『部屋から出ないで100年生きる健康法』 カレー沢薫 目指せ元気な引きこもり!
#3 自分の顔が健康に悪い
『部屋から出ないで100年生きる健康法』発売記念、特別試し読み!
疵面 (スカーフェイス) である。
もちろん日本刀で切りかかられたとか銃弾が頬を掠めたとかではない。肌が荒れている。それも昨日今日の話ではない、3年ぐらい一日も休むことなく荒れている、国だったらとっくに崩壊している。日本に女児として生まれ落ちると、生涯戦わなければいけないものが最低三つはある。体重、毛、そして肌荒れだ。これに服従すればするほど、何故か肌の質感が非服従のガンジーに近づいていく。ここ数年、私の顔は毎日何かを作り出している。一応クリエイター的仕事をしているが、顔面が一番クリエイティブだ。
何を作っているかと言うと、主に吹き出物だ。副産物として、口ひげ、顎毛、毛穴の事業拡大にも余念がない、少ない面積で北海道級の取れ高を叩きだしている。そして、吹き出物が出来たらどうするかというともちろん収穫だ、簡単に言うと潰す。吹き出物が出来たら触らないのが鉄則、潰すとしても、相応のやり方をしろと言われるが、毎回、顔面ごと潰しかねない勢いで握撃をかます。何故そんなことをするかというと、相手が敵だからである。潰した所は当然傷になる、そして傷の治りは年々遅くなる、そしてその間に毎日別の吹き出物ができる。
それを繰り返していく内に私の顔は完全な戦場帰り、少なくとも有刺鉄線を全く避けずにここまでやって来た人になってしまっている。強そうで良いじゃないかと思われるかもしれないが、私も女児である、鏡を見るたびにブルーになる。つまり「自分の顔が健康に悪い」のである、自分の臭いで死ぬカメムシと同カテゴリになってしまっている。よって最近は「鏡を見ない健康法」を続けてきた。目に映らない物はないものと同じなので、鏡さえ見なければ健康を保てるというわけである。鏡を避ける、もしくは叩き割っても、スマホやゲーム機の画面に映りこんでしまうことがあるので、画面が暗転したと同時に伏せる、等の訓練は必要だが、その内10日ぐらい自分の顔を見ていないとか平気で出来るようになる。
だが、このように自分の顔を避け続けると、たまに見たときビックリしてしまう、その内即死すると思う、即死は健康ではない。それを避けるために自分の視力を極限まで下げるという方法もあるが、視力が悪いというのも多分健康ではない。結局、自分の顔を肉眼で見てもいいようにするのが一番健康である。
それは美容であり健康では無いのでは、と思うかもしれないが、美肌と健康は密接に関係がある。例えばダイエットなら、絶食などして不健康な状態でも、体重さえ減っていれば成功と言って良い。しかし不健康だけど美肌ということはまずない、それほど肌には健康状態が出る。よって、美肌を手に入れる=健康と言って良い。美肌を手に入れるのは洗顔やスキンケアなど外的要素と内的要素がある。外的なものに関しては平成も30年になろうかというのに、なんと未だアンサーが定まっていない。洗顔一つとっても、良く洗えと言われたり、洗いすぎは良くないと言われたり、昨日肌に良いと言われていた物が今日有害だと言われていたりするのである。
まさに昨日まで肩を並べて飯を食っていた友人が、今日バズーカで頭を吹っ飛ばされているという戦場なのだ。結局、個人差が激しく、良く洗った方がいい奴もいれば洗わない方がいい奴もいる、色んな奴がいても良いじゃないか、とメンヘラを慰め疲れた奴みたいなことを言うしかない。しかし、内的要素、つまり健康is美肌に関してはそこまで差はない。水銀を飲んだほうがいいのは少数派のはずだ。そして、一番重要なのは栄養、つまり口に入れるものだ、よって世の中には飲むだけで美肌になれるサプリたちが満ち溢れている。そして私も金のかかったブスとして、それらには財を投じてきた。その中で一番効果があったものを、もったいないが教えよう。「三食」である。
残念なことに、三食食っていた時が一番肌の調子が良かった。それも「野菜たっぷりオーガニック美肌スープ」とかではない。水銀を含まない、普通の三食である。普通に飯を食うだけでいいなら、なぜブスどもは金をかけてサプリ類を買うのかと思うだろう、それは「三食食うのが難しい」からだ。
朝は食わず、昼はコンビニ弁当、夜は日中のストレスを解消をするためにドカ食い、それが疵面OLのスタンダード三食だ。もしくは6食ぐらい食ってるからこうなる。
難しいから、そのままの食生活で、飲むだけの美肌サプリを買ってしまうのである。よって健康と美肌を手に入れたい人はまず 「三食法」をやってみて欲しい。言っておくが「三食きちんと一平さんを食べる」とかではない、言わないと俺たちブスはそういうことをやってしまうので一応言っておく。普通の三食でいいのだ、そこまで神経質に献立を考える必要はない。それでもダメだし、外的にも内的にも気を使っているのに顔が歴戦の勇者になるという者は、最後の手段がある。「枕を洗う」だ。
いくら気を使っても、睡眠の間の数時間、汚物に顔をうずめていたら無意味、灯台はつねに下が暗いのだ。
次回は9月27日更新です。
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コミュニケーションしたくないからジムには行きたくないし、面倒くさいのは嫌だし継続力もない。本コラム連載中に会社員を辞め、ほぼ外に出ることもなくなった著者が、頑張らずに健康法を試していく新時代健康コラム!! 目指せ元気な引きこもり!