#11 障害年金について Part2 〜がんでの障害年金をもらうためには?〜 | Souffle(スーフル)
公式Twitter 公式Instagram RSS
Souffle(スーフル) Souffle(スーフル) 息、できてる?
コラム 2024.08.19

『おはよう、おやすみ、また明日。がんのお金相談室』清水公一 「がん」でかかるお金のリアルがわかる!

#11 障害年金について Part2 〜がんでの障害年金をもらうためには?〜

『おはよう、おやすみ、また明日。がんのお金相談室』清水公一

肺がんサバイバーの社会保険労務士・清水公一さんによる、「がん」についてのお金のコラム。

前回のコラムではがん患者さんの障害年金の受給状況を説明しました。今回のコラムでは、どのような人が障害年金をもらうことができるのか、また、がんでどのような状態になれば障害年金をもらうことができるのかを説明していきたいと思います。

障害年金とは

がんになったことで、働くことや日常生活に支障がある場合に受給できる可能性がある年金が障害年金です。がんになったとき(初診日)に65歳未満であり、一定以上の保険料を納めている必要があり、初診日において加入している年金制度が国民年金の場合は障害基礎年金、初診日において加入している年金制度が厚生年金の場合は障害厚生年金が支給されます。原則、がんになってから1年6か月後から請求できます。この1年6か月は障害状態がある程度継続しているかを判断するためにあります。具体的なイメージや金額は下図のようになります。

『おはよう、おやすみ、また明日。がんのお金相談室』

(フリー素材を使った著者作資料)

障害の状態により、障害基礎年金は1級・2級、障害厚生年金は1級・2級・3級・障害手当金に該当する必要あります。65歳になってからもらえる老齢年金と同じで、基礎年金が1階部分、厚生年金が2階部分となり、厚生年金は基礎年金にプラスして厚生年金部分である報酬比例の年金額をもらうことができます。ただ、ちょっと違うのが、障害厚生年金のみ3級と障害手当金という障害の程度が軽くてももらえるものがあります。障害手当金というのは5年以内に治っていることというのが要件としてあるので、がん患者さんで障害手当金を受給することは基本的にはないと思います。障害厚生年金の年金額は「報酬比例の年金額」となっていますが、この計算はかなりややこしいです。厚生年金加入期間とその期間にもらっていた給与の金額により決定されますが、こちらは年金事務所で確認するのがいいと思います。若くしてがんになってしまった場合、年金加入期間が短くなると思いますが、この計算をするときに加入期間が300か月(25年)未満の場合は300か月として計算をするので、若い人でも300か月加入していたとみなして計算をします。詳しい計算方法を知りたい方は令和6年度の障害年金ガイドを参照ください。

初診日について

障害年金においては初診日を証明する必要があり、そのための「受診状況等証明書」を初診病院の医師に書いてもらう必要があります。なぜ初診日が大事かというと、初診日においての年金制度(国民年金or厚生年金)の確認と保険料を一定以上納めていることを確認するためで、健康診断は原則として初診日とはなりません。

初診日の定義は下記になります。
1. はじめて診療を受けた日(治療行為または療養に関する指示があった日)
2. 同一の傷病で転医があった場合は、1番はじめに医師等の診療を受けた日
3. 過去の傷病が治癒(社会的治癒も含む)し同一傷病で再度発症している場合は、再度発症し医師等の診療を受けた日
4. 傷病名が確定しておらず、対象傷病と異なる傷病名であっても、同一傷病と判断される場合は、他の傷病名の初診日が対象傷病の初診日

がんに起因する症状ではじめて受診した日が初診日となり、確定診断を受けた日が初診日になるわけではありません。例えば、肺がんであれば、確定診断が紹介された大学病院だったとしても、咳が長く続くので近くの病院を受診したのであればその日が初診日となります。また、腰が痛くて整形外科を受診した後に別の病院で原発肺がんの腰椎への骨転移が見つかったのであれば整形外科が肺がんの初診日となります。まずは初診日を特定させないと先へは進めないので、初診日はとても大事です。初診の病院がカルテを破棄していたり(5年間は保存義務あり)、廃院していた場合などは初診の証明が難しくなるケースが多いので、障害年金を専門としている社会保険労務士などに相談するのも1つの方法だと思います。

