれまで「なんて無神経な発言をしていたのだろう」と後悔しています。

このコラムで、性の多様性について少しでも興味を持ってもらえると幸いです。

LGBTってどういう意味？

LGBT（またはLGBTQ、LGBTQ＋など）という言葉は、読者の皆様もお聞きになったことがあるかもしれません。LGBTは“ジェンダーマイノリティ（性的少数者）”を表現する際によく使われています。

LGBTと一口に言っていますが、実はLGBとTは異なる概念にもとづいた用語です。

L（レズビアン:Lesbian）、G（ゲイ:Gay）、B（バイセクシャル:Bisexual）は同性愛者や両性愛者の頭文字からきています。これらは、“性的指向”、つまり、どんな性別の人を好きになるかということを表しています。

一方でT（トランスジェンダー:Transgender）は、“生物学的な性別”と“性自認”が一致していないことを指しています。性自認というのは、自分の性別をどのように認識しているかということです。例えば、生物学的には男性であるけれど自分のことは女性と認識している、といった場合に使用されます。

LGBT以外にも、性的感情を抱かない（またはとても弱い）Aセクシャル、性自認が定まっていないXジェンダーなど様々な性的指向と性自認があります。注意したいのは、全てのジェンダーマイノリティの方がどれかの用語に当てはまるわけではありません。それどころか、我々人間はすべて異なる性への感じ方があります。「ジェンダーマイノリティとそうでない人」とはっきり分けられるものでなく、グラデーションのようになっていると理解すると良いでしょう。

最近では“性的指向”と“性自認“を表す言葉としてSOGI（ソジ:Sexual Orientation and Gender Identity）がよく使用されています。

『木曜日のシェフレラスクールカウンセラー五加木純架』2巻より

SOGIの知識をもつ重要性

最初から自分がジェンダーマイノリティと自覚している人はほとんどいないでしょう。最初のうちは、「ピンクの服やスカートを身に着けるのが嫌」「男子トイレに入るのが嫌だ」など、自分でも理由がわからないもやもやした感覚を持っていることが多いようです。その後に性の多様性の知識を得て、自分が持っていた違和感を捉えなおせるようになることがあります。

でも、せっかく自分のもやもやの正体がわかっても、周りの人たちがジェンダーマイノリティやSOGIの概念について全くの無知であったらどう感じるでしょう？それどころか、からかいや差別の対象になっていたら？　おそらく、その人は誰にも打ち明けることができず、自分の存在自体を否定することにもつながってしまうと思います。

『木曜日のシェフレラスクールカウンセラー五加木純架』2巻より

SOGIの知識がないと、無自覚に相手を傷つける発言をしてしまう可能性があります。例えば女性に対して「彼氏いるの？」などと聞く男性（そもそもセクハラの可能性もありますが…）。これは「女性であるのだから、付き合っている相手は男性である」という思い込みからの発言です。“性的指向”の多様性について知っていれば、このような発言は防げます。（こういった発言は“SOGIハラ”と言われます。）

冒頭で書いた「男らしさ」「女らしさ」という言葉も、勝手に「男性・女性としてあるべき姿」を押し付けてしまっています。こちらも“性自認”は人によって違うことを理解していれば出てこない言葉です。大切なのは「その人らしさ」です。