障害認定日について

障害認定日とは障害の状態を定める日のことで、初診日から1年6か月経過した日、または1年6ヶ月以内にその傷病が治った場合(症状が固定した場合)はその日をいいます。1年6ヶ月以内に病気やけがが治った日(症状が固定した日)として取り扱う例としては、がんだと下記のようなものがあります。

『おはよう、おやすみ、また明日。がんのお金相談室』

(著者作資料)

仮に末期がんで余命が限られていたとしても、障害年金を受給するためには1年6か月待たなければなりせん。この1年6か月は末期がんの患者さんにはあまりにも長すぎますが、制度上、請求することができません。

請求方法について

具体的な請求方法について事例を用いて説明します。

基本は①の障害認定日請求です。初診日から1年6か月経過後の請求です。その場合、障害認定日から3か月以内の状態を記載した診断書が必要となります。

②の認定日遡及請求というのが、初診日から1年6か月後の障害認定日に障害状態に該当していたが、障害年金を請求できることを知らずに障害認定日から1年以上経過した後に、遡って請求するケースです。この場合は障害認定日から3か月以内の診断書と請求日時点での診断書が必要になります。ただ、遡れる期間は5年分と法律で決まっており、それ以前の期間は障害状態に該当していたとしても、受給する権利が時効により消滅します。

③の事後重症請求というのは、障害認定日に障害状態に該当せず、その後、障害状態に該当するようになった場合に請求することをいいます。がんの場合、進行性の病気であるため、この事後重症請求になることも多いです。事後重症請求で気をつけなければならないのが、請求(年金事務書に書類を提出)した翌月から年金が支給されることです。障害認定日の半年後に障害状態に該当したとしても、請求したのが5年後であれば、5年後の請求した月の翌月からしか年金をもらうことはできません。そのため、障害状態に該当した場合はなるべく早く請求をしないと、機会ロスを招きます。なかなか、がんが進行し体調が悪くなるなかで、障害年金のことまで気を配るのは大変かと思いますが、事後重症請求の場合はなるべく早く請求しましょう。

障害状態とは

ここまで、何度も出てきている障害状態という言葉ですが、具体的にどんな状態であれば、がんで障害年金が受給できるのかが悪性新生物の認定基準に書いてあります。

長々と書いてありますが、要約すると、
●1級:寝たきり
●2級:日常生活に著しい制限がある
●3級:労働に制限がある
といった感じでしょうか。

認定基準には、がんの障害の程度は、「組織所見とその悪性度、一般検査及び特殊検査、画 像検査等の検査成績、転移の有無、病状の経過と治療効果等を参考にして、具体的な日常生活状況等により、総合的に認定するもの」とあり、認定に際しては、具体的な日常生活状況や労働状況が大事になることが読み取れます。

この等級に該当しているかどうかを、認定医が診断書等の提出書類をもとに審査をします。ちなみに、認定医とは日本年金機構からの依頼を受けて障害年金の審査をする医師で、その傷病についての専門分野の医師が審査をしています。

年金事務所に必要書類を提出後、3か月ぐらいで結果が届きます。認められた場合、結果が届いた約1か月経過後の15日に初回の年金が振り込まれます。年金支給まで障害年金の請求準備を始めてから半年以上かかる場合が多いです。

今回のコラムでは、障害年金をもらうために押さえておくべき基本事項について説明いたしました。次回のコラムでは、具体的にがんの認定基準を紐解き、障害年金を受給するためにがん患者さんが理解しておくべきこと、診断書をどのように医師に書いてもらえばよいかなどのより実践的な請求手続について説明したいと思います。

参考資料
日本年金機構の障害年金ガイド(令和6年度版)
https://www.nenkin.go.jp/service/pamphlet/kyufu.files/LK03-2.pdf
国民年金・厚生年金保険 障害認定基準 第16節/悪性新生物による障害
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/shougainenkin/ninteikijun/20140604.files/3-1-16.pdf

漫画「おはよう、おやすみ、また明日。」はこちら▶▶

今後の最新コンテンツが気になる方は、ぜひSouffle公式Twitterをフォロー!

前の回を読む 次の回を読む

他の回を読む

「がんになったらお金はいくらかかるの?」 自身も肺がんサバイバーである社会保険労務士の清水公一さんによる、読んでためになる「がん」にまつわるお金のコラム。

ご感想フォーム